フォルクスワーゲン・ポロ ブルーGT(FF/7AT)
幸福なマリアージュ 2013.10.24 試乗記 エコとスポーツをコンセプトに登場した「ポロ ブルーGT」。エコである「低燃費」とエゴである「走り」は両立し得るのか、高速道路とワインディングロードで確かめた。いま、「ポロ ブルーGT」を買う理由
現行「ポロ」が登場してはや4年。この間、フォルクスワーゲン・グループは「MQB」なる横置きプラットフォームの新戦略を構築し、新型「ゴルフ」を本年、ついにわが極東の島国に上陸せしめた。うわさ通り、「ゴルフVII」は大いなる衝撃であった。MQBによるコストダウンとクオリティーアップによって、ゴルフクラスのスタンダードを完全に書き換えた。これまでの「ゴルフVI」だって、ライバルとは一線を画したできばえだった。それがゴルフVIIになると、ゴルフ以外のクルマは思い浮かばないぐらい孤高の存在になった。249万円で、完璧なコンパクトカーが手に入る。「ゴルフクラスはゴルフだけクラスになるだろう」。ある雑誌はゴルフVIIを評してそう書いた。書いたのは私ですけど。
そのような状況のなかで、「ポロ ブルーGT」、263万円は日本に姿を現した。「ポロGTI」318万円と、「ポロTSIハイライン」246万円の狭からぬ隙間に投入されるモデルとして。しかしながら、これではゴルフVIIを買ってなお、おつりが来る価格ではないか? いったい、ゴルフのカタチをした「ベントレー」、というのは大げさに過ぎるとしても、プレミアムカー並みのクオリティーを持つゴルフVIIが登場しているいま、ポロ ブルーGTを買う理由がいずこにあるのか? なるほど現行ポロは、デビュー当時はすばらしいクルマだった。けれど、ゴルフVIIが出てしまった以上、MQB化された次期ポロが出るまでは、アウト・オブ・デート、アウト・オブ・眼中と断ずるほかない、と私はさほど期待を抱かずにブルーGTのコックピットに収まった。
ブルーGTは、ポロに「ゴルフTSIハイライン」用のパワートレインを組み込み、GTI風の化粧を内外装に施したモデルである。1.4リッター直4 DOHCターボは最高出力140psと最大トルク25.5kgmを発生する。一方、ポロGTI の1.4リッター直4 DOHCターボは179psといっそうパワフルで、ブルーGT用とはボア×ストロークからして異なる。ブルーGT(ゴルフ ハイライン)用は74.5×80mmのロングストローク型、GTI用は76.5×75.6mmのショートストローク型で、明瞭に性格分けがされている。ビュンビュン回すならショートストローク、トルク重視ならロングストローク。ダウンサイジングという革新的な技術を導入する一方、おさえるべき基本はちゃんとおさえている。理屈が合っているところが気持ちよい。
適度に、ちょっとスポーティー
ブルーGTのコンセプトは、“BlueMotion meets GTI”である。BlueMotionとはすなわちフォルクスワーゲンのエコ技術を指す。1.4リッターTSIユニットには気筒休止システムの「ACT(アクティブシリンダーマネジメント)」が組み込まれ、低負荷時には4気筒のうち2気筒が勝手にお休みをいただいて、燃費を削減する。ACTの作動状況は、ドライバーが神経を集中していても、メーターにその表示が出ない限りまったく気づかない。きわめてスムーズに行われる。スタートストップシステムやブレーキエネルギー回生システムも、当然採用されている。エコである低燃費とエゴであるGTI的な「走り」の性能のこんにち的妥協、否、両立を図ったのがブルーGTなのである。
カタログ燃費はJC08モードで、21.3km/リッターと、ポロ史上最高をうたう。1.2のコンフォートラインは21.2km/リッター、同ハイラインは19.4km/リッター、GTIは16.6km/リッターである。GTIとブルーGTは同じタイヤサイズでありながら、燃費がかくも違うことに注目である。
『webCG』編集部の駐車場を出てすぐさま思ったのは、乗り心地がイマイチしっくりしていないことだった。なんだか落ち着きがない。ビタッと決まっている! という印象に欠ける。ま、これは私の先入観のなせるワザかもしれない。物事は極端に触れた方がオモシロい、という見方を私はしがちである。二兎(にと)を追うものは一兎(いっと)をも得ず。ところが、町中から首都高速にあがり、高速道路をフツーに走る速度になると、すっかりそのような違和感はなくなる。意外としっとりしている。やや硬めではあるけれど、堅すぎない、適度に、ちょっとスポーティーめ、ぐらいのセッティングである。
