ジャガーXE 2.0プレステージ(FR/8AT)/XE 2.5ポートフォリオ(FR/8AT)
悩ましい選択 2015.09.18 試乗記 200ps仕様か、それとも240ps仕様か? 「ジャガーXE」に関心を持つ人にとって悩ましいのは、2リッター直4ターボエンジンのどちらの仕様がよりジャガーらしいのか、ということではないだろうか。200psの「2.0プレステージ」と、240psの「2.5ポートフォリオ」に比較試乗した。たかがされどの40ps
ジャガーXEの4気筒シリーズには「20t」と「25t」がある。どちらも排気量は2リッターでありながら、ターボ過給圧の違いで20tが200ps、25tが240psとチューンに差がつけられている。また20tには「ピュア」(477万円)と「プレステージ」(515万円)、25tには「ポートフォリオ」(642万円)という仕様があり、単純にエンジン違いだけの価格差とは言えないけれども、ざっと130万円の違いがある。4気筒のXEを買うならどちらがいいだろう? というよりも安い方はどうなの? と20tに興味をもつ人は多いようだ。
200psもあるんだから20tで十分、と結論づけてしまうのは簡単ながら、もう少し詳細に違いをみていこう。少し前までなら40psも差があれば、それはたいがい排気量の違いによって生じた差であったから、税金が違うとか、トルクが大きい方が走りやすいだろうとか、実際に試してみなくとも、ある程度は想像で判断できた。もっとも、排気量ではなく過給圧の違いであっても、一方の最大トルクが32.6kgm(320Nm)で他方が34.7kgm(340Nm)であると知れば、その違いぐらいは予想できるだろう。
もうひとつの判断材料は重量だ。エンジン排気量が大きくなると、当然重量も重くなる。しかし、今回はその辺の判断が難しい。プレステージとポートフォリオの重量は1620kgと1660kg(ともに車検証記載値)。前軸の重量は両車とも840kgで、ポートフォリオの方が後輪が40kg重い820kgとなる。これならハンドル操作で感じる頭の重さみたいな感覚はほとんどないはずだ。加えて8段ATのギア比は同じで、ファイナルレシオだけ3.42と3.23の違いとなる。タイヤサイズはプレステージが前後とも225/45R18で、ポートフォリオが前が225/40R19、後ろが255/35R19(いずれもオプションタイヤを装着)と異なる。走りだす前は、この2台は「そんなに違わないだろう」と予想していた。
回さず流すか、回して駆けるか
予想が外れたのはエンジン音である。25tの方が音量が大きい。排気音ではなく過給気系ノイズがややざわついている。しかしトルクが大きいので発進は容易で、高回転まで回さずとも2000rpm以下でほとんどの速度帯を賄える。よって静かな走行が可能だ。エンジン回転を上下させずほぼ一定に保ち、あとは8段ある変速機に仕事をさせればいい。
先に燃費について触れると、都内から伊豆までの往復で、20tが10.1km/リッターだったのに対して、25tは10.3km/リッター(ともにドライブコンピューターによる計測値)と少し良かった。ほとんどの区間を2台で前後して走ったので、この差は発進や加速時のトルク差によるものだと思われる。両車の差を象徴的に表すならば、このように僅差でしかない。だからエンジンを回さないでそーっと走りたいタイプの運転を好む人には25tをお薦めする。
20tはエンジン回転計を見て、変速パドルをシャカシャカ操作して、より積極的に運転したい人に向く。エンジンは気持ち良く回って快音を発する。回して使っても燃費はあまり変わらない。また、エンジンブレーキに関しては、どちらも80km/hから2速に落とせて安心感がある。
筆者としてはやはり価格に見合うかどうかという対価性能を考えてしまうし、全体の印象からも20tをお薦めする。20tで不満な点はなしと書いてしまおう。
伝統を受け継ぐ乗り心地
XEはドライバーズカーだ。ある意味ジャガーは全車、後席に乗せられるよりも自分で運転を楽しみたい人のクルマだ。XEはそれがより顕著で、サイズ的にも取りまわしや軽快な旋回性などに優れている。後席はなだらかな曲線を描くルーフラインなどの外観からもわかるように、身の回りの空間にさほど余裕はない。しかし、タイトゆえにしっかりホールドされる落ち着きが確保される。
XEはジャガーとしては小さめの外寸ながら、乗り心地の面では大きなジャガーと変わらぬ、ゆったりとした身のこなしが受け継がれ、ボディーは終始フラットな姿勢を保つ。最近の傾向に従い、太く大径なタイヤ/ホイールを履く車にしては、バネ下の重さによるドタバタした不要な動きは少なく、一体感に優れる。
サスペンション取り付け部のゴムブッシュなどの変形特性を調整して、いわゆるコンプライアンスで逃げるチューンもある。しかし、XEの場合にはそうして前後方向にはあまり逃がさず、正当な方向である上下にストロークさせてショックを吸収し、しかる後にしっかりダンパーで動きを押さえ込むという、ジャガー伝統の手法でチューンされている。
性能の絶対値なら「25t」だが……
XEはアルミ材を多用したボディー構成ながら、他社のようにガチガチに溶接で固められた剛性感ではなく、「XJ」のようにアルミ板をリベットと接着剤でとめたような、柔軟性によるシナリも備えた感覚の強度と剛性を兼備しており、動きに余計なイナーシャを感じずにスッと動いてスッと収める「軽さ」のある挙動が特徴。だから乗り心地だけでなく操縦安定性の面でも、立ち居振る舞いの動きがスッキリしていて気持ちがいい。
