シボレー・コルベット クーペZ51(FR/6AT)
飛躍するアメリカン 2014.04.10 試乗記 アメリカを代表するスポーツカー「シボレー・コルベット」の7代目が日本上陸。進化を遂げた運動性能だけにとどまらない、アメ車ならではの魅力に触れた。その心意気にシビれる
アメリカン・ドメスティックからルマンの常連マシンへ。この十数年でシボレー・コルベットにまつわるイメージは劇的に変わった。今や世界に冠たるFRスポーツといっても過言ではないだろう、それゆえに7代目=「C7」の開発でもパフォーマンスが優先されたことは想像に難くない。
例えばその断片はエクステリアにも見て取れる。鋼板プレスではこうはいかないだろうと言わんがばかりにメリハリを強調したフォルムの端々。ボンネットやリアフェンダー、テールエンドに据えられたダクトはサーマルマネジメントにおいて大きな効果をあげる一方で、ラウンドガラスのハッチバックや丸4灯のテールランプといった象徴的な意匠の変更を迫ることとなった。運動性能の代償とはいえもったいない……と思うのは、いにしえからのコルベットファンだけだろうか。が、一方でOHVのV8エンジンをフルフレーム構造のシャシーに積み、横置きリーフスプリングを用いたサスで支えるという基本エンジニアリングはC7でも踏襲された。あくまでコルベットの、アメリカのやり方で最速を求める。いにしえからのファンこそ、その心意気にスカッとさせられるはずだ。
C7には従来通りクーペとコンバーチブルという2つのボディーバリエーションがあり、おのおのは標準仕様と「Z51」という2グレードで構成される。うち、今回は輸入開始直前ということもあって試乗車はクーペのみ。配車の関係でわれわれにはZ51の6段ATがあてがわれることになった。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
標準モデルでも十分にマニアック
Z51とは主にハンドリングパフォーマンスを高めるコルベットの伝統的なオプションパッケージだ。日本でもかつては「C5」の時代に純正のジムカーナサスやマグネシウムホイールを組み合わせたMTの車両に、その名が配されたことがある。
C7のZ51は大径化されたタイヤ&ホイール、そしてブレーキシステムと強化されたマグネティックライド・サスペンションのみならず、エンジンは吸排気系による若干のパワーアップとドライサンプ化による低重心化、ミッションクーラーの増設や電子制御LSDの追加など、サーキット走行を前提にあらかたの対策が組み込まれている。ギア比も7段MTではロー&クロス側に、6段ATでもファイナルがロー側に変更されるなど、その仕立ては「C6」時代の「Z06」に比するほどマニアックだ。
既にC7のZ06は発表されているが、エンジンにはC6時代の「ZR1」が搭載していた6.2リッタースーパーチャージャーが採用されている。かつてC6のZ06が搭載していた7リッター自然吸気の「LS7」は、現在のゼネラルモーターズ(GM)において最も官能的なエンジンユニットだと個人的には思うが、C7と組み合わせられる可能性は一歩後退したということだろう。というよりも、C7のZ51はC6のZ06と同等以上のパフォーマンスを持つというのがGM側の言い分だからして、それが真実であれば、わざわざLS7など積む必要もないことになる。
アルミフレームが利いている
果たして、C7を初めて日本の走り慣れた路上で扱ってみて納得させられた。これは間違いなく先代Z06より速い。動力性能こそほぼ同等かやや劣るくらいかもしれないが、踏める時間が圧倒的に長いぶん、結果的に多くの人が気持ちよく扱えて速く走れる、そういうものになったといえるだろう。
全面刷新に伴い標準車の時点でアルミフレームとなったC7のシャシーは、従来のハイドロフォームを使ったタイプでなく、押し出し材やダイキャスト等を組み合わせた新工法を前提に設計されたものだ。結果としてAピラーも含めたフレームセクションは45kg軽く、ねじり剛性は57%向上したという……が、実際のドライブフィールはそれどころではないほどに軽く、かつフィードバックもガチッとした印象だ。ステアリングの支持剛性が高められたぶんインフォメーションもスッキリしたものになり、中途半端な入力ではバネ下がユサユサ震えるという伝統的なサスペンションの癖も封じ込められ……と、濁りの要素がことごとく排されていることもあってか、動的な質感はこれまでのコルベットの感覚を完全に超越している。
タイトなワインディングもお手の物
