第181回:ルノースポール、日本を走る(後編) ~“最速男”のタイムアタック【Movie】
2013.04.28
エディターから一言
ルノースポールは、2013年4月12日から17日まで、ヨーロッパ以外では初めてとなる走行テストを日本で実施した。当日のテストドライバーを務めたのは、ドイツのニュルブルクリンク北コースで「メガーヌ ルノースポール」を駆り、“市販FF車最速ラップ”を記録したロラン・ウルゴン氏、その人だ。
17日に鈴鹿サーキットで行われたメディア向けの取材会で、タイムアタックなどの合間に話を聞いた。
![]() |
![]() |
一般道も無視できない
ウルゴン氏は、昨年行われたファン感謝イベント「ルノースポール ジャンボリー」で、富士スピードウェイを走行したことがある。それと比較すると、鈴鹿は、よりエキサイティングなサーキットに映ったようだ。
「グリップは富士より上だし、1コーナーからS字コーナーにかけてのセクターや130Rは、他のサーキットには存在しないテクニカルなレイアウトですね。S字ではトラクションが重要だと感じました。130Rは、最初はビビりました(笑)。エキサイティングなコーナーです」
さらにウルゴン氏は、高速道路や一般道といった公道もテストしている。ルノースポールのような高性能車にとって、日本の公道はあまり意味のある舞台ではないように思えたが、実際はそうでもなかったようだ。
「まず印象的だったのは、渋滞がひどいことです(笑)。高速道路の継ぎ目が多いし、しかも段差が大きい。ヨーロッパではあのような継ぎ目や段差はありません。サスペンションのストロークだけでなく、前後方向の剛性も大事だと思いました」
テスト車は日本仕様の「メガーヌ ルノースポール」で、右ハンドル車のテスト自体も初めてだった。左手でのギアチェンジに慣れておらず、何度もシフトミスをしたそうだが、それでも2分33秒328というラップタイムを記録したのだからさすがだ。
鈴鹿は開発に向いている
そんな走りの片りんを体感すべく、当日は同乗走行の時間を設けてくれた。「メガーヌ ルノースポール」に4人で乗って、フルコースを3周するというメニュー。僕はウルゴン氏の助手席に乗ったが、今思えば助手席でよかった。
1周目は慣熟走行で、僕がサーキット走行をたしなむ程度のペース。内心「こんなもんか」と思ったが、それはあくまで“慣熟”だった。メインストレートに戻って200km/h近くまで速度を上げ、さっきの倍近いスピードで1コーナーへ……! 心臓が口から飛び出しそうになった。
市販の前輪駆動車とは思えぬ横Gが体を襲うや、タイヤがグリップの限界を迎え、4輪ともスライドを始めた。続くS字も軽い4輪ドリフトで抜けていく。市販車なのに縁石にガンガン乗り上げて、見ているこっちが心配になるが、何事も起こらない。
ヘアピンからスプーンコーナーを抜け、次は130R。これまた想像を絶するスピードで飛び込んでいく。さすがにここはグリップ走行だろうと思いきや、立ち上がりではスライドを始めて肝を冷やした。でもウルゴン氏は平然とアクセルを踏み続けていく。
最後の周回は少し慣れてきたので、ドライビングを観察すると、とにかく動作に無駄がなく、クルマも唐突な動きを一切見せない。そしてコーナーは、良い意味でFFらしからぬ、前後のグリップバランスが取れた姿勢でクリアしていくのだった。
自分でドライブしてもすごいクルマだと思い込んでいた「メガーヌ ルノースポール」の実力を、これでもか! というほど見せつけてくれた“ニュル最速男”は、最後にこう付け加えた。
「今回のテストで得られたデータは、今後開発される車種に反映するつもりです。ただ鈴鹿は全般的に開発に向いたコースで、個人的にも気に入ったので、機会があったらまた来たいですね」
もちろんそれは、大歓迎。ただ、また助手席に乗ってくださいと言われたら……ちょっと悩む!?
(文=森口将之/写真=ルノー・ジャポン、webCG)
【Movie】ロラン・ウルゴン、鈴鹿を走る!