この分野で両車の差を見つけるならば、僅差で25tの方が微舵(びだ)応答はいい。前述したとおり前輪荷重は同じだが、タイヤの差はそれなりにある。
興味深いのは後輪荷重40kgの違いだ。外から見たところ、2本出しのマフラーカッター形状が異なるが、排気系パイプなどや消音器本体は同じようにできており、またどちらも同じく2本出ていて、違いは先端処理だけのように見える。タイヤ/ホイールによって重量に差が生じているのなら、前後共に違うはずだ。
ジャガー・ランドローバー・ジャパンの広報部に問い合わせたところ、皮革製のシート材質が少し違うという。両車の違いはその程度で、はっきりしたことは資料からはわからないらしい。車検証重量は実測値だから正確だとすると、デフにLSDでも組み込まれていたのだろうか? あるいは本来パンク修理材だけのところに、スペアタイヤが乗せられていたのだろうか。はたまた燃料タンク内の残量管理がうまく行われなかったのだろうか。いずれにせよ2人乗車と3人乗車程度の差であり、旋回性能などに影響を及ぼすほどの違いではなさそう。パワー差やタイヤの差による違いの方が要素としては大きい。
これらの差と130万円の価格差を考えると、お買い得感があるのはやはり20tの方である。性能の絶対値をとるならば25tであるが、この上にはV6の3リッター仕様も存在するので、選択肢はさらにひろがる。スポーツサルーンとしてのジャガーを求めるならば、まずオーナー自身の使いみちと使い方が第一の要素であり、装備品などは幅もあるから投資した金額に見合った好みの選択が可能だ。
(文=笹目二朗/写真=小河原認)
テスト車のデータ
ジャガーXE 2.0プレステージ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4680×1850×1415mm
ホイールベース:2835mm
車重:1620kg
駆動方式:FR
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
最高出力:200ps(147kW)/5500rpm
最大トルク:32.6kgm(320Nm)/1750-4000rpm
タイヤ:(前)225/45R18 95Y(後)225/45R18 95Y(ダンロップ SPORT MAXX RT)
燃費:11.8km/リッター(JC08モード)
価格:515万円/テスト車=600万2000円
オプション装備:メタリックペイント(8万2000円)/パノラミックグラスサンルーフ(20万6000円)/電動トランクリッド(11万5000円)/ブラインドスポット・モニター(クロージングビークルモニター、リバーストラフィックディテクション付き)(9万3000円)/ADVANCED PARK ASSIST PACK+PROXIMITY CAMERA(27万4000円)/18インチ Matrixアロイホイール(8万2000円)
テスト車の年式:2015年型
テスト開始時の走行距離:3487km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(6)/山岳路(2)
テスト距離:258.7km
使用燃料:28.0リッター
参考燃費:9.2km/リッター(満タン法)/10.1km/リッター(車載燃費計計測値)
ジャガーXE 2.5ポートフォリオ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4680×1850×1415mm
ホイールベース:2835mm
車重:1660kg
駆動方式:FR
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
最高出力:240ps(177kW)/5500rpm
最大トルク:34.7kgm(340Nm)/1750rpm
タイヤ:(前)225/40R19 93Y(後)255/35R19 96Y(ダンロップ SPORT MAXX RT)
燃費:12.5km/リッター(JC08モード)
価格:642万円/テスト車=791万8000円
オプション装備:メタリックペイント(8万2000円)/パノラミックグラスサンルーフ(20万6000円)/プライバシーグラス(6万2000円)/電動トランクリッド(11万5000円)/ステアリングホイールヒーター(3万6000円)/電動リアサンブラインド(5万7000円)/カスタマイズ可能なインテリア・ムードランプ(5万2000円)/イルミネーテッド・シルプレート(7万5000円)/Meridianプレミアムサラウンドサウンドシステム(36万4000円)/ブラインドスポット・モニター(クロージングビークルモニター、リバーストラフィックディテクション付き)(9万3000円)/ADVANCED PARK ASSIST PACK+PROXIMITY CAMERA(27万4000円)/19インチ Radianceアロイホイール(8万2000円)
テスト車の年式:2015年型
テスト開始時の走行距離:4350km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(6)/山岳路(2)
テスト距離:279.0km
使用燃料:30.6リッター
参考燃費:9.1km/リッター(満タン法)/10.3km/リッター(車載燃費計計測値)

笹目 二朗
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