第378回:おめでとう創立100周年!
BMWのオーナーイベントで往年の名車に試乗した
2016.11.15
エディターから一言
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BMWが誕生して今年で100年。記念すべき年に開催されたBMWクラブジャパンのオーナーイベントで、貴重なヒストリックカーに試乗する機会を得た。1950~60年代に活躍した高級サルーンと、今日のBMWの共通点とは?
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節目の年を八ヶ岳で祝う
のっけから釈迦(しゃか)に説法な話で恐縮だが、BMWは独バイエルンの航空機用エンジンメーカーを起源に持つ自動車会社であり、今年めでたく創立100周年を迎えたという。
そのあたり、マニアの中にはごく少数だが「いやいや。『起源は航空機用エンジンメーカー』というのなら、創立は1913年。100周年は2013年でしょうよ」と主張する人もいるそうだが、BMWとしてはラップ・モトーレン・ヴェルケとグスタフ・オットー・フルークマシーネン・ファブリークが合併した1916年を「わが社創立の年」としている。もちろん、いずれにせよ同社の創立100周年がすばらしい吉事であることに変わりない。おめでとうBMW。そしてBMWファンの皆さま。
そんなめでたい節目の年、『webCG』はBMWクラブジャパンの主宰するイベント「BMW Day 2016」を取材する機会を得た。場所は山梨県の八ヶ岳ロイヤルホテル。編集部が居を構える東京・恵比寿からだと、片道2時間半、160kmの旅路である。せっかくなので、BMWから新世代の2リッター4気筒ターボエンジンが採用されたばかりの「4シリーズ グランクーペ」を拝借。道のりを楽しみつつ会場に向かうことにした。ちなみに、グレードは「420i xDriveグランクーペ Mスポーツ」。5ドアファストバックの4WDという、BMWの中でもいささかマニアックな仕様である。
52年の歴史を誇る由緒正しいオーナーズクラブ
渋滞を避けるために早朝に東京を出発し、朝9時ごろには会場に到着。ホテルの一角には特別試乗会などの申し込みを受け付けるテントがすでに設営されており、白地に「BMW Club Japan × BMW Motorrad Club Japan」と描かれたトレーナーを着たスタッフが、会場の交通整理に立ち回っていた。
そもそもBMWクラブジャパンとは、その名の通りBMWの日本のオーナーズクラブである。創立は“ノイエクラッセ”が現役だった1964年と、その歴史は今年で実に52年。1979年にはドイツ本国から認定を受け、現在もBMWクラブアジアとは別組織として活動を認められているという。
まずは先述のテントに顔を出し、今日お世話になるイベントスタッフにごあいさつ。すでに「M2」「M4」「X6 M」といった高性能モデルの試乗会や、モータージャーナリスト菰田 潔氏によるドライビング・クリニックなどは始まっているようで、当日のスケジュールを管理するホワイトボードの午前枠は、申込者の名前で埋まりつつあった。せっかくなので、私も菰田氏のドライビング・クリニックを受講することにする。こうした業界に身をおいていても、ちゃんとした人にちゃんと自分の運転を診てもらえる機会は意外と少ないのだ。
仕事そっちのけで臨んだ診察の結果は、乗り込み方や運転姿勢は可。走行時のペダルワークはそこそこだが、ハンドル操作に難ありというもの。「ハンドルを大きく切る際、ハンドルを持ちかえる時に手を置く位置が適当でばらばら」という指摘を受けた。これでは切り返しや車庫入れの際、いちいちハンドルを目視しないとタイヤの向きが分からない。当人が気づいていないだけで、悪癖というのはあるものなのだと反省した次第である。
ユニークな経緯で嫁いできた名車
菰田氏によるクリニックから戻ると、先ほどのテントの傍らに「BMW 3200S」が展示されていた。戦後期のドイツにおいて、王者メルセデス・ベンツに向うを張る高級・高性能サルーンだったという希少なクラシックカーだ。古いクルマ好きの自分としては、これをつぶさに観察できるだけでも八ヶ岳に来たかいがあるというものだ。
実は、この1960年製の3200S、BMWクラブジャパンの会長を務める細淵雅邦氏のマイカーである。せっかくなので、ごあいさつの折に同車についてお話を伺ったところ、とても興味深いエピソードを披露していただいた。というのもこのクルマ、『webCG』にとっても縁浅からぬ故小林彰太郎CAR GRAPHIC名誉編集長の“仲立ち”によって、細淵氏の元にやってきたのだ。前オーナーが亡くなり、同車の引き取り手を捜していたそのご家族に、小林氏が細淵氏のことを紹介したという。当の細淵氏は何も知らされていなかったようで、「前オーナーのお宅に伺ったら、(前オーナーの)お母さまと奥さまに、真剣な顔で『このクルマを引き取る覚悟はおありですか?』と尋ねられた」「突然、3200Sとのお見合いの席に連れて行かれたようだった」と、当時を懐かしそうに振り返っていた。