走り慣れた山坂道をドキッとするほど狭く短く感じさせてしまうのは、OHVにして6000rpmオーバーまでしっかりパワーを乗せて吹け上がる「LT1」の火力ばかりが原因ではない。Z51では最大1G余に達するというコーナリングフォースは、すなわちべらぼうな旋回スピードを意味している。FRにしてそこまで踏ん張りが利くのは、シャシーの素性やエアロダイナミクスがしっかり機能していることに加えて、装着タイヤ「ミシュラン・パイロットスーパースポーツ」のパフォーマンスも一因となっているはずだ。現場にいた関係者いわく、Z51用に開発されたそれはFIA-GT選手権で活躍した先代ベースのレーシングカー「C6.R」が装着していたタイヤに用いられていたコンパウンドをそのまま使いながら、公道用として最適化しているという。ここ一発のグリップ力はもちろんながら、持ち前の真円度と柔軟性の高さはランフラット構造でも生かされており、微細な路面入力はきちんと角を丸め込んで伝えるなど、このクルマの上質感の演出にも一助となっているようだ。
6段ATはローギアード化されたファイナルと併せて、タイトな曲率の峠道が多い日本でもZ51の動的パフォーマンスを十分に引き出すことが可能だ。アメリカで試乗した経験からすると、7段MTは操作フィーリングこそトランスアクスルらしからぬ小気味よさを備えてはいるが、いかんせんシフトゲートの左右ピッチが短く、自在な操作には慣れを要するだろう。逆に6段ATはパドルによる変速のレスポンスも十分満足できるもので、スポーティーなドライビングに対してもロスをほとんど感じさせない。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
魅力は「速さ」だけではない
走行状況に応じて変速マネジメントやスロットル開度、ダンパーレートやステアリングのアシスト量などを一括して最適化するドライビングモードセレクターは、通常使用するだろうエコおよびノーマルと、スポーツおよびトラックのモードとでは大きな差異が持たされており、トラックモードでのサスの減衰感や舵(だ)の保持力、スロットルのツキなどは完全にスポーツカーの領域となる。一方で、エコモードではミッションが低回転域を積極的に多用するのに加え、かつて世界初の実用化に成功したGMが手掛ける気筒休止システムが、燃費向上を後押しする。V4とV8の切り替えどころはメーター内の小さなインジケーターで確認しないとわからないほど滑らかだが、それを見る限り気筒休止は頻繁に介入。短距離ながら100km/h前後の流れに乗った巡航を試みての燃費は、車載計で12km/リッターをオーバーするところを指した。前型に対しては2割近い伸びといったところだろうか。彼らが主張する「ポルシェ911」以上の高効率はじっくり乗り込んでみないとわからないが、少なくともアメリカ車=ガス喰(く)いというステレオタイプなイメージとは無縁であることは間違いない。
なにより、高速をゆるゆると流すこのような扱いにもストレスを感じさせないところがコルベットの美点……と、その感覚はC7にもきちんと受け継がれている。一方では大マジでヨーロッパ勢と対峙(たいじ)するスーパースポーツなりのポテンシャルを秘めながら、相変わらず真っすぐの道で淡々と距離を刻み続けるような使い方が気持ちいい。この走り心地の良さを、僕はいつもアメリカ車ならではの旅情感と解釈してしまうが、そういう意味ではC7は相変わらず男旅が似合うクルマでもある。
(文=渡辺敏史/写真=郡大二郎)
テスト車のデータ
シボレー・コルベット クーペZ51
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4510×1880×1230mm
ホイールベース:2710mm
車重:1580kg
駆動方式:FR
エンジン:6.2リッターV8 OHV 16バルブ
トランスミッション:6段AT
最高出力:466ps(343kW)/6000rpm
最大トルク:64.2kgm(630Nm)/4600rpm
タイヤ:(前)245/35ZR19 89Y/(後)285/30ZR20 95Y(ミシュラン・パイロットスーパースポーツ)
燃費:シティー=6.8km/リッター、ハイウェイ=11.9km/リッター、総合=8.5km/リッター(標準グレード、米国EPA値)
価格:1099万円/テスト車=1138万1000円
オプション装備:MyLink統合制御ナビゲーションシステム(35万円)/フロアマット(4万1000円)
※価格はいずれも8%の消費税を含む。
テスト車の年式:2013年型
テスト車の走行距離:1325km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター
拡大 |

渡辺 敏史
