ボルボV40 T5 R-DESIGN(FF/8AT)
ホメずにはいられない 2014.12.16 試乗記 パワートレインが一新された「ボルボV40」のスポーティーモデル「T5 R-DESIGN」。新世代2リッター直4直噴ターボエンジンを搭載する新型の走りを確かめた。ピリ辛ハッチバック
いわゆるCセグメントのコンパクトカー市場には初めての本格参入だったにも関わらず、「ボルボV40」は瞬く間にこの激戦区で、確固たる地位を築いてみせた。
デビュー時から、衝突回避・被害軽減ブレーキシステムの「シティ・セーフティ」を全車標準装備するなどブランドの安全イメージを加速させる装備の充実ぶりや、見栄えのするスタイリング、スポーティーな走りっぷりなど好調の理由はいろいろと挙げられるが、「クロスカントリー」や「R-DESIGN」など次々とバリエーションを拡大し、話題が常に絶えないこと。これも小さくない要因ではないかと思う。
今回登場したのは、V40のスポーティーなキャラクターをさらに強化したR-DESIGNの2015年モデルなのだが、実はコレ、単なる年次改良レベルではない大幅な変更を行っている。そして結論から言えば、爽快感たっぷりの走りを実現した、実に小気味よいピリ辛ハッチバックに仕上がっているのだ。
リニアリティーの高さが光る
2015年モデルの一番の変更点はズバリ、パワートレインである。従来の直列5気筒2リッターターボエンジン+6段ATに置き換わるのは、直列4気筒2リッター直噴ターボエンジン+8段AT。すでに「S60/V60」などでおなじみの新世代ユニットは、最高出力245ps、最大トルク35.7kgmと、従来より32ps、5.1kgmの出力アップを実現した。それでいてJC08モード燃費は、従来の13.2km/リッターから15.1km/リッターへと約14%も改善させている。
その走りっぷりは、まずは何より圧倒的なリニアリティーの高さが光る。1.6リッターターボの「T4」では発進時などにアクセル操作に対して一瞬間が開き、そのあとトルクが急激に立ち上がる傾向があるが、こちらはアクセルペダルを踏み込んだ瞬間からまさに欲しい分だけのトルクがもたらされ、力強く、そして滑らかにクルマを前に進めてくれる。やはり排気量の余裕は大きいし、ターボのブースト圧のコントロールも上手なのだろう。8段ATの採用で1速のギア比をかなり低くできたこと、そしてDCTと違ってトルクコンバーターのトルク増幅効果を生かせるのも効いているに違いない。大げさに言えば、この発進の一瞬に、すべての美点が凝縮され、表現されているわけだ。
気持ち良く引っ張れるエンジン
その後の加速も、まさに意のまま。Dレンジで流している時には、それほど回転を上げずにどんどんシフトアップしていくのだが、走りには余裕すら漂う。また、全ギアで1000rpmという低回転からロックアップが働くことから、アクセル操作に対する反応もダイレクト感があっていい。ちなみに「ECO+」モードも用意されているが、こちらは反応が穏やか過ぎて、かえってアクセルを踏み込み過ぎることがあった。街乗り、あるいは巡航の時のためのスイッチと思っていた方がよさそうだ。
吹け上がりはトップエンドまでスムーズで、気持ち良く引っ張れる。それほどメリハリがある特性ではないが、逆に言えばどこからでも素直なレスポンスが得られるということ。新採用のステアリングシフトパドルは、その意味では主にエンジンブレーキを使いたい時のためのものといえる。
このパワートレインも気持ち良いが、実はそのフットワークの良さにも同じか、それ以上に感心、感動させられた。もともとV40はダイナミックと称されるスポーティーな、つまりは硬めのサスペンションを標準で採用しているのだが、R-DESIGNのそれはさらにハードな設定となる。具体的にはスプリングが前で10%、後ろで7%硬く、ダンパーはフロントが強化タイプ、リアがモノチューブ式に。バンプストップも強化され、リアスタビライザーもレートが高められている。タイヤは18インチのミシュラン・パイロットスポーツ3である。
あるいは走りだした時点では「結構、乗り心地が厳しいのでは?」と感じるかもしれない。しかし実際には、ダンパーの減衰力設定が巧みでガツンと突き上げることはないし、それでいてしっかりコシのある、絶妙の乗り味を実現できている。
ハンドリングは痛快そのもの
フットワークも文句なし。操舵(そうだ)に対する応答性はこちらもリニアで、グイッと鼻先だけ切り込むのではなく、ごくわずかなロールを伴いながらスーッときれいに曲がっていく。エンジン変更で車重が40kg軽減されたのも奏功しているのだろう。S字の切り返しなどでのシャープな反応は、痛快そのものだ。
思い出したのは、限定車の「S60/V60ポールスター」。そこまで締め上げられてはいないが、あの絶品の足まわりと、味付けの方向性としてはよく似ている。これ、スポーティーモデルのシャシーとしては最上級のホメ言葉のつもりである。
R-DESIGNといえば、もちろんこうした走りだけでなく、まさにデザインで選ぶ人も少なくないだろう。その精悍(せいかん)な意匠にほとんど変更はないが、細かな部分ではLEDドライビングライトがヘッドランプ連動で点灯するようになった。またインテリアにおいては、センタースタックのデザインが変わり、ナビシステムも最新型へとアップデートされている。もちろん「INTELLISAFE 10」の名で呼ばれるようになったボルボ自慢の先進安全装備は標準だ。
おそらく、そんな見た目や装備で買ったとしても、この走りには大いに納得させられるはず。いつもの道でも思わずペースが上がってしまうかもしれない。ましてや、この走りが目当てでR-DESIGNを選んだならば、それはもう大満足に違いない。「フォルクスワーゲン・ゴルフGTI」や、「メルセデス・ベンツA250シュポルト4MATIC」などライバルも多いセグメントだが、結論を出すのは少なくともコイツを確かめてからでも遅くはない、と言っておこう。
(文=島下泰久/写真=峰 昌宏)
テスト車のデータ
ボルボV40 T5 R-DESIGN
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4370×1800×1440mm
ホイールベース:2645mm
車重:1520kg
駆動方式:FF
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:245ps(180kW)/5500rpm
最大トルク:35.7kgm(350Nm)/1500-4800rpm
タイヤ:(前)225/40ZR18 92W/(後)225/40ZR18 92W(ミシュラン・パイロットスポーツ3)
燃費:15.1km/リッター(JC08モード)
価格:436万円/テスト車=466万4000円
オプション装備:パノラマ・ガラスルーフ(19万円)/歩行者エアバッグ(6万2000円)/パーク・アシスト・パイロット+パーク・アシスト・フロント(5万2000円)
テスト車の年式:2014年型
テスト開始時の走行距離:536km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター

島下 泰久
モータージャーナリスト。乗って、書いて、最近ではしゃべる機会も激増中。『間違いだらけのクルマ選び』(草思社)、『クルマの未来で日本はどう戦うのか?』(星海社)など著書多数。YouTubeチャンネル『RIDE NOW』主宰。所有(する不動)車は「ホンダ・ビート」「スバル・サンバー」など。
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