第6回:ゴルフ7でびっくり憂国ニッポン!
日本メーカーはマジでクルマに飽き始めた?
2013.06.15
小沢コージの勢いまかせ!! リターンズ
「ゴルフ7」の衝撃
ヤバイすヤバイすマジヤバイ。今やあちこちメディアで褒められまくってる「ゴルフ7」こと新型「フォルクスワーゲン・ゴルフ」。詳しくは各リポートを見ていただくとして、不肖小沢は乗るなりそのデキの良さが予感させる、日本車の将来の危機的状況を考え、マジで暗~くなってしまっていたのです。
それは日本メーカーが“そっち方向”のクルマ作りをほとんどしてないという恐怖の事実において。そっち方向というのは、ステアリングフィールとか乗り心地とか質感とかいわゆる豊田章男社長の言う「クルマの味」の追求であり、ある意味現状ゴルフ7に対抗できるのは、一部レクサスぐらいのもの。それもコストパフォーマンスを考えるとゴルフの足元にも及ばない。最近でこそスカイアクティブ戦略のマツダや「XVハイブリッド」のスバルが頑張ってるとはいえ、インテリアのクオリティーなんかはまだまだでしょう。
ましてや今の国内販売ランキングを見るとマジで暗たんたる気分になる。販売上位はほとんど味の薄いハイブリッドカーか軽自動車か箱型ミニバンで、それはそれで「エコな時代」とか「ダウンサイジングの時代」とか人は言うんだろうけど、不肖小沢に言わせれば「日本人はますます喜んでマズいクルマを食っている」ような状況だ。
そしてゴルフ7に乗ってハッキリと確信し、なおかつ戦慄(せんりつ)を覚える事実は、彼らドイツ人がまだまだクルマ作りに飽きてない……という点にある。ステアリングやブレーキタッチ一つとっても本当にものすごく、しかもこれは世界的コストダウンと見られがちな、「MQB」という新モジュール戦略の上で実現している。
日本車はここ10年のハイブリッド戦略や軽自動車戦略で実は「エコなぶん走りがつまらなくてもいい」「しょうがない」と言下に主張し続けた。それはかつて小泉首相が言った「痛みを伴う改革」みたいなもので、僕らはそれをあっさりと受け入れたわけだけど、かたやクルマ作りの最大のライバル、ドイツはそれを認めず「うまみを伴う改革」を今回ハッキリとものにした。
ニッポンの明日はどっちだ?
それと日本のエンジニアを見たり、しゃべったりしていて漠然と寂しく思うのは、彼らがそこに満足し、疑問を抱いてない点だ。かつてはドイツ車やフランス車やイタリア車なんかに対する素直な憧れやライバル心が露骨にあり、時に幼稚な部分もあったけれど、非常に素直で共感できるものがあった。
だが、今のエコロジー路線は、いわば単なる受験対策にしか不肖小沢には見えない。点数=カタログ燃費を上げることに夢中で、実際に売れるし、一応「走りも考えている」とは言うんだけれど、それはメインではない。まるでローカロリー度を競っているレストランみたいなものでうまみは二の次。しかもその傾向はますます進んでいるようにも思える。「楽しいクルマ」なんてクチでは言ってても、ほとんど響いてこないし、食べるだけのクルマ、乗るだけのクルマになっているような気もする。
今回は不肖小沢の、極端に主観的な文章になってしまっただけに、うなずけない人も多いとは思うけど、とにかくゴルフ7に乗ってから、国産エコカーに乗り換えると愕然(がくぜん)とするのだ。
一時は追いつけ追い越せでかなり迫っていた時期もあるのに、今やかなり突き放されてるどころか、全く違う方向の道を歩んでいる事実に。
このハイブリッド&軽自動車化で突っ走る日本車は今後一体どうなるんでしょうか? それはそれで明るい未来が待っているんだろうか?
誰か知ってるなら答えを教えてくれ~ぃ!!
(文=小沢コージ)
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小沢 コージ
神奈川県横浜市出身。某私立大学を卒業し、某自動車メーカーに就職。半年後に辞め、自動車専門誌『NAVI』の編集部員を経て、現在フリーの自動車ジャーナリストとして活躍中。ロンドン五輪で好成績をあげた「トビウオジャパン」27人が語る『つながる心 ひとりじゃない、チームだから戦えた』(集英社)に携わる。 YouTubeチャンネル『小沢コージのKozziTV』
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