トヨタ・プリウスA“ツーリングセレクション”(FF/CVT)/プリウスAプレミアム(4WD/CVT)
気持ちよさが実感できる 2016.01.27 試乗記 個性的なデザインをまとって登場した、新型「トヨタ・プリウス」。では、実際に乗ってみたら? 新開発シャシーをベースに磨きぬいたという走りの質や、快適性について報告する。デザインの“基本”はこれまで通り
試乗会の会場で4代目となる新型トヨタ・プリウスを見た瞬間、頭に浮かんだ言葉は「アグリー」だった。お世辞にも、洗練されているとかスマートとは言えない。同時に、20年ほど前に安室奈美恵さんがデビューした時のことを思い出した。あのとき、細眉+茶髪+厚底ブーツの彼女のスタイルを、多くの人は「アグリー」だと感じたはずだ。
けれどもその後、安室さんが時代のアイコンになったのはご存じの通り。世間をひっくり返すくらいパワーのあるものは、最初は人をギョッとさせるのかもしれない。初対面では「ゲゲッ」と思った新型プリウスであるけれど、新しいトレンドを築くデザインなのかもしれない。
それにしても、無難なデザインで手堅くセンター前ヒットを狙ってもよかったのに、あえて豪快にフルスイングしてきたことがおもしろい。
ただし、デビルマンのような眼光鋭い目付きと宇宙船のようなリアビューに目を奪われて、「デザイン全然変わっちゃった!」と勘違いしがちではあるけれど、4代目プリウスの基本的なプロポーションはこれまでのモデルを踏襲している。
それは、真横から眺めるとよくわかる。空力性能と居住空間の確保を両立するために、ルーフの頂点から車体後部にかけてなだらかにルーフラインが落ちるトライアングルシルエットを採用するという、基本的な考え方は変わっていないのだ。
エクステリアにはギョッとしたけれど、インテリアはすとんと腑(ふ)に落ちた。モダンで機能的なこれまでの路線が受け継がれ、樹脂の見栄えや手触りなどが着実に進歩しているからだ。
もはや計器類を始終チェックしながら走る時代ではないのだから、ドライバーの正面にあるのはメーターではなく前方の景色であるべきだ。プリウスのセンターメーターからは、こういった主張を読み取ることができる。
より静かに、快適に
駐車場を出て一般道で走りだして気付くのは、ボディー全体の一体感が増したことだ。従来型は、「一台のクルマとはいっても、屋根とタイヤは別々だよね?」といった感じで、ボディーにユルい雰囲気が漂っていた。それが新型では、「屋根もタイヤも同じチームです」と、ビシッと統一された。自動車専門誌的な表現を使えば、剛性感が高まった。
クルマに統一感が生まれた結果、乗り心地が快適に感じられるようになった。路面の凸凹を乗り越えた時に感じるショックが小さくなり、乗り越えた後の車体の揺れもすぐにおさまる。
「おっ」と思い編集部のスタッフに運転を代わってもらい、後席に座ってみる。従来型プリウスの大きな欠点のひとつが、後席の乗り心地が悪いことだった。
真夏の炎天下でタクシーを待っていても、通りがかったのがプリウスのタクシーだと挙げた手を下ろしたくなるぐらいだった。ソールの薄い安スニーカーで走った時のような「カツン、カツン」という衝撃は、ツラかった。
しかし、新型プリウスは後席の乗り心地が大きく改善されていた。後席の居住空間はわずかに拡大された程度であるけれど、これならプリウスのタクシーが来てもちゅうちょしない。
もうひとつ、車内が圧倒的に静かになったことにも気付く。もともと、従来型プリウスも決してうるさいクルマではなかった。それでも、タイヤが発するノイズやボディーが風を切る音など、世の中のザワザワが車内に侵入していた。
それが新型では、そうしたノイズが大幅に改善された。ノイズが小さくなったというより、ノイズとの距離が遠くなったように感じると書く方が正確だ。
印象に残る加速フィール
ハイブリッドシステムの基本的な仕組みは、従来型から変わっていない。モーターとエンジンが、巧みに連携して走らせるのだ。モーターだけでEV走行をしていたかと思うと、さらにアクセルを踏み込むといつの間にかエンジンが始動して力を合わせてパワフルな加速を実現している。
エンジンとモーターの見事なコンビネーションは、ゆずのふたりを思わせる。北川さんが歌っていたかと思うと、次のパートは岩沢さんがソロをとり、サビではふたりがハーモニーを奏でる。
エンジンとモーターの息が合った連携プレーはこれまで通りであるけれど、変わった点がある。それは、加速フィールが気持ち良くなったことだ。アクセルを踏んでから実際に加速するまでのタイムラグが少なくなり、期待したタイミングで、望むだけの加速が手に入る。
