第95回:ジーナ・カラーノ見参! 強い女が愛する夫を救う
『ブライド・ウエポン』
2015.03.27
読んでますカー、観てますカー
本物の女性格闘家がヒロイン
美女とイケメンが飛行艇でカリブ海のリゾートに新婚旅行。夫の家は裕福で、海辺に別荘を持っているのだ。ラブラブな新婚さんはビーチでいちゃついたりバギーで森の中を走り回ったり。別荘に帰れば、ベッドルームで甘いひとときを過ごす。ラブロマンス映画のようだが、それにしてはお嫁さんがやたらにいい身体をしている。セクシーボディーというより、ガタイがよくて強そうだ。
それも当然で、ヒロインのエバを演じているのは本物の格闘家ジーナ・カラーノなのだ。大学在学中にダイエット目的でムエタイを始めると、素質が開花して14戦12勝1敗1分という成績をあげる。総合格闘技に転向しても7連勝し、ミドル級王座まであと一歩に迫った。彼女の強さにほれ込んだのが、スティーブン・ソダーバーグ監督だ。2011年にカラーノを主役に抜てきして『エージェント・マロリー』を撮っている。
カラーノは『ワイルド・スピード EURO MISSION』にも出演していて、主演はこの映画が2作目となる。ラブロマンス映画ではなく、アクション全開の作品だ。「セガールより強引で、ステイサムよりセクシー!!」というキャッチコピーが踊る。「ヒロイン版『96時間』」とも書かれていて、彼女は失踪した夫を救出するために闇の組織と戦うのだ。冷静に状況を分析するリーアム・ニーソンとは違い、彼女はもっぱら肉体の強さを武器に敵を追い詰めていく。
救急車で運ばれた夫が失踪
エバとデレク(カム・ジガンディ)は、ドミニカ共和国でハネムーンを楽しんでいた。地元の青年に誘われてクラブに踊りに行くと、エバがチンピラに絡まれて騒動になる。普通なら夫のデレクが助けに入るところだが、彼女は自らパンチとキックを振るって悪党をぶちのめす。腕ひしぎ逆十字でヒジを折ってしまうところは、さすが総合格闘技で鍛えただけのことはある。
エバは幼い頃から父親に護身術を教えられ、自分の身は自分で守るように徹底的に鍛えられていたのだ。『キック・アス』のヒット・ガールのような境遇である。エバの父の教えは、とにかく先制攻撃せよというもの。守っていてはダメで、やられる前にやれというのが教義の中心となっている。まったく容赦しないから何人もが半殺し状態になり、街の顔役であるビッグ・ビズに恨みを買ってしまう。
翌日は健康的なレジャーを楽しむということで山に向かった。ワイヤーロープを滑車で滑り降りるジップラインを楽しむためである。フィールドアスレチックのような生半可なものではなく、山頂と山頂をつなぐワイルドな施設だ。数十メートルの高さを渡るのだから、高所恐怖症の人にはオススメできない。デレクがチャレンジしていた時に、事故が起きる。ストラップが切れて、転落してしまったのだ。エバが救出に向かうが、足を骨折して意識不明の重症だ。
すぐに救急車を呼ぶが、なぜかエバが同乗するのを拒む。バイクで追いかけたものの、途中で見失った。入院したはずの病院に行くと、デレクは来ていないという。万策尽きて警察に行くが、対応する警官は誠実な捜査をしているようには見えない。デレクは突然消えてしまったのだ。
超アナログな人力カーナビで逃走
エバとデレクの夫婦を除くと、出演者の顔が異常に濃い。エバを鍛える父親はスティーヴン・ラングで、実戦さながらの厳しさで教える時の迫力は恐ろしいほどだ。『アバター』で傭兵(ようへい)を率いていた顔の怖い人である。怪しげな警官ラモンを演じるのは、ルイス・ガスマン。シュワちゃんの『ラストスタンド』では正義感のある副保安官だったけど、犯罪者役も多くこなしている。顔役のビッグ・ビズは、ダニー・トレホだ。岩石顔では右に出るものがいない無敵の男である。私生活でも何度となく刑務所に入っている本物だから、リアリティーありすぎだ。
エバはデレクの居場所を必死で探るが、誰もが口を閉ざしている。コワモテの男たち相手では、非常手段を使わざるを得ない。かなり乱暴な方法で真相を聞き出そうとするのだ。おなかに針を突き刺して、内臓をひとつひとつ傷つけていくというサディスティックな拷問も披露する。抵抗する者には無慈悲な死が与えられる。ジーナ・カラーノは「世界でもっとも美しい顔100人」で48位に入ったことのある美女なのだが、映画では結構簡単に人を殺す。
撮影はプエルトリコで行われていて、街にはアメリカ車以上に日本車が多く走っていた。「ホンダ・アコード」や「日産セントラ」はもちろんのこと、「ランサー」「ミラージュ」「ギャラン」と三菱車が多い。「ホンダ・オデッセイ」もいたけれど、おそらく中古車が流通しているのだろう。
エバは敵の「フォード・エクスペディション」を奪って逃走を試みる。しかし、彼女には土地カンがない。道を熟知している地元のギャングにかなうはずがないのだ。カーナビなどついていないから、目的地への経路がわからない。それを解決したのが人力カーナビである。携帯電話のSMSを利用して、超アナログな道案内が行われる。
強い女性が主人公の作品は多いが、この映画は本職がやっているだけに格闘シーンにすごみがあった。日本でも、女性格闘家を使って本格的なアクション映画が作れるはずだ。赤井沙希や安川惡斗(やすかわ あくと)が活躍するすごい映画を誰か作ってくれないものか。
(文=鈴木真人)

鈴木 真人
名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。
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