アルファ・ロメオ・ジュリア クアドリフォリオ(FR/8AT)/ジュリア2.2ディーゼル(FR/8AT)/ジュリア2.0(FR/8AT)
名作の予感 2016.06.07 試乗記 アルファ・ロメオのFRセダンが懐かしい名前とともに帰ってきた。アルファのロードカーとしては歴代最強の510psを誇る「ジュリア クアドリフォリオ」を頂点に据えた新しい「ジュリア」ファミリー。その仕上がり具合を、故郷イタリアのテストコースと公道で試した。起死回生のFRセダン
2011年に「159」の生産が終了して以来、久しく途切れていたアルファ・ロメオのミドルセダンが待望の復活を果たした。その名はジュリア。これは戦後、量産メーカーへと転身したアルファ・ロメオが1962年に発表し、大ヒット作となったシリーズ名称を受け継いだものである。
いまや年間販売台数が4万台規模のメーカーに落ち込んでしまった同ブランドが、起死回生を狙う渾身(こんしん)の後輪駆動スポーツセダンの実力を、イタリアはミラノとトリノの中間に位置するFCAのテストコース、バロッコ・プルービング・グラウンドとその周辺の公道で試した。
そのラインナップは、メーカー自身2.2リッターと呼ぶ2143ccの新型直列4気筒ディーゼルターボが150ps仕様と180ps仕様の2種類。ガソリンエンジンも2リッター直列4気筒ターボ(200ps)と、2.9リッターV6ツインターボ(510ps)の2種類となっている。
インテリアトリムにはスタンダードとスーパーの2種類があり……そう、あの「ジュリア スーパー」の名がよみがえったのだ! V6ツインターボについては「クアドリフォリオ」として別立てとなる。
そして、トランスミッションは6段MTとトルクコンバーターを搭載する8段ATが用意される。しかし6MTには右ハンドル仕様がなく、これにはイギリスのプレスが不満をもらしていたそうだ。そうなると、わが国も8段ATのみとなる可能性が高い。また質感にうるさい日本人のために内装はスーパーが標準仕様として導入される見込みという。
さて、まずはバロッコ周辺の田舎道からアウトストラーダ、そしてワインディングロードへと続く約100kmを、2.2ディーゼルの180ps仕様と2.0ガソリンターボで走った。
何より驚いたのは、その乗り心地の素晴らしさだった。単に乗り心地が“良い”だけではない。身のこなしがエレガントだったのだ。
静かで快適な2.2ディーゼル
アルファ・ロメオ初となるオールアルミ製の2.2リッターディーゼルユニットは、現在日本に輸入されている他の輸入車の直列4気筒ディーゼルターボと比較しても、最も強力な部類に入る。2リッターディーゼルを搭載する「ジャガーXE」と同じ180psの最高出力を3750rpmで発生し、XEより20Nm強力な450Nm(45.9kgm)の最大トルクを1750rpmで生み出す。
しかしそのキック力は、意外やおとなしい。全開加速時におけるターボのブースト感が薄く、例えば「BMW 320d」のような、トップエンドまで鋭く吹け上がるタイプではない。
それでも8段ATのギア比がよいのか、200ccの余裕がそうさせるのか、実用域でのアクセル開度ではスルスルと速度を上げていく。そしていったんスピードが乗ってくれば、120km/hからでも8速のまま加速が続き、さらに超高速域まで伸びる気配がある。つまり実用域でとても速いエンジンに仕上がっている。
そして室内が素晴らしく静かなのだ。なんでも今回は遮音のためにフロントバルクヘッドやセンタートンネルにラバーシートを挟み込むなどの工夫をしているようである。それらのおかげもあってか、これがディーゼルエンジン搭載車であると意識させられる場面がほとんどなかった。むしろこの後に紹介する、ガソリンエンジンの方がメカニカルノイズを感じたほどだ。
そしてこの静粛感には、シャシー性能の快適さも大きく影響している。小径なステアリングの操作感は、極めてクイック。しかしサスペンションの縮み始めがしなやかで、その動きに嫌なせわしなさがない。これにはライバルに比べて圧倒的に軽い1445kg(乾燥重量)の車重が効いているのだろうか。そしてここに、久々に本領発揮の、アルファ・ロメオらしい滑らかなロール感が加わって、極上の乗り心地が得られるのだ。
通常こうした特性はサスペンションストロークを長く取ることで実現されることが多い。しかしジュリアにはそれほどの“足長感”がなく、適度なロール角でスポーティーかつ上質なハンドリングが味わえるのだ。
もし「156」がFRだったら、こんな風にしたかったんだろうな! 新型ジュリアは、間違いなく歴代随一のハンドリングを持っている。
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普通の道が楽しくなる
そして2.0ガソリンターボに乗り換えると、ここにちょこっと刺激が加わった。その吹け上がりはよりターボユニットらしく、往年のファンにはウケがいいだろう。ただし昨今のターボユニットの流れをくんでいて、5000rpmも回せばトップエンドに達するから、その瞬発的なトルクの盛り上がりが頭打ちになる前にパドルでシフトして、次のギアに乗せていった方がテンポよく走れる。
