第315回:未来のモビリティーを先取り体験! 「トヨタi-ROAD」試乗リポート
2015.10.07 エディターから一言 拡大 |
トヨタが、超小型モビリティー「i-ROAD」の実証実験にのりだした。既存のクルマよりはるかに小さい、パーソナルな電気自動車(EV)のある暮らしとは、どのようなものなのか? およそ1カ月にわたる体験試乗を終えた、モータージャーナリストの森口将之氏が、その感想を報告する。
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一般道で100人がテスト
一生忘れられない思い出になるだろう。2013年のジュネーブモーターショーでデビューした革新的な超小型モビリティー、トヨタi-ROADに1カ月間乗ることができたのだ。
トヨタは今年になってから、i-ROADがらみのプロジェクトを東京都内で次々に実施している。4月には国内最大規模のカーシェアリング「タイムズカープラス」を展開するパーク24と共同で、i-ROADを使ったカーシェアリングを開始。続いて7月には同じ都内で「OPEN ROAD PROJECT」を始めた。
OPEN ROAD PROJECTは、「都市に住むユーザーに自由な移動を提供するために、プロダクトの開発のみならず、サービスまで含めた新しい移動体験の開発に取り組むプロジェクト」で、企画や開発をトヨタ社内で完結させるのではなく、トヨタと同じビジョンを持つほかの企業や、一般ユーザーとの交流を通して進めることが計画されている。
僕はこの、OPEN ROAD PROJECTの試乗パイロットに選ばれた。発表直後からi-ROADに注目していて、日々の生活で使いこなしてみたいと思っていたので応募したところ、1年間で総計100人がi-ROADをテストするこのプロジェクトの第2期パイロットに採用されたのだ。
トヨタは今年3月、国際オリンピック委員会(IOC)との間で、10年間のTOP(ジ・オリンピック・パートナー)、つまり最高レベルのグローバルスポンサーシッププログラム契約を結んだ。もちろん2020年の東京大会も含まれる。
そのときの発表資料には、「契約対象は車両(乗用車、小型モビリティー、商用車等)およびインフラ(ITS、テレマティクスサービス等)」とあり、小型モビリティーが乗用車とは別のものとして記されていた。今年の東京でのプロジェクトは、このオリンピックに向けての実証実験でもあるのだろう。となると、なおさら乗る気になった。
筆者の試乗期間は2015年の8月29日から9月26日まで。まずはその前の8月15日に、事前講習会が行われた。i-ROADが“前代未聞の動き”をするからだ。
普通のクルマとまったく違う
前2輪/後ろ1輪の三輪車は、前輪で操舵(そうだ)、後輪で駆動を行うのが一般的だ。しかしi-ROADは逆で、前輪にインホイールモーターを内蔵し、後輪が左右に首を振る。しかも中高速コーナーでは、モーターサイクルのようにボディーをリーン(傾斜)させつつ、フロントの左右輪も接地させたままボディーと平行に傾けながら曲がっていく。
僕はモーターサイクルにも乗っているのでリーンには慣れているけれど、後輪操舵は初体験。フツーのクルマのように路肩に寄せて止め、そのままステアリングを右に切ってスタートするとリアが左側に振られるため、車体後部を縁石にぶつけてしまうおそれがある。講習会では、発進する際はまずバックで路肩から離れるようにし、駐車枠に入る際は前から進入するのが望ましいと教えられた。
講習会では、パイロットに支給されるスマートフォンの中に、専用アプリが入っていることも明かされた。ひとつは駐車場検索用だ。今回選ばれたパイロットの居住地あるいは勤務地となる東京都港区と渋谷区には、約200カ所の駐車場が用意されていて、一部では充電も可能。これらを検索するだけでなく駐車予約もできる。もうひとつは充電モニターで、食事や買い物をしながら充電状況の確認が可能になるというものだった。
i-ROADのような超小型モビリティーは、車両だけでなくインフラも込みで開発しないと意味がないと思っていた。このアプリを含めて、トヨタがサービスを含めた研究開発に取り組んでいることが理解できて、とても感心した。
だから8月29日に納車されてからは、海外出張時を除いて、結果的には2日に1回の割合で乗った。日本仕様は1人乗りで、最高速度は60km/h。満充電で50kmしか走れず、充電には200Vで3時間かかる。でも、例えば近場の買い物など、i-ROADが使える範囲で乗るのなら問題はない。21世紀のモビリティーシーンは使い分けの精神が大事になることを教えられた。
とにかく乗っておもしろい
航続距離に関しては、初日は20kmも走るとバッテリー残量がギリギリになってしまったが、他の国産EVより明確に利く回生ブレーキをうまく使うと、バッテリーを半分も使わずに同じ20kmを走行することができた。これなら都内での移動は大丈夫だと確信し、埼玉県まで足を伸ばしたこともあった。
トヨタが用意した200カ所の駐車場のうち、虎ノ門ヒルズやco-lab代官山などには専用の小さな区画が用意され、充電も可能だったが、多くはタイムズ駐車場であり、四輪車用の大きな区画に小さなi-ROADを止めるのは効率上あまり適切ではないと思った。超小型モビリティーの統一規格を早急にまとめ、税金や保険、駐車面での優遇策を設定してほしい。
それでも僕が進んでi-ROADに乗ったのは、とにかく乗って面白かったからだ。運転姿勢はクルマそのものなのに、コーナーでリーンするところはモーターサイクル的。しかも後輪操舵はドリフトしているような錯覚を味わわせてくれる。こんな乗り物、ほかにない。唯一無二の体験を、1秒でも長く味わっていたかった。
もうひとつ、周囲の人々の期待に応えたかったこともある。i-ROADの注目度の高さに比べたら、フェラーリもポルシェも“並”でしかない。特に子供の人気が絶大だ。クルマ離れが話題になっているからこそ、未来のドライバーに乗り物への興味を持ってもらいたかったので、僕はできる限りi-ROADに乗った。
いろんな意味で、この乗り物には未来が詰まっている。その未来を少しだけ先取りできたことは、かけがえのない経験だった。
(文と写真=森口将之)

森口 将之
モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。ヒストリックカーから自動運転車まで、さらにはモーターサイクルに自転車、公共交通、そして道路と、モビリティーにまつわる全般を分け隔てなく取材し、さまざまなメディアを通して発信する。グッドデザイン賞の審査委員を長年務めている関係もあり、デザインへの造詣も深い。プライベートではフランスおよびフランス車をこよなく愛しており、現在の所有車はルノーの「アヴァンタイム」と「トゥインゴ」。
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