特別提言:スポーツカーの火を消さないために(後編)
2017.01.19 谷口信輝の新車試乗 SUPER GTや86/BRZ Raceなど、数々のモータースポーツシーンで活躍中のレーシングドライバー谷口信輝が、本音でクルマを語り尽くす! 前回に続き、今回も谷口が自伝を交えながら、スポーツカーに対する思いを語る。題して「スポーツカーの火を消さないために」。谷口はなぜ「トヨタ86」や「スバルBRZ」にこだわるのか。そのワケが明かされる。ようやくともったスポーツカーの火
28歳で上京した僕はモータージャーナリストを目指しながら、ドリフトやレースにも挑戦していったことは前編でお話ししたとおりです。そうやって世の中にクルマ好きをひとりでも増やすことが、僕の使命であり生きがいだと考えていたのです。
ところが、ある時期から日本車メーカーが作るスポーツカーはどんどん姿を消していきました。昔はそれこそ「AE86」もあれば「RX-7」もあって、「シルビア」「スカイライン」「フェアレディZ」「セフィーロ」「ローレル」「マークII」や「チェイサー」の「ツアラーV」、それに「S2000」もありました。いわばスポーツカーの黄金期ですよ。ところが、こういったモデルが次々となくなって、マニュアルのターボ車はだんだん新車で買えないようになっていきました。
しかも、ディーラーは改造車の面倒を一切見ないような風潮がはびこって、「ディーラーチューンのみOK」みたいな対応が当たり前になっていきました。おかげでアフターパーツ業界は大不況。まさにスポーツカーの氷河期がやってきたのです。
僕は当時からこう主張していました。「スポーツカーがなくなってクルマのチューニングが認められなくなれば、日本からクルマ好きは消えていなくなる。ディーラーが改造車を受け付けなくなれば、街のチューニングショップやパーツメーカーはいや応なしにつぶれていく。そうなったら、結局、損するのは自動車メーカー。オールハッピーの法則じゃないと、食物連鎖が起こって、回り回って自分の首を締めることになる! たしかに昔ほどスポーツカーは売れなくなったかもしれないけれど、だからといって自動車メーカーがスポーツカーを作らなくなれば若者のクルマ離れは進むばかり。そうさせないためにも、自動車メーカーはスポーツカーを作って!」と。ところが、僕のこの願いはかなわないまま、何年もの歳月が過ぎ去っていきました。
そんなときにさっそうと登場したのが「トヨタ86」と「スバルBRZ」でした。これは僕たちクルマ好きだけでなく、パーツメーカーにとってもチューニングショップにとっても、さらに言えばサーキットにとっても待望の朗報でした。もう、パーツメーカーなんかは「このときを待っていました!」とばかりに、「86/BRZ」のありとあらゆるパーツを作っていきましたよ。足まわり、マフラー、ホイールは言うまでもなく、インテリアもダッシュボードやコンソールボックスを次々とカーボンで作り直しました。なかには天井の内張までカーボンで作ったメーカーがあるくらい。それほど、パーツメーカーはスポーツカーの誕生を待ち望んでいたわけですね。
ようやくともったスポーツカーの火を決して絶やしてはいけない。そう思った僕は少しでも86人気を盛り上げなければと考えて、発売直後にトヨタ86を買いましたよ。たしか40歳のときだったと思うけれど、これが僕の人生で初めて買った新車。だって、いくら「クルマ好きになって86を買って!」って僕が叫んでも、僕自身が86を持っていなかったら説得力がない。「みんなに薦めるくらいだったら、まず自分が買わなければ!」 僕はそう考えて86を注文したのです。
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