ボルボV40クロスカントリー T5 AWD(4WD/6AT)
基本が優れていればこそ 2013.06.23 試乗記 先進の安全装備と4WDシステムを併せ持つ「ボルボV40クロスカントリー」に試乗。初夏のドライブを通して、その実力をチェックした。「V40」シリーズきっての万能選手
今「ボルボV40」が欲しければ、新しい「クロスカントリー」あたり、けっこう狙う価値ありそうかも。待つ身はツラいもので、今年2月に発売されたV40、好評で注文殺到はご同慶の至りだが、納車が間に合わない。このままでは今までのクルマの車検が切れてしまうし、じゃんじゃん使いたい夏も迫って来るしと、焦るファンも多いだろう。そこでクロスカントリーに目移りしても無理はない。
名前はクロスカントリー(ほかのシリーズにある「XC」も意味は同じ)でもオフロードを想定した体育会系ではなく、大流行のクロスオーバーの最新作。セダンでありワゴンでありSUVであり、いざとなればGTでもあると同時に、どれでもないのがクロスオーバー。その点、外寸はV40(同じ5気筒の「T5 R-DESIGN」)とほとんど同じで、ちょっとボディーが分厚いだけ(全高が1440mmから1470mmに、最低地上高が135mmから145mmに増加)。フロントに横置きの2リッター5気筒ターボ (B5204T型)は最高出力213ps/6000rpm、最大トルク30.6kgm/2700-5000rpmと性能まで共通、組み合わせの変速機もスポーツモード付きの6段ATと変わらない。サスペンションの構造も細部まで同じ。履物を見るとV40が7.5J×18ホイールに225/40R18タイヤ、V40クロスカントリーが7J×17ホイールに225/50R17タイヤとわずかに違うが、そこに良さの一つがあったりする。
走るほどに頼もしくなる
それより際立つのは、FF方式を採るV40に対し、V40クロスカントリーにはハルデックス系のAWD(4WD)機構が与えられていること。これによって、V40にできることは何でもできるだけでなく、V40クロスカントリーでなければならないこともあるというのが魅力のポイントだ。
そのうえV40クロスカントリー T5 AWDは359万円で、T5 R-DESIGNより40万円も安い。4気筒モデルなら269万円から手に入るV40だが、どうやら「フォルクスワーゲン・ゴルフ」などを強く意識して頑張りすぎた出血価格に見える。
乗った瞬間から全身を包む重厚感はV40そのもの。そのうえでクロスオーバーの要素の売り物として、その気で攻めればGT的な貌(かお)ものぞかせるV40に対し、どちらかといえばSUV的な風合いを感じさせるのがV40クロスカントリーだ。
サスペンションの硬さはV40と同程度だが、心理的には、こちらの方がたくましそうに思える。路面の表面形状(凹凸など)は忠実に伝えてくるが、決してゴツゴツ野卑ではなく、コーナリング時のロールや急加速、急減速での姿勢変化をムムッと押し返し、強引にフラットさを保とうとする。走れば走るほど頼もしさを痛感させるタイプで、姿形こそ激変したものの、古くからのボルボ感覚は健在だ。
安全にも寄与する4WDの恩恵
注目の4WDシステムは、普通に走る範囲では存在を感じさせないが、滑りやすい路面では、あってよかったと感謝したくなる。
FFのV40では、雨のコーナーからの立ち上がりなどでトルクが余りすぎ、大ざっぱに踏むとトラクションコントロールが介入してしまうことがある。不安定にはならないが、駆動力のすっぽ抜けは悔しい。ところがV40クロスカントリーは、どこでも何事もなかったかのように普通に行ける。かつてのハルデックス方式の4WDは、前輪が空転し始めてから後輪に駆動力が分配されるまで、髪の毛一本ほどの遅れを思わせることもあったが、今や電子制御化されて反応が鋭いだけでなく、後ろへの分配も早い段階で多めになる。
以前、舗装面に雪と氷がまだら状に散在する広場で強引な運転(ステアリングを大きく切り込んだまま急発進)を試したら、ちゅうちょせず走りだした瞬間に後輪がズザッと張り出しかけ、結果として前後が絶妙に釣り合ってくれた。それを味わってからは、通常のコーナリングでも後ろから適度に押し出してくれている気がするようになった。あくまでも故意に攻めての観察だが、こういう性格は日常ドライビングの隅々でも役立っているはず。例えば雨の高速道路でも、優秀な4WDは直進安定性を高めてくれて安心感が増す。全方位の安全性に関して世界のリーダーたることを叫ぶボルボに乗るなら、ぜひとも4WDを選びたいところだ。
ハイテク装備も大事だけれど
安全性については、いまさら語るのも面倒なほど充実している。よくある品目は当然として、流行の先駆けとなった緊急自動ブレーキももちろん標準装備。さらに歩行者エアバッグまで採り入れて、またもクルマ界の歩みをリードした。不運にも歩行者をはね上げてしまった瞬間、スカットル部に内蔵のエアバッグが開いてボンネットを持ち上げ、できるだけソフトに人体を受け止めると同時に、ボンネット裏のエンジンなどにぶつかるのを避ける装備だ。いや、それらを搭載する高剛性ボディー、しっかり安定した運転姿勢を保証してくれるシートなど、本当の基本設計こそ最高の安全装備と言うべきだろうか。
こんなV40クロスカントリーに乗ると、四方八方くまなく守られた安心感が濃密だが、それだけに、周囲に危険を及ぼすような運転をする気になれなくなるのは、不思議だが本当だ。V40やV40クロスカントリーは、乗るだけで「いい人」になれる、性格改善カーなのかもしれない。
(文=熊倉重春/写真=荒川正幸)
テスト車のデータ
ボルボV40クロスカントリー T5 AWD
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4370×1800×1470mm
ホイールベース:2645mm
車重:1590kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直5 DOHC 20バルブターボ
トランスミッション:6段AT
最高出力:213ps(157kW)/6000rpm
最大トルク:30.6kgm(300Nm)/2700-5000rpm
タイヤ:(前)225/50R17/(後)225/50R17(ミシュラン・プライマシーHP)
燃費:12.4km/リッター(JC08モード)
価格:359万円/テスト車=459万5000円
オプション装備:パノラマ・ガラスルーフ(18万円)/車体色<ロウカッパーメタリック>(8万円)/歩行者エアバッグ(6万円)/リアビューカメラ(6万円)/ナビゲーション・パッケージ(20万円)/レザー・パッケージ(20万円)/セーフティ・パッケージ(20万円)/ETC車載器(2万5000円)
テスト車の年式:2013年型
テスト車の走行距離:3889km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(4)/高速道路(6)/山岳路(0)
テスト距離:389km
使用燃料:33.8リッター
参考燃費:11.5km/リッター(満タン法)

熊倉 重春
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