MINIクーパー(FF/6AT)
小さな違いは大きな違い 2014.04.28 試乗記 じわじわと、しかし着実に進化する「MINI」。プラットフォームやパワーユニットが一新されるなど、ニューMINI史上最大の刷新(?)を受けた新型の走りやいかに? 注目の1.5リッター直3ターボエンジンを搭載する「クーパー」グレードを箱根のワインディングロードで試した。“基礎”を打ち直す
「MINI」がモデルチェンジした。初代(クラシック・ミニじゃなくてね)が2001年、2代目が06年に発売され、13年に本国で3代目が登場、このたび日本に導入された。もう7年もたったのか、2代目は……と感じるが、初代より長かったことになる。初代と2代目はとても似ていて、2代目が出てすぐ借りて長距離を走らせたが、ほとんどだれにも新型と指摘されなかったのを思い出す。
そして新型の3代目も、またもや見た目は一緒! ま、それが許されるクルマだ。それでも初代と2代目の違いよりも大きい差異がある。まず大きくなった。2代目よりも、95mm長くなり(3835mm)、40mm幅広くなり(1725mm)、高さは同じ(1430mm)。ホイールベースは30mm延び、2495mmに。大型化は特にリアの居住空間とラゲッジスペースの拡大のため。ラゲッジスペースは51リッター増え、211リッターとなった。
見た目としては、全体的にワイドで踏ん張り感が増した。フロントグリル付近はグイッと前へせり出した。また、リアコンビランプが大きい。時々、体に対して明らかに目がデカい魚がいるが、後ろから見るとあんな感じで、なかなかにファニーだ。スカした二枚目を目指すわけでもなく、気恥ずかしいほどのかわいさもない。ヒットモデルのモデルチェンジでガラッと印象を変えるのは勇気がいることだろうが、変えずに新鮮味を保つのも難しいはず。うまいデザインだと思う。
「クーパー」の心臓は3気筒
今回、まず「MINIクーパー」と「MINIクーパーS」が発売となった。遅れて「MINI ONE」も発売される。さらに言えば、2代目同様、「クラブマン」や「コンバーチブル」といったファミリーも順次モデルチェンジするはずだ。一番最後の「ペースマン」なんて出てきたのはつい最近だ。世代をまたぎながら、常に何か新鮮なモデルがある状態を保つのだろう。
MINIクーパーが積む直3ターボエンジンは排気量1.5リッターで、最高出力136ps/4400rpm、最大トルク22.4kgm(オーバーブースト時は23.5kgm)/1250-4300rpmを発生する。今回は乗れなかったMINIクーパーSの直4ターボエンジン(同192ps/5000rpm、同28.6kgm<オーバーブースト時は30.6kgm>/1250-4600rpm)は2リッター。
これらはモジュラータイプの新開発エンジンで、平たく言えば、約500ccの1気筒を3つ並べたか4つ並べたかの違い。あとから出てくるMINI ONEは、じゃあ2気筒ターボの1リッターかというと、そう単純ではなく、1.2リッターの直3ターボエンジンが載るという。
ところで、近頃の外国メーカーは、ディーゼルだけでなくガソリンも、効率のことを考えると小排気量+過給エンジンしかあり得ないと考えているようだ。日本車は、排気量の上限を定められていて過給しかあり得ない軽自動車を別にすると、過給よりもモーターとの組み合わせでパワーを稼ぐのを好む。が、小さいクルマにモーターやバッテリーを積むのはいろいろ難しくもあり、徐々に過給エンジンの波も押し寄せている。ただし、この先もずっと過給エンジン全盛かどうかはだれにもわからない。マツダなんて異なる考えのようだし。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
オトナな足どり
MINIクーパーの燃費は6AT車が17.9km/リッター(6MT車は19.2km/リッター)となり、めでたくエコカー減税が適用されるようになった。従来MT車のみだったアイドリングストップ機能が新型では全車に備わる。先代の燃費は15.4km/リッターと、ライバルに対する数少ないウイークポイントだったが、それを克服した。
走りはどうか。ATのクーパーを箱根のターンパイクで走らせた。新エンジンはアイドリングなどの極低回転時にはポロポロポロ……と3気筒らしい音を発する。決して上質な音ではないが、振動がうまく抑えられているので不快ではない。走りだして回転が上がると、4気筒と比べてもさほど変わらない音になる。
回転が上昇すると、クルマがグイグイ進むので、ドライバーの関心は音よりもトルク感へ移る。先代の1.6リッター直4自然吸気エンジンでは望むべくもないトルキーさで、まざまざと7年分の進化を感じさせられる。ま、音が軽いし、最大トルクの絶対値も限られているのでトルクもりもりという感じではないが、きつい登坂路もあるターンパイクをなんなく駆け抜けるんだから十分以上だ。