シレッと速い
なによりポロはゴルフより小さいことが大いによろしい。ゴルフは大きくなりすぎた……とつぶやく御仁も多々いらっしゃるのではあるまいか。その昔、徳大寺有恒さんから教わった自動車格言のひとつにこんなのがあります。
「小型車は小さいからいいんだ」
なるほど、と感心した。
「大型車は大きいからいいんだ」「古いクルマは古いからいいんだ」というように、じつはこれ、なんにでも使えます。「安い眼鏡は安いからいいんだ」「吉野家の牛丼は吉野家だからいいんだ」「秋は秋だからいいんだ」
しかしながら、小型車がみずからのサイズを小さいまま維持することはじつはむずかしい。ゴルフしかり、ポロしかり。だからこそ、いまや「up!」がある。ゴルフでは大きすぎる人に向けた小型車がポロであり、ポロのなかでもハイラインの120psではモノ足りず、さりとてGTIの179psでは強力すぎる。そういう人に向けたクルマがポロ ブルーGTなのである。って、最初からフォルクスワーゲンはそういってますけど。
高速クルーズは快適で、十分速い。けれど、GTIのような演出は図られていない。サウンドにしても、いわゆる「やってる感」とは無縁だ。ブオンッ! とかいったりしない。上品。それでいて、シレッと速い。感覚的にコレ、と選ぶのではなくて、自分ちの駐車場のサイズや自分の技量、使い方について客観的に考える人に選ばれるクルマがブルーGTでありましょう。きわめて理知的なタイプに好まれる、ということができるのではないか。試乗を終えた後、ブルーGTは特に深い印象は残さないけれど、なかなかいいクルマだと思い直した。
最後に燃費について。東京~御殿場間、主に高速主体の97.2kmで15.4km/リッターと車載コンピューターは表示した。これはガソリンエンジンにして、ディーゼル並みといってもよいのではないか。燃費と性能は、21世紀のこんにち、もはや二律背反事項にあらず。ポロ ブルーGTは幸福なマリアージュをなしとげた。一台のクルマが進化すれば、すべてのクルマが進化する。そういうものである。とはいえ、ブルーGTのようなクルマはまだ数少ない。
(文=今尾直樹/写真=峰 昌宏)
テスト車のデータ
フォルクスワーゲン・ポロ ブルーGT
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=3995×1685×1460mm
ホイールベース:2470mm
車重:1170kg
駆動方式:FF
エンジン:1.4リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:7段AT
最高出力:140ps(103kW)/4500-6000rpm
最大トルク:25.5kgm(250Nm)/1500-3500rpm
タイヤ:(前)215/40R17 87V/(後)215/40R17 87V(ダンロップ SP SPORT MAXX)
燃費:21.3km/リッター(JC08モード)
価格:263万円/テスト車=298万3640円
オプション装備:ETCユニット(1万9740円)/Volkswagen純正ナビゲーションシステム512SDCW(20万7900円)/バイキセノンヘッドライト(12万6000円)
テスト車の年式:2013年型
テスト車の走行距離:3304km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(1)/高速道路(6)/山岳路(3)
テスト距離:271.8km
使用燃料:20.1リッター
参考燃費:13.5km/リッター(満タン法)

今尾 直樹
1960年岐阜県生まれ。1983年秋、就職活動中にCG誌で、「新雑誌創刊につき編集部員募集」を知り、郵送では間に合わなかったため、締め切り日に水道橋にあった二玄社まで履歴書を持参する。筆記試験の会場は忘れたけれど、監督官のひとりが下野康史さんで、もうひとりの見知らぬひとが鈴木正文さんだった。合格通知が届いたのは11月23日勤労感謝の日。あれからはや幾年。少年老い易く学成り難し。つづく。
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