担当エンジニア氏に確認したところ、燃費や加速タイムといった数字も重要ではあるけれど、新型プリウスのパワートレイン開発にあたっては人間が心地よく感じる加速フィーリングの実現に苦心したという。
燃費よりも加速を楽しみたいというときには、「ノーマル」「パワー」「エコドライブ」の3つのモードから選べるドライブモードスイッチを操作して「パワー」モードを選ぶ。
「パワー」モードを選ぶとアクセル操作に対するレスポンスがよくなるのは明白で、クルマが軽くなったかのように感じる。また、「パワー」モードではGセンサー(加速度センサー)もファン・トゥ・ドライブに力を貸す。クルマが「おっ、スポーティーなドライビングをしているな」と判断すると、瞬時に加速できるように準備するというのだ。
トランスミッションに電気式無段変速機を採用する関係で、スパンとアクセルを踏んだらパンっとレスポンスするスポーツカー的な電光石火のレスポンスや切れ味は望めないものの、実用車としては十分に運転が楽しめるレベルに達している。
なお、短時間の試乗会であったので、グレードによっては40.8km/リッターを誇る燃費は計測できなかった。エンジンとハイブリッドシステムを一新することで大幅に向上したという燃費性能はあらためて確認したい。
ちなみにエンジンの熱効率は従来型の38.5%から40%へと向上、トランスアクスル、モーター、パワーコントロールユニット(PCU)もそれぞれ約20%も損失を減らしているという。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
クルマとの距離が縮まった
閑話休題。
試乗の合間に駐車スペースで「シンプルインテリジェントパーキングアシスト(自動駐車アシスト機能)」を試したら、これが思っていたより全然使えることに驚いた。
駐車スペースを認識すると、ステアリングホイールが自動で操作されるので、ドライバーはアクセルとブレーキに専念する。もっとのろのろ動くのかと思っていたら、ステアリングホイールは突き指をしそうな勢いで回転する。
最後に駐車位置を微調整して、駐車完了。お見それしました。
気持ち良くパワーと車速が伸びるパワートレインとともに大きく印象が変わったのが、高速道路での操縦性だ。これは「ボディー全体に一体感が感じられる」という乗り心地の話にもつながるけれど、車体のさまざまなパーツがひとつのカタマリとなってコーナーをクリアする。
何より好ましいと思ったのが、ステアリングホイールから伝わる情報がくっきりしていることだ。いま、左右の前輪がどの方向を向いているのか。路面はどのような状態にあるのか。もうちょっとアクセルを踏めるのか、それともこれ以上踏むと車体が外側にふくらむのか。
こうしたことがステアリングホイールを通じてはっきり伝わると、クルマとの距離が縮まった気がして、運転という行為が楽しめるようになる。
ここで知っておきたいのが、新型プリウスがTNGA(Toyota New Global Architecture)というトヨタの新しい開発コンセプトで作られた第1号車であることだ。例えば、新型プリウスは従来型より重心高が20mm低くなっている。ざっくり言えば、路面に吸い付くように、安定した姿勢で、ドライバーの意のままに走るようなクルマにしたいという意図がうかがえる。
新型プリウスは、世界の先頭を走るハイブリッド車として着実な進化をはたした。そしてその進化において、「心地よい加速感」や「うれしくなる乗り心地」、あるいは「楽しいハンドリング」といった、官能方面のベクトルに重きが置かれていることが興味深い。
燃費がいいのはあたりまえで、楽しいクルマにしたいという狙いがひしひしと伝わってくるのだ。
新型プリウスは、これからのトヨタの方向性を示すモデルでもある。プリウスに接すると、トヨタがハッとするデザインや感性に訴えるクルマを作りたいという意志を持っていることがわかる。これは、ちょっとおもしろいことになりそうだ。
(文=サトータケシ/写真=峰 昌宏)
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
テスト車のデータ
トヨタ・プリウスA“ツーリングセレクション”
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4540×1760×1470mm
ホイールベース:2700mm
車重:1380kg
駆動方式:FF
エンジン:1.8リッター直4 DOHC 16バルブ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:CVT
