スズキ・エリオセダンXV【試乗記】
4ドアエリオの実用性能 2002.02.02 試乗記 スズキ・エリオセダンXV ……153.3万円 2001年11月14日、「スズキ・エリオ」にトランクを付与した3ボックスモデル、「エリオセダン」の販売が開始された。個性的なリアビューはどうなってしまうのか……?国内は1.5リッターモデル
スズキ・エリオの4ドアセダンが出ると聞いたとき、「大丈夫かなァ」と思った。2001年1月に登場した「ミニバンの居住性+ステーションワゴンの使い勝手+セダンの経済性と走行性能を融合させた」という欲張りな5ドアハッチ「エリオ」。カルタス(クレセント)の後を継ぐカタチになったニューモデルの外観上のウリは、大きな黒いガーニッシュを配した斬新なリアビューにある、と謳われていたし、実際その通りだったから。フロントはいささかオシリに押され気味なので、ジマンのリアセクションにトランクを追加したらまるで個性のないクルマになっちゃうんじゃないか、と、エリオに少なからぬ好感を抱いていたリポーターは心配になったわけである。
さらに第35回東京モーターショーで実車を見てもいまひとつピンとこなかったが、でも、その後エリオセダンと数日間を過ごしてわかったことがある。このニューコンパクトセダン、いま手に入る新車のなかで「もっとも憎めないクルマ」だ。路上におかれた3ボックスのエリオは、全体に内側から柔らかく膨らんでいて、いまはやりの言葉でいえば“癒し系”。突き刺すような個性はないが、たたずまいに独特のユーモアがある。トランクを備えた全体のフォルムに、かつてのように“とってつけた”感がないのもいい。偉そうなことを言うようで恐縮ですが、スズキも小型車のデザインにだいぶ手慣れたんじゃないでしょうか。
試乗したのは、エリオセダンXV。カーナビ、サイドエアバッグを標準装備した上級グレードである。国内で販売されるエリオセダンは、ハッチモデル同様1.5リッター直4ユニットを搭載したモデルのみ。トランスミッションに5段MT、4段ATが選べる。FFをベースに、雪国向けの4WDも用意される。
国内では、と書いたのは、2002年のデトロイトショーで4ドアモデルはハッチバックともども北米デビューを果たしたからで、すでに欧州戦略車として積極的に輸出されているエリオハッチ(欧州名リアーナ)に続き、スズキの外貨獲得の一端を担うことになる。日本では「軽ナンバーワン」として知られる浜松の企業は、実は生産台数の半分強を海外でつくるグローバルカンパニーでもある。
次なるステージ
エリオセダンのボディサイズは、全長×全幅×全高=4350×1690×1545mm。大きさからいうとトヨタ・カローラに近いが、成り立ちを考えるとプラッツと比較するべきだろう……、と説明しなければいけないのが、エリオの苦しいところ。カルタスがなしえなかった「軽で捕らえたユーザーを、スズキの小型車にアップグレードしてもらう」という悲願を、心機一転、欧州テイストのニューモデルで達成するというのがエリオのコンセプトである。もちろん、名前が変わったというとは、新しい名前をお客様におぼえていただかないといけないということで、そのうえ「カルタスの後継車種です」と説明するのは避けたい。となると、現場のセールスマンの人たちは、かなりご苦労なさってるんじゃないでしょうか。とはいえ、そこは商売上手なスズキだから、新しい販売チャンネル「アリーナ」を通して、地道に知名度を上げていくのだろう。
ドライバーズシートからの眺めは、当たり前だがハッチモデルと同じ。「三角」をモチーフにしたインパネと、デジタルメーターがアバンギャルド、というか「なんだか新しい」。ちょとデザイナーがガンバリすぎちゃったというか、“生煮え”な印象が否めないが、スズキは小型車市場においてはチャレンジャーだから、これくらいでいいのかもしれない。シート地やドアのトリム類は変形ヘリンボーンともいうべき柄で、洒落ている。
感心するのは室内の広さで、1545mmも車高があるから当然なのだが、ヘッドクリアランス云々の物理的な空間以上に、「広い!」と感じさせるものがある。ワゴンRで「軽」における新しい車内空間のスタンダードをつくったスズキが、居住空間において次なるステージに移る「なにか」を掴んだ、といったら褒めすぎか。ドライビングポジションは、高めの座面を反映して、背筋を伸ばしたアップライトなものになる。
性格に合った乗り心地
走り始めると、110ps/6000rpmの最高出力と14.6kgm/4000rpmの最大トルクを発生するVVT(可変バルブタイミング)機構付き1.5リッターはなかなか活発で、軽く歌うエンジンだ。メリハリをつけたドライビングをするとそれなりにエンジン音は室内に侵入するが、決して不快な類のものではない。街乗りでも高速道路でも、過不足ない動力性能を発揮する。185/65R14と、5ドアハッチより細く厚いタイヤを履くこともあって、乗り心地は全体に穏やか。クルマの性格によく合っている。
エリオセダンは、見ても乗ってもいい意味で「ホワン」としたクルマだ。前席同様の座り心地を提供するリアシートはじゅうぶん大人用として使えるし、「1.5リッター、4ドアクラスのなかで最大級のトランク容量である492リッター」(リリース)を確保した荷室は、見るからにデカい。ほどほどのボディサイズと最小回転半径5.0mという取りまわしのよさ、そして、反感を持たれないスタイルも大事な実用性能のひとつに違いない。
(文=webCGアオキ/写真=難波ケンジ/2001年12月)

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
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