第355回:自動運転車ってもう買えるの!?
日産の新技術「プロパイロット」を体験してみた
2016.07.15
エディターから一言
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2016年7月13日、日産自動車から自動運転技術「プロパイロット」が登場、新型「セレナ」に装備されることが発表された。近年にわかに注目を集める自動運転技術。そのとらえ方は受け手側によってまちまちだが、日産の新技術とは一体どのようなものなのか? 試乗した印象をリポートする。
単眼カメラを利用した自動運転技術「プロパイロット」
「矢沢永吉の『やっちゃえNISSAN』のCMを見たんだけど、日産には、もう自動運転車が売ってるんでしょう?」
父親のための小型車が欲しいという友人からそんな話を振られて、思わずのけぞった。
同CMの手放し運転シーンを見た友人は、完全自動運転と思い込んでいたのだ。もしかしたら、そんなふうに理解している一般ユーザーも少なくないのでは?
そんなやりとりがあった数日後、日産の追浜工場に隣接するテストコース「追浜グランドライブ」で行われた「プロパイロット」体験試乗会に参加することができた。
試乗車は、2016年8月下旬発売予定の新型「セレナ」。日産の売れ筋モデルとなるこのクルマに、同技術が真っ先に装備されるという。
日産のプロパイロット技術を一言でいえば、高性能の単眼カメラを利用して、高速道路での渋滞走行と長時間の巡航走行でのステアリング・アクセル・ブレーキの操作を可能にする運転支援システムだ。
先行車に追従走行しながらステアリング制御を行うシステムとしては、すでに似たようなシステムが他メーカーから登場している。アウディの「トラフィックジャムアシスト」やメルセデスベンツの「ドライブパイロット」など欧州メーカーのものもあれば、国産メーカーでも、スバルの「アイサイト」やホンダの「ホンダセンシング」などが市販化されている。
日産のプロパイロット技術が他メーカーの技術と違うのは、高性能単眼カメラのみを利用した技術であるということ。このカメラを利用した従来の自動ブレーキシステムと構成部品はほぼ同じで、新たなコストが抑えられることから、オプション設定とはいえ、手ごろな価格での提供が期待できるのが強みだ。
操作は簡単 3つのスイッチを操作するのみ
早速、テストコースでの試乗が待っていた。
新型セレナに乗り込み、エンジン始動後にステアリング右側にある青色の「PILOT」スイッチを押すと、前方のディスプレイに「PILOT(イラスト)」マークが点灯、「セーフティ・シールドが支援モードになりました」という案内が表示される。この時点ではシステムの待機状態、パソコンでいう“起動”の状態だ。
シフトセレクターをDレンジに入れ、電気自動車の「リーフ」を先行車としてコース上に入る。まずは、通常の追従走行を行う。タイヤを真っすぐにした状態で「SET」ボタンを押すと、システム開始。ここからはステアリングを軽く握ったままで、アクセルとブレーキの操作は行わない。すると、軽く指を曲げステアリングに手を添えているだけで、2本の白線の中央を維持しながら、コーナーではステアリングをグッと切って旋回をアシストしてくれる。ステアリングから手を離したり、アクセルやブレーキを踏んでキャンセルになった場合には、再び「SET」を押し、システムを再開させればいい。
次に、渋滞時のノロノロ運転を想定した低速での追従走行を行った。
試乗車は、停止や前進を繰り返す先行車の動きに合わせて、一定の距離を保ちながら追従していき、停止時間が3秒以内であれば、ドライバーはハンドルを握っているだけで、操作をする必要がない。停止時間が3秒を超えた場合には停止状態を維持し続けるので、「RESUME」を押すかアクセルを軽く踏めば、再び走り続けることができる。
快適だが、過信は禁物!
「結構ラクかも!」というのが、第一印象だ。しっかりとしたポジションをとってハンドルをグッと押し付けて握る必要はないから、体への負担は軽くてすむし、半分クルマにおまかせできる分、気持ち的にもラクになれる。
ハンドルを握り、靴底をべったりとフロアに下ろしているという状態にはまだ少し違和感があるが、ACC(アダプティブクルーズコントロール)に慣れているひとなら、それほど違和感もないかもしれない。長距離ドライブはずい分ラクになるのでは?
自動運転技術の進歩がクルマ好きから運転することの楽しさを奪う、といった心配をする人もいるかもしれないが、人が運転するよりも事故が防げるという点で、このような新技術が開発されるのはありがたいなぁと思う。いくらクルマ好き、運転好きであっても、疲れたときにはクルマの力も借りたいと思うから。
とはいえ、なんとなく、喉にひっかかる小骨のような違和感も残った。ドライバーは常にハンドルを握っていなければならないのに、操作してはいけない。ブレーキはいつでも踏み込める状態にしておく気持ちでいなければならないのに、ペダル操作をしてはいけない、というのは、心と体の動きが矛盾し、逆にストレスがたまりそうな気もしてくる。
それに、ドライバーがこの技術を過信して安心しきってしまうことが、一番怖いと感じた。シートの上で足を組んだりして、急なブレーキ操作に間に合わないことも十分に考えられる。
日産の開発者のひとりは、私のこのような憶測に対してうなづきながら、こう答えた。
「開発にあたっては、一般道と高速を合わせて10万kmを走破し、検証を重ねてきました。安全性に対しては自信を持っています。とはいえ、この技術はあくまでもドライバーのサポートをするものであって、完全ではありません。ユーザーの皆さんには、むしろ過信してほしくないと考えています」と。
自動運転という言葉が日常的に飛び交う時代にはなったものの、その技術に対する期待値と現実との溝は、まだまだ十分に埋まってはいない。
新技術とはいえ、あくまでもサポートであるという意識を、ユーザーの一人ひとりが認識することから始めることが大切だと感じた。
(文と写真=スーザン史子)

大久保 史子
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