エンジン最高出力:98ps(72kW)/5200rpm
エンジン最大トルク:14.5kgm(142Nm)/3600rpm
モーター最高出力:72ps(53kW)
モーター最大トルク:16.6kgm(163Nm)
タイヤ:(前)215/45R17 87W/(後)215/45R17 87W(トーヨー・ナノエナジーR41)
燃費:37.2km/リッター(JC08モード)
価格:292万6800円/テスト車=334万2060円
オプション装備:ITS Connect(2万7000円)/アクセサリーコンセント<AC100V・1500W、コンセント2/非常時給電システム付き>(4万3200円)/ナビレディセット<バックカメラ+ステアリングスイッチ>(3万2400円)/おくだけ充電(1万2960円)/プリウス専用T-Connectナビ 9インチモデル DCMパッケージ(29万9700円)
テスト車の年式:2015年型
テスト開始時の走行距離:1023km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:--km/リッター
拡大 |
トヨタ・プリウスAプレミアム
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4540×1760×1475mm
ホイールベース:2700mm
車重:1450kg
駆動方式:4WD
エンジン:1.8リッター直4 DOHC 16バルブ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:CVT
エンジン最高出力:98ps(72kW)/5200rpm
エンジン最大トルク:14.5kgm(142Nm)/3600rpm
フロントモーター最高出力:72ps(53kW)
フロントモーター最大トルク:16.6kgm(163Nm)
リアモーター最高出力:7.2ps(5.3kW)
リアモーター最大トルク:5.6kgm(55Nm)
タイヤ:(前)195/65R15 91S/(後)195/65R15 91S(トーヨー・ナノエナジーR41)
燃費:34.0km/リッター(JC08モード)
価格:330万1855円/テスト車=366万955円
オプション装備:ITS Connect(2万7000円)/ナビレディセット<バックカメラ+ステアリングスイッチ>(3万2400円)/プリウス専用T-Connectナビ 9インチモデル DCMパッケージ(29万9700円)
テスト車の年式:2015年型
テスト開始時の走行距離:1032km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:--km/リッター
拡大 |
トヨタ・プリウスA“ツーリングセレクション”
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4540×1760×1470mm
ホイールベース:2700mm
車重:1380kg
駆動方式:FF
エンジン:1.8リッター直4 DOHC 16バルブ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:CVT
エンジン最高出力:98ps(72kW)/5200rpm
エンジン最大トルク:14.5kgm(142Nm)/3600rpm
モーター最高出力:72ps(53kW)
モーター最大トルク:16.6kgm(163Nm)
タイヤ:(前)215/45R17 87W/(後)215/45R17 87W(トーヨー・ナノエナジーR41)
燃費:37.2km/リッター(JC08モード)
価格:292万6800円/テスト車=338万3100円
オプション装備:ボディーカラー<エモーショナルレッド>(5万4000円)/ITS Connect(2万7000円)/アクセサリーコンセント<AC100V・1500W、コンセント2/非常時給電システム付き>(4万3200円)/ナビレディセット<バックカメラ+ステアリングスイッチ>(3万2400円)/プリウス専用T-Connectナビ 9インチモデル DCMパッケージ(29万9700円)
テスト車の年式:2015年型
テスト開始時の走行距離:1431km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:--km/リッター

サトータケシ
