フォルクスワーゲン・パサートワゴンV6 4モーション【ブリーフテスト】
フォルクスワーゲン・パサートワゴンV6 4モーション 2001.11.09 試乗記 ……421.0万円 総合評価……★★★★★この内容でこの値段は大バーゲン
各種スペック、および見て乗ってわかる実物のデキのよさをあわせて考えるに、素で410.0万円というこのクルマの値段は相当なバーゲンである。輸入車としては、なんていいわけなど一切必要なしに安い。控えめに表現しても、500万円級のありがたみは文句なしにある。ひとしきり試乗したあとで値段を知ってびっくりしたぐらいだ(450.0万円ぐらいかと思っていた)。で、それがベンツのC180ワゴン比5万円安だとわかってさらに驚いた。C180ワゴンの415.0万円がリーズナブルであるなら、パサートワゴンのV6のヨンクは600.0万円したってそれほどヘンではない。少なくとも、そういいたくなるほどにクルマはイイ。
現行世代は1996年からだから、モデル寿命としては末期に近い。しかしながら、実質アウディA5ともいうべき基本ハードウェアのイイモノ感はまだ光を失っていない。いまにいたるも、競合他社の製品はその方面でパサートに追いつけていない。少なくとも、明らかにパサートを凌駕したと思える例はまだ現れていない。スゴいことである。「こんな高品質路線では売れてもロクに儲からない」というプロの声もきかれるくらいで、次のパサートがもっとお手軽な作りのクルマになってしまうことだってあながち考えられなくはない。
それともうひとつ。次のパサートに関していえば、まず間違いなくいまよりサイズがデカくなる。室内横方向の広々感と狭い場所での取りまわしのよさの妥協点として1745mmという現行モデルの全幅(だけでウンヌンできる話ではもちろんないけれど)はけっこう絶妙で、この美点はモデルチェンジとともに失われると思っておいたほうがいい。
今回この試乗記を書くにあたり、広報車両には合計700kmほど乗った。WebCGスタッフから友人一家まで、その間合計10人ほどがパセンジャーとなった。でもって乗せられた彼らおよび彼女らの多く(クルマに詳しくもナンともない)は、別にきかれたわけでもないのに「いいクルマ……」と感想をもらした。やはり、ちゃんとわかるのである。
なお参考までに、別の機会に乗った同じパサートのV5ワゴンと較べて今回の仕様はシートと乗り心地と車内の音環境が明らかによかった。違いは小さくない、と思った。その小さくない違いと較べて、値段の違い=49.0万円はオヤッと思うぐらい小さい。V6ワゴンの場合でいっても、FFと今回の4モーション(実質は真正のアウディ・クワトロ)との価格差はいまやたった20.0万円でしかない。いちばん高いパサートは、やはりものすごくオトクだ。
【概要】 どんなクルマ?
(シリーズ概要)
1996年8月にセダンが登場した4代目パサート(VWいうところの5代目。シリーズIIIのフェイスリフトを一代と数えるため)。アウディA4用をストレッチしたフロアパネルを用いるフォルクスワーゲンの旗艦である。97年に、ワゴンと4WDモデル「4モーション」が加わった。2000年10月に開催されたパリサロンで、いわゆるビッグマイナーチェンジを受け、ドアとルーフ以外のボディパネルを一新した。本国では、1.6リッター直4から用意されるが、日本には、当初1.8リッター直4ターボと、2.8リッターV6の2種類、2001年10月30日から販売が開始されたニューバージョンは、1.8ターボに代わった2.3リッターV5(FF)と、従来通り2.8リッターV6(4WD、FFは受注生産)がラインナップされる。注目の4リッターW8モデル(275ps、37.7kgm)は、2002年の日本導入が予定される。
(グレード概要)
パサートワゴンも、セダン同様、2.3リッターV5のFFモデルと、2.8リッターV6のヨンク版「4モーション」が用意される。V5、V6車の装備の違いは、前者がファブリック内装、後者が「レザー+アルカンタラ」のパワーシートとなること。また、V6モデルは、フルレザー仕様もオプション(11.0万円)で選択可能だ。ヘッドランプをガスディスチャージ式にできるのもV6のみ(スライドルーフ、革内装、HIDランプのセットオプション:33.5万円)。
【車内&荷室空間】 乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★