ニュルでFF車最速タイムを出したテストドライバー ロラン・ウルゴン氏。「メガーヌ ルノースポール」による鈴鹿タイムアタックの様子を紹介する。

森口 将之
モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。ヒストリックカーから自動運転車まで、さらにはモーターサイクルに自転車、公共交通、そして道路と、モビリティーにまつわる全般を分け隔てなく取材し、さまざまなメディアを通して発信する。グッドデザイン賞の審査委員を長年務めている関係もあり、デザインへの造詣も深い。プライベートではフランスおよびフランス車をこよなく愛しており、現在の所有車はルノーの「アヴァンタイム」と「トゥインゴ」。
-
第849回:新しい「RZ」と「ES」の新機能をいち早く 「SENSES - 五感で感じるLEXUS体験」に参加して 2025.10.15 レクサスがラグジュアリーブランドとしての現在地を示すメディア向けイベントを開催。レクサスの最新の取り組みとその成果を、新しい「RZ」と「ES」の機能を通じて体験した。
-
第848回:全国を巡回中のピンクの「ジープ・ラングラー」 茨城県つくば市でその姿を見た 2025.10.3 頭上にアヒルを載せたピンクの「ジープ・ラングラー」が全国を巡る「ピンクラングラーキャラバン 見て、走って、体感しよう!」が2025年12月24日まで開催されている。茨城県つくば市のディーラーにやってきたときの模様をリポートする。
-
第847回:走りにも妥協なし ミシュランのオールシーズンタイヤ「クロスクライメート3」を試す 2025.10.3 2025年9月に登場したミシュランのオールシーズンタイヤ「クロスクライメート3」と「クロスクライメート3スポーツ」。本格的なウインターシーズンを前に、ウエット路面や雪道での走行性能を引き上げたという全天候型タイヤの実力をクローズドコースで試した。
-
第846回:氷上性能にさらなる磨きをかけた横浜ゴムの最新スタッドレスタイヤ「アイスガード8」を試す 2025.10.1 横浜ゴムが2025年9月に発売した新型スタッドレスタイヤ「アイスガード8」は、冬用タイヤの新技術コンセプト「冬テック」を用いた氷上性能の向上が注目のポイント。革新的と紹介されるその実力を、ひと足先に冬の北海道で確かめた。
-
第845回:「ノイエクラッセ」を名乗るだけある 新型「iX3」はBMWの歴史的転換点だ 2025.9.18 BMWがドイツ国際モーターショー(IAA)で新型「iX3」を披露した。ざっくりといえば新型のSUVタイプの電気自動車だが、豪華なブースをしつらえたほか、関係者の鼻息も妙に荒い。BMWにとっての「ノイエクラッセ」の重要度とはいかほどのものなのだろうか。
-
NEW
トヨタ・カローラ クロスGRスポーツ(4WD/CVT)【試乗記】
2025.10.21試乗記「トヨタ・カローラ クロス」のマイナーチェンジに合わせて追加設定された、初のスポーティーグレード「GRスポーツ」に試乗。排気量をアップしたハイブリッドパワートレインや強化されたボディー、そして専用セッティングのリアサスが織りなす走りの印象を報告する。 -
NEW
SUVやミニバンに備わるリアワイパーがセダンに少ないのはなぜ?
2025.10.21あの多田哲哉のクルマQ&ASUVやミニバンではリアウィンドウにワイパーが装着されているのが一般的なのに、セダンでの装着例は非常に少ない。その理由は? トヨタでさまざまな車両を開発してきた多田哲哉さんに聞いた。 -
2025-2026 Winter webCGタイヤセレクション
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>2025-2026 Winterシーズンに注目のタイヤをwebCGが独自にリポート。一年を通して履き替えいらずのオールシーズンタイヤか、それともスノー/アイス性能に磨きをかけ、より進化したスタッドレスタイヤか。最新ラインナップを詳しく紹介する。 -
進化したオールシーズンタイヤ「N-BLUE 4Season 2」の走りを体感
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>欧州・北米に続き、ネクセンの最新オールシーズンタイヤ「N-BLUE 4Season 2(エヌブルー4シーズン2)」が日本にも上陸。進化したその性能は、いかなるものなのか。「ルノー・カングー」に装着したオーナーのロングドライブに同行し、リアルな評価を聞いた。 -
ウインターライフが変わる・広がる ダンロップ「シンクロウェザー」の真価
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>あらゆる路面にシンクロし、四季を通して高い性能を発揮する、ダンロップのオールシーズンタイヤ「シンクロウェザー」。そのウインター性能はどれほどのものか? 横浜、河口湖、八ヶ岳の3拠点生活を送る自動車ヘビーユーザーが、冬の八ヶ岳でその真価に触れた。 -
第321回:私の名前を覚えていますか
2025.10.20カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。24年ぶりに復活したホンダの新型「プレリュード」がリバイバルヒットを飛ばすなか、その陰でひっそりと消えていく2ドアクーペがある。今回はスペシャリティークーペについて、カーマニア的に考察した。