ハンドリングや乗り心地は、これまでよりも大人になった。すなわち、ステアリング操作に対して食いつきよく曲がりながらも、バタつかず、もう少しきちんとサスペンションがストロークする。連続するコーナーを駆け抜けるような時に、路面状態をダイレクトに乗員に伝える先代のほうが、もしかしたら刺激的ではあったかもしれないが、上質なのは間違いなく新型のほう。長時間ドライブに向いているのも新型だろう。MINIクーパーの標準タイヤは175/65R15だが、試乗車には205/45R17のオプションのタイヤ(ランフラット)が装着されていた。標準は地味なサイズなので、ルックスを含めどう違うかも気になるところだ。また、オプションの「ダイナミック・ダンパー・コントロール」が付いていてダンパー減衰力を「スポーツ」と「ノーマル」の2種類から選べたが、特にどちらかが特別にスポーティーだったり快適だったりしたわけではないので、僕なら多分付けない。
より快適で安全に
新型MINIのインテリア。デザインのテイストはエクステリア同様、先代を踏襲している。随所に円形のデザインを取り入れ、センターパネル中央に巨大な円形のディスプレイを置く。従来はここに速度を表示していたが、新型では速度計はステアリングコラム上に置かれ、他の多くのクルマ同様、ステアリングホイール越しに視認するタイプとなった。
そのセンターディスプレイには各種インフォメーションが表示されるが、新型では、ようやくここにカーナビがビルトインされた(クーパーではオプション)。リアビューカメラの映像も表示される。手元にMINIコントローラー、BMWでいうところのiDriveが備わるようになり、たいていの操作がダイヤルでできるようになった。
エクステリア同様、インテリアにもさまざまなコスメティック系オプションが用意されており、着せ替えパターンは何通りにもなるはずだ。フロントシートはスポーツタイプも用意されるが、ノーマルでもスポーツ走行に特段支障はなかった。リアシートの掛け心地は特に印象に残るものではなかったが、先代よりも広さを感じることはできる。
そのほか、近頃大はやりの「アダプティブ・クルーズ・コントロール」や衝突被害軽減ブレーキ、パーキングアシストなどもオプション設定されるようになり、最近出たライバルにようやく肩を並べた。
新型はパッと見こそ先代と大して変わらぬように見え、その実、快適装備や安全装備などの充実が進むなど、大幅アップデートが施された。ちょっと速くなり、かなり効率が上がって、各種最新デバイスも備わった新型。その進化ぶりは2代目のオーナーが真剣に検討するに値する。価格はクーパーのATで280万円。カーナビつけて297万8000円といいところをついてくる。ただし、MINIのオプションリストは豊富だから、あれもこれもと調子に乗っていたら100万円+なんてあっという間なので要注意だ。
(文=塩見 智/写真=小河原 認)
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
テスト車のデータ
MINIクーパー
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=3835×1725×1415mm
ホイールベース:2495mm
車重:1200kg
駆動方式:FF
エンジン:1.5リッター直3 DOHC 12バルブ ターボ
トランスミッション:6段AT
最高出力:136ps(100kW)/4400rpm
最大トルク:22.4kgm(220Nm)/1250-4300rpm ※オーバーブースト時:23.5kgm(230Nm)/1250-4300rpm
タイヤ:(前)205/45R17 88W/(後)205/45R17 88W(ピレリ・チントゥラートP7 ランフラット)
燃費:17.9km/リッター(JC08モード)
価格:280万円/テスト車=396万4000円
オプション装備:ダイナミック・ダンパー・コントロール(7万7000円)/マルチファンクション・ステアリング(4万5000円)/ランフラット・タイヤ(3万円)/アロイ・ホイール コスモス・スポーク<7J×17ホイール、205/45R17タイヤ>(20万2000円)/MINIエキサイトメント・パッケージ(2万3000円)/コンフォート・アクセス(4万5000円)/ホワイト・ボンネット・ストライプ(1万7000円)/リアビュー・カメラ(3万9000円)/ETC車載器システム内蔵自動防眩ルーム・ミラー+自動防眩ルーム・エクステリア・ミラー(8万3000円)/シート・ヒーター(4万5000円)/インテリア・サーフェス<ファイヤーワーク>(2万7000円)/MINIドライビング・モード(2万9000円)/ドライビング・アシスト(11万4000円)/パーキング・アシスト・パッケージ(12万3000円)/ヘッド・アップ・ディスプレイ(5万8000円)/ナビゲーション・パッケージ(17万8000円)/メタリック・ペイント<ブレイジング・レッド>(2万9000円)