相変わらず印象的な高品質感。幾何学模様の樹脂パネルが効果的だった以前の1.8Tあたりと較べると、ウッド(本物)のデコレーションは少々俗っぽい。★★★★★じゃない理由をあえてあげるとすれば、たとえばそのへんか。高級グレードだから、ということなのだろうけど、たとえばもうちょっと赤みを抑えるとかしたほうがよかった。
使い勝手、およびカタチの環境は非常にいい。チルトとテレスコ両方を幅広く調整できるハンドル。ガラスからの圧迫感が軽微で、かつ見た目に個性的でもあるアーチ状のAピラー。カップホルダーは、従来の引き出し式が単純な穴×2式に変わって使いやすくなった。
(前席)……★★★★
機能において非常に正しく、かつその正しさを強引に押しつけてくることもない。見た目の美しさから想像されるとおりに、座った瞬間から「これはイイ」と思わせる。で、そのまま数時間座り続けても好印象が変わらない。このレザーシートは11.0万円のオプションで、標準装着品(V5の標準シートとはまた違うタイプ)を試したわけではないけれど、現時点では選ぶことを強くオススメしておきます。★★★★★でない理由は、あえていえば想像を絶するほどヨカッタわけではないから。
(後席)……★★★★
着座姿勢もクッション特性も周囲の空間も別に文句なし。★★★★★でない理由は、あえていえば前席が空いていてもゼヒこちらに座りたいと思わすほどではないから。
(荷室)……★★★★
容量もカタチも使い勝手も文句なし。他の部分と同様“内装”も上質。あえて★★★★★じゃない理由は、セダンと全長が変わらないため度外れて奥行きが豊かというほどではないから。が、それはむしろイチャモンというべきでしょう。全長延ばさずにこれだけ確保できてるんだからたいしたもんだ。
【ドライブフィール】 運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★
どこからでも強力で、音や振動の質がよく、そしてトルコンやオートマの特性も含めて非常に運転しやすい。というわけで、やはり文句なし。いかにもつくりが精密そうだし、乗っていて濃厚な満足感がある。渋滞中に車速と加速度とスロットルペダルの踏み加減の関係がツボにハマると駆動系から軽いバックラッシュが出ることがあって、それが文字どおりタマにキズ(慣れれば出ないように運転できる)。いわゆる個体差か、あるいはシゴかれがちな広報車に特有の症状なのかもしれない。あと、カバタヤスシ先生いうところの「胸板が厚い」感じにおいてはW8よりこちらが上。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★★
4モーション=クワトロのご加護もあって、およそいかなる状況下でも安心、かつ快適。この分野でも、多くの側面においてベンツのCクラスに勝っている。乗って感じるありがたみはほとんどアウディA6級のスバラシさだが、たとえばステアリングフィールのチューニングは明らかにVW流。すなわち、操作力心もち重め。クイックな回頭性よりズシッとした落ち着き重視。で、全体としてA6よりむしろ自然で好ましい。A6も最近はググッとよくなっているし、また個人的な好みの問題もあるかもしれないけれど。
★★★★★じゃない理由は、あえていえば、130km/h付近で籠もり音のちょっとしたピークが出るから。このサイズのタイヤを履いたワゴンに特有の現象という可能性はあるとしても、アウトバーンの推奨速度に等しいゴールデン帯域でなぜ? こういうところの抜け目のなさでは、まだベンツには一歩譲る。それがワーゲンの可愛げだといえなくもないが、でも対策はしてください。
(写真=望月浩彦)
【テストデータ】
報告者:森慶太
テスト日:2001年10月24日から30日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2001年型
テスト車の走行距離:4443km
タイヤ:(前)205/55R16/(後)同じ
オプション装備:本革内装(11.0万円)
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2):高速道路(8)
テスト距離:約700km
使用燃料:51.0リッター(約700kmのうちの397km)
参考燃費:7.7km/リッター(約700kmのうちの397km)

森 慶太
-
スズキ・エブリイJリミテッド(MR/CVT)【試乗記】 2025.10.18 「スズキ・エブリイ」にアウトドアテイストをグッと高めた特別仕様車「Jリミテッド」が登場。ボディーカラーとデカールで“フツーの軽バン”ではないことは伝わると思うが、果たしてその内部はどうなっているのだろうか。400km余りをドライブした印象をお届けする。