ライター/エディター。2022年12月時点での愛車は2010年型の「シトロエンC6」。最近、ちょいちょいお金がかかるようになったのが悩みのタネ。いまほしいクルマは「スズキ・ジムニー」と「ルノー・トゥインゴS」。でも2台持ちする甲斐性はなし。残念……。
-
ベントレー・コンチネンタルGTアズール(4WD/8AT)【試乗記】 2026.1.19 ベントレーのラグジュアリークーペ「コンチネンタルGT」のなかでも、ウェルビーイングにこだわったという「アズール」に試乗。控えめ(?)な680PSのハイブリッドがかなえる走りは、快適で満ち足りていて、ラグジュアリーカーの本分を感じさせるものだった。
-
BYDシールAWD(4WD)【試乗記】 2026.1.17 BYDのBEVサルーン「シール」の機能アップデートモデルが登場。強化のポイント自体はそれほど多くないが、4WDモデルの「シールAWD」は新たに電子制御式の可変ダンパーを装備したというから見逃せない。さまざまなシーンでの乗り心地をチェックした。
-
マツダCX-60 XDドライブエディション ナッパレザーパッケージ(4WD/8AT)【試乗記】 2026.1.14 「マツダCX-60」に新グレードの「XDドライブエディション ナッパレザーパッケージ」が登場。スポーティーさと力強さ、上質さを追求したというその中身を精査するとともに、国内デビューから3年を経た“ラージ商品群第1弾”の成熟度をチェックした。
-
カワサキKLX230シェルパS(6MT)【レビュー】 2026.1.13 その出来には“セロー乗り”も太鼓判!? カワサキのトレイルバイク「KLX230シェルパ」に、ローダウン仕様の「シェルパS」が登場。安心の足つき性で間口を広げた一台だが、実際に走らせてみると、ストリートでも楽しめるオールラウンダーに仕上がっていた。
-
メルセデス・ベンツC220dラグジュアリー(FR/9AT)【試乗記】 2026.1.12 輸入車における定番の人気モデル「メルセデス・ベンツCクラス」。モデルライフ中にも年次改良で進化し続けるこのクルマの、現在の実力はいかほどか? ディーゼルエンジンと充実装備が魅力のグレード「C220dラグジュアリー」で確かめた。
-
NEW
アウディA5 TDIクワトロ150kW(4WD/7AT)【試乗記】
2026.1.21試乗記「アウディA5」の2リッターディーゼルモデルが登場。ただでさえトルクフルなエンジンに高度な制御を自慢とするマイルドハイブリッドが組み合わされたリッチなパワートレインを搭載している。260km余りをドライブした印象をリポートする。 -
NEW
働くクルマは長生きだ! 50年以上続く車名がゴロゴロある商用車の世界
2026.1.21デイリーコラム乗用車ではトヨタの「クラウン」「カローラ」、日産の「スカイライン」などが長く続く車名として知られるが、実は商用車の世界にはこれらと同等のご長寿モデルが数多く存在している。生涯現役時代の今にふさわしい働くクルマの世界を見てみよう。 -
NEW
第99回:「トヨタGR GT」と「レクサスLFAコンセプト」(後編) ―対極的な2台の造形からスポーツカーの教義を考える―
2026.1.21カーデザイン曼荼羅コンポーネントを共用するのに、その形は全然違う! トヨタの次世代スーパースポーツ「トヨタGR GT」と「レクサスLFAコンセプト」のデザインを、有識者と比較検証。突き抜けて武骨なGR GTか、優雅で知的なLFAか、あなたならどちらを選ぶ? -
クルマの乗り味の“味”って何だ?
2026.1.20あの多田哲哉のクルマQ&A「乗り味」という言葉があるように、クルマの運転感覚は“味”で表現されることがある。では、車両開発者はその味をどう解釈して、どんなプロセスで理想を実現しているのか? 元トヨタのエンジニア、多田哲哉さんに聞いた。 -
プジョー208 GTハイブリッド(FF/6AT)【試乗記】
2026.1.20試乗記「プジョー208」にマイルドハイブリッド車の「GTハイブリッド」が登場。仕組みとしては先に上陸を果たしたステランティス グループの各車と同じだが、小さなボディーに合わせてパワーが絞られているのが興味深いところだ。果たしてその乗り味は? -
ベントレー・コンチネンタルGTアズール(4WD/8AT)【試乗記】
2026.1.19試乗記ベントレーのラグジュアリークーペ「コンチネンタルGT」のなかでも、ウェルビーイングにこだわったという「アズール」に試乗。控えめ(?)な680PSのハイブリッドがかなえる走りは、快適で満ち足りていて、ラグジュアリーカーの本分を感じさせるものだった。






