エンジン重量が軽いせいか、ノーズの回頭性もディーゼルより“少しだけ”上。かつてのツインスパークを駆るような気分に浸れるが、ただディーゼルとてそれほど重さを感じさせない。エレガントさが欲しいなら筆者はディーゼルをお薦めする。
エンジンのパワーがそれほど高くないこともあるが、ターンイン後のリアの接地性も高く、安心してアクセルを開けていける。ドイツ車のようにスタビリティー感が丸出しのシャシーではなく、さりとて英国車のようにソリッド感が前面に出ているわけでもない。まるで麻のジャケットを羽織るかのような軽快な運転感覚を持つジュリアは、普通の道が素晴らしく楽しいモデルだった。
惜しい部分があるとすれば、それは電動パワーステアリングの感触だ。ごく初期の操舵(そうだ)に対する接地感が乏しく、まるでゲームのハンドルを回しているような感覚がある。それでいて走行モード切り替え機構のアルファDNAをダイナミックモードにした際の手応えが重すぎ、通常時とのギャップが激しい。
ただタイヤが荷重を受け止めだせば、その手応えは確実でわかりやすい。全てをまるっとまとめるなら、ジュリアは素晴らしいスポーツセダンに仕上がっていると思えた。
華麗に踊るクアドリフォリオ
最後はクアドリフォリオに、テストコースで思い切り試乗した。そして、たとえこれが最強のモデルでも、その根本的な操作感を、ベーシックモデルと同じくしていることに感銘を受けた。
エンジンの特性はまさにイタリアン。フェラーリのリソースを投入したというV6ツインターボは、その2891ccという中途半端な排気量からも察せられるとおり、どうやら「カリフォルニアT」に搭載される90度V8の6気筒分をモジュラー使用したものらしい。そしてこのエンジンが、実に軽々と吹け上がるのだ。
ボア×ストロークが86.5×82.0mmというこのショートストロークエンジンは、600Nm(61.2kgm)という強大なトルクを根詰まり感なく放出する。そしてトップエンドの7000rpmまで、アッという間に吹け切ってしまう。
だからトランスミッションは、6段MTよりも8段ATの方が合っていると感じた。その吹け上がりの速さに対応しやすいし、ギア比もショートだからどんどんシフトしていく操作が楽しい。またフェラーリ同様、パドルがステアリングコラムに備え付けられているのも良かった。
最初はその510psというパワーに戦々恐々としていた。しかしアルファリンクと呼ばれるリアサスペンションと、電子制御式クラッチを両輪に配置するLSDのトラクション性能が良いのだろう、慣れてくるとそのパワー感は、予想よりも手の内にある印象に変わってきた。
もちろんアクセルを床まで踏みならせば、285幅の「ピレリPゼロ コルサ」タイヤをスキッドさせるのはたやすい。しかし落ち着いてこれを操れば、4ドアセダンのボディーがスポーツカーのように華麗に踊る。
このクアドリフォリオでは制御装置がアルファDNA Proとなり、これをダイナミックモードにするとアルファCDC(シャシー・ドメイン・コントロール)が連動する。フロントのスポイラーが速度に応じて動き、リアデフのトルクベクタリング機構やダンパーの制御が先鋭化する。そしてレースモードを選べば、トラクションコントロールが解除される。
そこからの走りは、アルフィスタなら夢のように感じるだろう。
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アルファならではの味わいがある
アルファDNA Proでレースモードを選択すると、タイトコーナーでのノーズの入りはややアンダーステアとなる。カーボンセラミックローターを持つブレンボ製ブレーキシステムのタッチの良さやキャパシティーに対して、もう少し高いフロントグリップが欲しいと感じたものの、シャシーの全体的なシッカリ感は高い。コーナーに入っても、ボディーやリアサスペンションがヤワにねじれる感じはしない。
そしてノーズが内側を向いてからアクセルを開けていけば、クアドリフォリオはしっかりと立ち上がっていく。もしかしたらターンインの前半に感じられるアンダーステアは、リアデフの利きが強いために生じているのかもしれない。
このリズムになれてきたら、徐々にコーナーでの最低速度を上げながら、アクセルを早く開けていく。すると4輪をきれいに滑らせながら、中高速コーナーを駆け抜けられるようになった。
決してリアだけがだらしなく滑るのではない。後輪を地面に食い込ませながら、流れるように走れるのだ。この操縦感覚には「BMW M3」でも得られない刺激があり、「メルセデスAMG C63」が持つフロントの接地感にこそ及ばないものの、その動きは圧倒的に軽い。そう、クアドリフォリオはルーフやエンジンフード、フロントスポイラー、プロペラシャフトなど各所にドライカーボンを使い、エンジンやサスペンションアーム、ブレーキやドアに至るまでアルミで軽量化しているのだ。
高級スポーツカーやスポーツセダンの性能を推し量る手立てとして、最も手っ取り早いのは有名サーキットでのラップタイムを比較することだろう。そしてこのクアドリフォリオも、しかるべき場所でしかるべきタイムを刻める逸材だとは思う。