-
ホンダN-ONE e:L(FWD)【試乗記】 2025.10.17 「N-VAN e:」に続き登場したホンダのフル電動軽自動車「N-ONE e:」。ガソリン車の「N-ONE」をベースにしつつも電気自動車ならではのクリーンなイメージを強調した内外装や、ライバルをしのぐ295kmの一充電走行距離が特徴だ。その走りやいかに。
-
スバル・ソルテラET-HS プロトタイプ(4WD)/ソルテラET-SS プロトタイプ(FWD)【試乗記】 2025.10.15 スバルとトヨタの協業によって生まれた電気自動車「ソルテラ」と「bZ4X」が、デビューから3年を機に大幅改良。スバル版であるソルテラに試乗し、パワーにドライバビリティー、快適性……と、全方位的に進化したという走りを確かめた。
-
トヨタ・スープラRZ(FR/6MT)【試乗記】 2025.10.14 2019年の熱狂がつい先日のことのようだが、5代目「トヨタ・スープラ」が間もなく生産終了を迎える。寂しさはあるものの、最後の最後まできっちり改良の手を入れ、“完成形”に仕上げて送り出すのが今のトヨタらしいところだ。「RZ」の6段MTモデルを試す。
-
BMW R1300GS(6MT)/F900GS(6MT)【試乗記】 2025.10.13 BMWが擁するビッグオフローダー「R1300GS」と「F900GS」に、本領であるオフロードコースで試乗。豪快なジャンプを繰り返し、テールスライドで土ぼこりを巻き上げ、大型アドベンチャーバイクのパイオニアである、BMWの本気に感じ入った。
-
NEW
2025-2026 Winter webCGタイヤセレクション
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>2025-2026 Winterシーズンに注目のタイヤをwebCGが独自にリポート。一年を通して履き替えいらずのオールシーズンタイヤか、それともスノー/アイス性能に磨きをかけ、より進化したスタッドレスタイヤか。最新ラインナップを詳しく紹介する。 -
NEW
進化したオールシーズンタイヤ「N-BLUE 4Season 2」の走りを体感
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>欧州・北米に続き、ネクセンの最新オールシーズンタイヤ「N-BLUE 4Season 2(エヌブルー4シーズン2)」が日本にも上陸。進化したその性能は、いかなるものなのか。「ルノー・カングー」に装着したオーナーのロングドライブに同行し、リアルな評価を聞いた。 -
NEW
ウインターライフが変わる・広がる ダンロップ「シンクロウェザー」の真価
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>あらゆる路面にシンクロし、四季を通して高い性能を発揮する、ダンロップのオールシーズンタイヤ「シンクロウェザー」。そのウインター性能はどれほどのものか? 横浜、河口湖、八ヶ岳の3拠点生活を送る自動車ヘビーユーザーが、冬の八ヶ岳でその真価に触れた。 -
NEW
第321回:私の名前を覚えていますか
2025.10.20カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。24年ぶりに復活したホンダの新型「プレリュード」がリバイバルヒットを飛ばすなか、その陰でひっそりと消えていく2ドアクーペがある。今回はスペシャリティークーペについて、カーマニア的に考察した。 -
NEW
トヨタ車はすべて“この顔”に!? 新定番「ハンマーヘッドデザイン」を考える
2025.10.20デイリーコラム“ハンマーヘッド”と呼ばれる特徴的なフロントデザインのトヨタ車が増えている。どうしてこのカタチが選ばれたのか? いずれはトヨタの全車種がこの顔になってしまうのか? 衝撃を受けた識者が、新たな定番デザインについて語る! -
NEW
BMW 525LiエクスクルーシブMスポーツ(FR/8AT)【試乗記】
2025.10.20試乗記「BMW 525LiエクスクルーシブMスポーツ」と聞いて「ほほう」と思われた方はかなりのカーマニアに違いない。その正体は「5シリーズ セダン」のロングホイールベースモデル。ニッチなこと極まりない商品なのだ。期待と不安の両方を胸にドライブした。