自動車評論家。中古車に新車、国産車に輸入車、チューニングカーから未来の乗り物まで、どんなボールも打ち返す縦横無尽の自動車ライター。二輪・四輪誌の編集に携わった後でフリーランスとして独立。海外の取材にも積極的で、今日も空港カレーに舌鼓を打ちつつ、世界中を飛び回る。
-
BSAゴールドスター650(5MT)【レビュー】 2026.6.2 かつて一世を風靡(ふうび)した英国の名門、BSAが復活! 新生第1号モデルである「ゴールドスター650」は、クラシックで優雅なお散歩バイク……と思いきや、ツインカムの大排気量シングルで、ライディングも前のめりに楽しめるマシンに仕上がっていた。
-
ホンダCR-V e:HEV RSブラックエディション(4WD)【試乗記】 2026.6.1 「ホンダCR-V」がフルモデルチェンジ。新型は適切なボディーサイズと高品質な内外装を持ち、乗れば最新のホンダ車らしい気持ちよさが味わえる。ただし、その月販目標は400台。ちょっと弱気ではあるものの、周辺事情にも考えを巡らせると極めて妥当な数字にも思えてくる。
-
トヨタRAV4 GRスポーツ(4WD/CVT)【試乗記】 2026.5.30 新型「トヨタRAV4」のプラグインハイブリッド車ではEV走行換算距離が約150kmにまで到達。もちろん電池容量の拡大によるところも大きいが、何よりも最新のハイブリッドシステムによる効率向上が効いている。「GRスポーツ」をドライブした印象をリポートする。
-
キャデラック・リリックV(4WD)【試乗記】 2026.5.29 キャデラック初の電気自動車(BEV)「リリック」に、最高出力646PSのハイパフォーマンスモデル「リリックV」が登場。“ブランド史上最速”をうたう豪速SUVだが、実際に乗ってみると、高い動力性能がもたらすゆとりや心地よさにも魅力を感じる一台となっていた。
-
DS N°8エトワールAWD(4WD)【試乗記】 2026.5.28 前衛を身上とするフランスのラグジュアリーブランド、DSオートモビルから、新たなハイエンドモデル「DS N°8(ナンバーエイト)」が登場。当代屈指の性能を誇る電気自動車であり、かの地では大統領専用車にも選ばれる一台の、独創の魅力に触れた。
-
NEW
レクサスES350h(FF/CVT)/ES350e(FWD)/ES500e(4WD)【海外試乗記】
2026.6.3試乗記「レクサスES」がフルモデルチェンジ。シャシーがFFベースというのは歴代モデルと同じだが、新型ではボディーサイズがググッと拡大。「LS」の6輪ミニバンコンセプトが登場したこともあり、今後のレクサスセダンの総代を担うことになる。北米で乗った印象をリポートする。 -
NEW
ミドシップ化で運動性能はどう変わる? 「GRヤリスMコンセプト」の現時点での完成度を体感
2026.6.3デイリーコラム「GRヤリス」をベースとしたミドシップ4WDとして市販化を目指す「GRヤリスMコンセプト」。現在もスーパー耐久に投入されるなどして鍛えられているが、その開発車両をドライブできた。普通のGRヤリスとの運動性能の違いや、新開発エンジンの印象などをリポートする。 -
NEW
第115回:メイク・アメリカ・グレート・アゲイン!(後編) ―デザインもサイズも規格外! 魅惑のアメリカ車はなぜ“主役”になれないのか?―
2026.6.3カーデザイン曼荼羅トヨタ&ホンダが発表した、米国生産車の日本導入計画。しかしアメリカには、規格外に面白いクルマがまだたくさんあるのだ! カーデザインの識者とともに魅惑の日本“未”導入車を探すとともに、魅力的なアメリカ車が、それでも主役になれない理由を考えた。 -
どうしてピアノブラックの内装材は多用されるのか?
2026.6.2あの多田哲哉のクルマQ&Aよく目にするピアノブラックの内装材は、「キズや脂汚れが目立つ」などネガティブな評価もしばしば。それでも多用されているのはなぜか? 車両開発者の多田哲哉さんに聞いてみた。 -
BSAゴールドスター650(5MT)【レビュー】
2026.6.2試乗記かつて一世を風靡(ふうび)した英国の名門、BSAが復活! 新生第1号モデルである「ゴールドスター650」は、クラシックで優雅なお散歩バイク……と思いきや、ツインカムの大排気量シングルで、ライディングも前のめりに楽しめるマシンに仕上がっていた。 -
レストモッドがイメージ 特別なオニツカタイガーの魅力に迫る
2026.6.1オニツカタイガーの新作ドライビングシューズを知る<AD>オニツカタイガーが、“レストモッド”と呼ばれるクルマのレストア&カスタム手法に着想を得たドライビングシューズを発表。4タイプ製作された、「MEXICO 66 DRIVING」のスペシャルバージョンの魅力に迫る。






