テスト車の年式:2014年型
テスト車の走行距離:2638km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(0)/高速道路(0)/山岳路(10)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター

塩見 智
-
BSAゴールドスター650(5MT)【レビュー】 2026.6.2 かつて一世を風靡(ふうび)した英国の名門、BSAが復活! 新生第1号モデルである「ゴールドスター650」は、クラシックで優雅なお散歩バイク……と思いきや、ツインカムの大排気量シングルで、ライディングも前のめりに楽しめるマシンに仕上がっていた。
-
ホンダCR-V e:HEV RSブラックエディション(4WD)【試乗記】 2026.6.1 「ホンダCR-V」がフルモデルチェンジ。新型は適切なボディーサイズと高品質な内外装を持ち、乗れば最新のホンダ車らしい気持ちよさが味わえる。ただし、その月販目標は400台。ちょっと弱気ではあるものの、周辺事情にも考えを巡らせると極めて妥当な数字にも思えてくる。
-
トヨタRAV4 GRスポーツ(4WD/CVT)【試乗記】 2026.5.30 新型「トヨタRAV4」のプラグインハイブリッド車ではEV走行換算距離が約150kmにまで到達。もちろん電池容量の拡大によるところも大きいが、何よりも最新のハイブリッドシステムによる効率向上が効いている。「GRスポーツ」をドライブした印象をリポートする。
-
キャデラック・リリックV(4WD)【試乗記】 2026.5.29 キャデラック初の電気自動車(BEV)「リリック」に、最高出力646PSのハイパフォーマンスモデル「リリックV」が登場。“ブランド史上最速”をうたう豪速SUVだが、実際に乗ってみると、高い動力性能がもたらすゆとりや心地よさにも魅力を感じる一台となっていた。
-
DS N°8エトワールAWD(4WD)【試乗記】 2026.5.28 前衛を身上とするフランスのラグジュアリーブランド、DSオートモビルから、新たなハイエンドモデル「DS N°8(ナンバーエイト)」が登場。当代屈指の性能を誇る電気自動車であり、かの地では大統領専用車にも選ばれる一台の、独創の魅力に触れた。
-
NEW
レクサスES350h(FF/CVT)/ES350e(FWD)/ES500e(4WD)【海外試乗記】
2026.6.3試乗記「レクサスES」がフルモデルチェンジ。シャシーがFFベースというのは歴代モデルと同じだが、新型ではボディーサイズがググッと拡大。「LS」の6輪ミニバンコンセプトが登場したこともあり、今後のレクサスセダンの総代を担うことになる。北米で乗った印象をリポートする。 -
NEW
ミドシップ化で運動性能はどう変わる? 「GRヤリスMコンセプト」の現時点での完成度を体感
2026.6.3デイリーコラム「GRヤリス」をベースとしたミドシップ4WDとして市販化を目指す「GRヤリスMコンセプト」。現在もスーパー耐久に投入されるなどして鍛えられているが、その開発車両をドライブできた。普通のGRヤリスとの運動性能の違いや、新開発エンジンの印象などをリポートする。 -
NEW
第115回:メイク・アメリカ・グレート・アゲイン!(後編) ―デザインもサイズも規格外! 魅惑のアメリカ車はなぜ“主役”になれないのか?―
2026.6.3カーデザイン曼荼羅トヨタ&ホンダが発表した、米国生産車の日本導入計画。しかしアメリカには、規格外に面白いクルマがまだたくさんあるのだ! カーデザインの識者とともに魅惑の日本“未”導入車を探すとともに、魅力的なアメリカ車が、それでも主役になれない理由を考えた。 -
どうしてピアノブラックの内装材は多用されるのか?
2026.6.2あの多田哲哉のクルマQ&Aよく目にするピアノブラックの内装材は、「キズや脂汚れが目立つ」などネガティブな評価もしばしば。それでも多用されているのはなぜか? 車両開発者の多田哲哉さんに聞いてみた。 -
BSAゴールドスター650(5MT)【レビュー】
2026.6.2試乗記かつて一世を風靡(ふうび)した英国の名門、BSAが復活! 新生第1号モデルである「ゴールドスター650」は、クラシックで優雅なお散歩バイク……と思いきや、ツインカムの大排気量シングルで、ライディングも前のめりに楽しめるマシンに仕上がっていた。 -
レストモッドがイメージ 特別なオニツカタイガーの魅力に迫る
2026.6.1オニツカタイガーの新作ドライビングシューズを知る<AD>オニツカタイガーが、“レストモッド”と呼ばれるクルマのレストア&カスタム手法に着想を得たドライビングシューズを発表。4タイプ製作された、「MEXICO 66 DRIVING」のスペシャルバージョンの魅力に迫る。




