貴重なクラシックカーやエキゾチックカーの世界では、クルマの引き取り手を「嫁ぎ先」と表することがあるが、前オーナーのご家族にとって、まさに細淵氏は3200Sの嫁ぎ先だったのだろう。同時に、生前の小林氏の、おおらかでちょっとおちゃめな人となりを感じさせるエピソードでもあった。
昼食を終え、あらためて3200Sの姿を神妙に観察。実はこの後、このクルマに試乗する機会が設けられていたのだ。
エンジンで車速をコントロールする
試乗はまず“後席インプレッション”から始まった。前開きのドアからきれいにカーペットの敷かれた車内に乗り込み、遠慮がちにリアシートに着席。まずはそのふっかふかな掛け心地に驚かされる。自動車のシートというより、お屋敷の応接間に備えられたソファといった趣だ。分不相応にもそこにふんぞり返り、窓から八ヶ岳の紅葉を眺めていると、気分はもう“昭和の大物”である。段差などでの入力もすっかりこのソファが吸収してしまうので、ドライバーの丁寧な運転とも相まって、快適なドライブを満喫することができた。
続いて、いよいよ記者が運転席へ。ダッシュボードの下から真っすぐに突き出たTバーはサイドブレーキ、シフトは古式ゆかしきコラムシフトだ。文字通り、手探りでポジションを探りつつギアを1速に入れて発進させると、まずはストロークの長いクラッチに戸惑った。一方でスロットルペダルに違和感はなく、ゆるやかなワインディングロードを走るうちに、クラッチの踏みしろについても慣れてしまった。「気をつけて」と警告されていたブレーキも、早め早めに踏むことさえ心がければ、おっかないところはない。
一方で、最後まで苦戦したのがシフトポジション。とはいえ、これはコラムシフトに不慣れな記者のせいで、3200Sに罪はない。また事前に「走行中は2速と3速だけでOKですよ」と聞いていた通り、3200Sはせっせとシフト操作をしなければならないクルマでもなかったので、これも実際にはさほど苦にはならなかった。なにせこのクルマ、エンジンの柔軟性がすごいのだ。回せばパワーが出るのはもちろん、低回転域でもむっちり粘る。シフトではなくアクセルの踏み加減で車速をコントロールするという、考えてみれば当たり前の操作が妙に新鮮だった。
スポーティーな走りだけが魅力にあらず
ブレーキと並んで「重いですから」と注意されていた細身のステアリングホイールも、なにせ写真の通りの大径である。実際に運転してみると、特に操作に腕力が必要とは感じない。もっとも、ここについては当方がちょっと前まで“ノンパワステ”の「ローバー・ミニ」のオーナーだったことを考慮しなければならないが、それを差し引いても、3200Sはハンドリングで疲労困憊(こんぱい)するほどの“重ステ”グルマではなかったはずだ。
道中、なかなかうまく運転できない記者に、助手席に移っていたドライバー氏が「要はリズムですよ。おおらかな気持ちで走らせるのがコツです」とアドバイスをくれた。確かに、セコセコしたハンドリングやギアチェンジをやめ、先を見越した運転を心がければ、もろもろが丸く収まり、先述したエンジンの扱いやすさだけが際立って感じられる。元航空機用エンジンメーカーの面目躍如である。
試乗前、オーナーの細淵氏に「3200Sに、今日のBMW車に通じるところはありますか?」と尋ねたところ、「運転しやすいところ」と即答された。「駆けぬける歓び」的な回答を予想していたので意外だったが、後になって妙に納得した。3200Sについては同時期の他のクルマと乗り比べたことがないのでよく分からないが、東京-八ヶ岳の往復でお世話になった4シリーズ グランクーペは、確かに運転が楽だったのだ。特に復路、下り高速コーナーが続く中央自動車道で、天候は雨というシチュエーションを休憩ナシで東京まで戻れたのは、そのシャシー性能と4WDの恩恵だろう。
乗用ヨンクのBMWは、マニアックだけど大いにアリ。長年にわたり日本で親しまれてきたその歴史に加え、スポーティーなだけが能じゃないという同社の懐の深さを知った今回の取材だった。
(webCG ほった)

堀田 剛資
猫とバイクと文庫本、そして東京多摩地区をこよなく愛するwebCG編集者。好きな言葉は反骨、嫌いな言葉は権威主義。今日もダッジとトライアンフで、奥多摩かいわいをお散歩する。
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