しかし「そんなのは大したことじゃない」と、クアドリフォリオは言ってる気がした。ライバルに見劣りしないパワーを得て身なりを整えながらも、これをドライバーが楽しめるように仕上げた開発陣やテストドライバーの感性が、とても素晴らしいと思えた。
彼らはアルファ・ロメオの味を忘れてはいなかった。
さて気になるジュリアの日本導入時期と値段だが、まず前者に関してはあと1年くらいは時間が必要なようだ。そして価格だが、クアドリフォリオは未定。とはいえこの性能を考えると、限りなくM3に近いクラスになるのではないか。一方2.2ディーゼルと2.0ガソリンについては「BMW 3シリーズ」かそれを下回るプライスを実現したい、とFCAジャパンの広報氏は語っていた。
156が登場したとき、ドイツ車の性能競争や階級闘争に飽き飽きしていた人々は、その美しさと走りの楽しさからアルファ・ロメオを選んだ。そして筆者はこの新しいジュリアにじかに触れることで、その再来をイメージできた。
そう考えると、あと1年の猶予も長くはない。だって本気で買うなら、少しは貯金しておいた方がいいじゃないか。
(文=山田弘樹/写真=FCA)
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テスト車のデータ
アルファ・ロメオ・ジュリア クアドリフォリオ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4639×1873×1426mm
ホイールベース:2820mm
車重:--kg
駆動方式:FR
エンジン:2.9リッターV6 DOHC 24バルブ ツインターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:510ps(375kW)/6500rpm
最大トルク:61.2kgm(600Nm)/2500rpm
タイヤ:(前)245/35ZR19 93Y/(後)285/30ZR19 98Y(ピレリPゼロ コルサ)
燃費:8.2リッター/100km(約12.2km/リッター、EU複合モード)
価格:--円/テスト車=--円
オプション装備:--
テスト車の年式:2016年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:トラックインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター
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アルファ・ロメオ・ジュリア2.2ディーゼル
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4643×1873×1436mm
ホイールベース:2820mm
車重:1445kg
駆動方式:FR
エンジン:2.2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:180ps(132kW)/3750rpm
最大トルク:45.9kgm(450Nm)/1750rpm
タイヤ:(前)--/(後)--
燃費:4.2リッター/100km(約23.8km/リッター、EU複合モード)
価格:--円/テスト車=--円
オプション装備:--
テスト車の年式:2016年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(軽油)
参考燃費:--km/リッター
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アルファ・ロメオ・ジュリア2.0
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4643×1873×1436mm
ホイールベース:2820mm
車重:--kg
駆動方式:FR
エンジン:2リッター直4 SOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:200ps(147kW)/5000rpm
最大トルク:33.7kgm(330Nm)/1750rpm
タイヤ:(前)--/(後)--
燃費:5.9リッター/100km(約16.9km/リッター、EU複合モード)
価格:--円/テスト車=--円
オプション装備:--
テスト車の年式:2016年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター

山田 弘樹
ワンメイクレースやスーパー耐久に参戦経験をもつ、実践派のモータージャーナリスト。動力性能や運動性能、およびそれに関連するメカニズムの批評を得意とする。愛車は1995年式「ポルシェ911カレラ」と1986年式の「トヨタ・スプリンター トレノ」(AE86)。
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