ボルボSライン【試乗記】
ボルボSライン 2001.06.08 試乗記 「ちょい乗り」試乗報告 2001年6月6日、ボルボの「Sライン」ことセダンを集めたプレス向け試乗会が神奈川県は横浜で開催された。「なぜ今Sラインなのですか?」とwebCG記者がボルボの広報担当に聞くと、「ま、S60でモデルが出そろったことですし」との答。「ワゴンに較べて影が薄いですからねぇ」と失礼千万なことを言うと、「セダンがしっかり売れて、そのうえでエステートが出る。それが健全なんですが……」「ボルボ=ワゴンというのは、日本だけだと聞いています」「そうです。欧州ではほぼ半分ずつ。ずっとヘルシーです」。広報担当氏は、ちゃんと歯と歯の間に舌を挟んで“th”を発音するのであった。
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ヒンヤリ冷たいS80T-6エクスクルーシブパッケージ(4AT)……680.0万円
インタークーラーを備えた同径のターボチャージャーを2基備え、272psを発生するストレート6を搭載する。ただし、横向きに。
ちょっと驚くスペックを持つ「トップ・オブ・ボルボ」S80T6の試乗車は、元来黒いヘッドランプの縁取りやモール類が、ボディ同系色に塗られた「エクスクルーシブパッケージ」だった。リアドアに付いた盾型のエンブレムも、同仕様の専用品。
通常より約30%厚い「セミアニリンレザー」は、ダークグレーの地に明るいグレーでパイピングを施した洒落たもの。ほかのボルボ車同様、なめし工程で有害なクロムを使わないのがジマンだ。
立派なシートに座った貧相なリポーターは、「ウーム、ペダルもハンドルも軽いわい」と思う。ラグジュアリーサルーンは、ドライバーに無駄な労力を使わせたりはしないのだ。ちなみに、ステアリングホイールは、ウッドとレザーのコンビネーション。握ると硬くて、ヒンヤリ冷たい。
レスポンスよくシュルシュルと軽く回る6気筒。スムーズな乗り心地。撮影のためにUターンしようとすると、エンジンレイアウト上宿命的に切れないステアリングのため、回転半径が、6.0mというカタログ数値以上に大きく感じられる。フラッグシップに乗るようなヒトは、同じ道を行ったり来たりしないのだ。
ステアリングを切りながらスロットルを開けたら、前輪が暴れた。もしボクが、ノーマルより20mm室内長が延びたエクスクルーシブの後席に座る身分なら、トルクステアを出すようなショファーはクビである。
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ハンサムカーS60 2.4T(5AT)……500.5万円
試乗に先立ってブリーフィングが開かれた。演壇に立ったボルボの方が、スライドの表を指しながら市場動向を説明してくださる。「2001年前半、6月3日までのボルボ車の販売内訳を調べますと、トップはもちろんV70の3122台。2番目は、これが驚いたことにS60なんです。1007台売れました」。あなたが驚いてどうする、と心のなかでツッ込みながら、一方で「さもありなん」と思った。S60、カッコいいもの。
低く構えるボンネット。トランクに向かって流れ落ちるかのようなCピラー。ショルダーのバルジ。不思議なことに、最後発であるS60のスタイルが、現行SラインのデザインオリジンたるECC(Environmental Concept Car)のそれにもっとも忠実だ。時代が追いつくのを待っていた、ということか。
残念ながら、パワーソースは「ガスタービン+電気モーター」のハイブリッド式ではなく、いずれも直列5気筒の2.4リッター(170ps)、同ライトプレッシャーターボ(200ps)、同ハイプレッシャーターボ(250ps)という純然たる内燃機関だが。
たっぷりとしたタンのレザーシートに座って走りはじめると、S60は、S80よりグッとライブリーなクルマだ。スロットル操作に合わせての「ヒーン」という過給機のささやきや、5シリンダーユニットの独特なビートを感じる。街なかでは5段ATが、豊かなトルクを4段で受けるエクスクルーシブモデルより、頻繁にギアをチェンジする。
S60は、フラッグシップのプラットフォームを切りつめたシャシーを使うため、ホイールベースのわりに広い、スポーティなトレッド比をもつが、決してコーナーに飛び込む速度を競うクルマではない。すこしダルなステアリングを丁寧に操作して、「ニヒャクバリキ」を表に出さずにクルージングする。P.ホルバリーの手になる“4ドアクーペ”は、急がないけど速いハンサムカーなのである。
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シアワセの予感S40 2.0T(5AT)……380.0万円
「立ったフロントグリル」「V字にシェイプされたボンネット」「ワイドショルダー」。ボルボの新しいデザインモチーフの先駆モデルが、40シリーズである。リアサスにマルチリンクを採用したのも40が初めて……とくると、私事で恐縮ですが、ボクの口のなかには熱いチップスことポテトフライの味が広がる。
1998年8月、ボルボに招待していただいて、スコットランドはノックヒルサーキットまでBTCC(英国ツーリングカー選手権)を観戦にいったのだ。夏だというのに冷たい霧雨が降っていて、風も強かった。ホクホクのポテトの美味しかったこと。それと、名手リカルド・リデル駆るTWR(トム・ウォーキンショー・レーシング)のS40レーシングのカッコよかったこと。イモと並べてなんですが。
そんなスポーティなイメージは、わが国ではあまり高くないのでは、と思う。それでもS40の販売は堅調で、2000年には、VWパサートの669台、オペル・ベクトラの692台を抑え、S40は985台も売れている。97年に、ユーロNCAPによる衝突テストで、最高評価の「4ツ星」に輝いたのが効いているのだろう。
この日は、あいにくS80、S60の後に乗ったので、シートが実際以上に小さく、エンジン音がよりノイジーに感じられた。S40は、いうまでもなくボルボSラインのボトムレンジで、そのうえ2001年デビューのS60とは5年の開きがある。北欧のサルーンが順調に進化してきたことの裏返し、とは言い過ぎか。
コンパクトながら6ライトスタイルをとるS40は、2000年8月に、変更点が1500点におよぶビッグマイナーチェンジを受け、見違えるようにハンドリングが良くなったことを付け加えておきたい。
(webCGアオキ/写真=郡大二郎/2001年6月)

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
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