マツダCX-5 20Sプロアクティブ(FF/6AT)
もうひとつの本命 2017.04.14 試乗記 2リッターのガソリンエンジンを搭載する「マツダCX-5」のベースグレード、「20S」に試乗した。力強く、燃費にも優れたディーゼルモデルが圧倒的な人気を集めるCX-5のラインナップにおいて、パワーもトルクも控えめに映る20Sの“存在意義”とは? 東京から伊豆へのツーリングを通じてその魅力を探った。軽やかさが信条
いまやマツダの大黒柱として不動の地位を築いたCX-5。常にその話題の中心にいるのは、2.2リッターの直列4気筒ディーゼルターボ(175ps/420Nm)を搭載する「XD」である。実際その売れ行きもCX-5全体の75%を占めており、残り25%を今回試乗した20Sと、2.5リッター直列4気筒の「25S」で分け合う形となっている。
同じ前輪駆動(FWD)モデルでその差31万3200円。それなら確かにユーザーが「一度はディーゼルを経験してみよう!」と思うのは納得。しかしより現実的な安全装備を搭載した「プロアクティブ」を選ぶと、差額は同じながらもXDは「300万円の壁」に突入してしまう。
そんな状況で、25%のマイノリティーがなぜガソリンモデルを選んだのか、今回はCX-5の最もベーシックなモデルである20Sに乗りながら、考えてみたいと思う。
「こりゃあ、ある意味本命だなぁ」
「ロードスターRF」試乗会のお供として連れ立ったせいか、CX-5 20Sに乗り換えると、自然とそんな言葉がクチからこぼれた。
コンパクトで小さく、ダイレクトなステアフィールを持つロードスターRFに比べ、CX-5の乗り心地は快適で、室内が静かで、当たり前だが乗員の視点は高く、とても広い。
しかし2台のギャップだけが、そう言わせたのではない。むしろ同じ「ロードスター」でも1.5リッターユニットを積む“元祖”をほうふつとさせる軽快感が、20Sの246万2400円からという現実的な価格とシンクロして、気持ちを高揚させたのだろう。そう、このベーシックモデルのよさは、何よりその存在が軽やかなことである。
“淡麗”な2リッターガソリンユニット
20Sに搭載されるエンジンは、155ps/196Nmのパワー&トルクを生み出す2リッターの直列4気筒「SKYACTIVーG」。これは欧州勢にマツダが真っ向から立ち向かう自然吸気ユニットだ。
その出力特性は、流行(はや)りの小排気量ターボに対し、確かに踏み始めのトルク感や、ブーストの立ち上がり感はない。とはいえ、ボア83.5×ストローク91.2mmというロングストローク特性は実直に効いており、出足にドラマこそないものの、そのスーッと進むスマートな走りだしが持ち味とわかれば、走りが楽しくなってくる。そしてここには、シャシー側の洗練や遮音性が黒子的な役割を果たしている。
そこからアクセルをもう少し踏み込んでいくと、これが自然吸気ユニットらしく気持ちよく吹け上がって、最大圧縮比13.0の本領を発揮する。そこにはまさにロードスターと同じ淡麗さがあり、積極的にアクセルを踏んでいくのがとても気持ちいい。
ただ今の時代は、このアクセルを踏み込むという動作に、ある種の後ろめたさを感じる時代だ。それだけに「マツダのエンジン、サイコー!」とはしゃぐのは、時代の空気を読まない感じがするだろう。
しかしマツダによれば中・高負荷時の燃費は小排気量ターボよりもよいとのことで、安心してこの気持ちよさを味わっていいということになる。
実に“普通”な仕上がり
それに対してシャシーは、透き通った心地よい乗り心地と忠実な応答性が実現されている。
かつてダンパーの初期抵抗を可能な限り減らし、マツダらしいピュアな旋回性を与えることに血眼になっていた影は薄れ、路面からの入力をシッカリと吸収しながら、より洗練された素直な曲がり方をするようになった。
これには「G-ベクタリングコントロール(GVC)」が貢献しているのかもしれない。ダンパー減衰力を初期から立ち上げても、ECUが人間には感じられないレベルでエンジントルクを減らしてフロント荷重を増やしてくれるから、しっかりとした乗り心地のままクルマが自然に曲がってくれる。セッティングが違うのかサスペンション剛性の関係か、よりフロント重量がヘビーなXDよりも20SはGVCの効き方が自然で、人工的な感触が少ないのにも好感が持てる。
コーナリングはこの手のSUVの中ではとりわけ切れ味がよい。サスペンションは適度なロールを許しながらタイヤが地面を捉え続け、そこから切り込んでいくとGVCと内輪ブレーキの連携か、コーナーの内側へとノーズをグイグイ入れていく。
面白いのはこうしたスポーツカー顔負けの身のこなしを持ちつつも、全体的な印象はやり過ぎ感がないことで、だから筆者はこれを淡麗と表現した。ホールド性は低いが座り心地のよいシート、運転姿勢が自然に決まるシートやペダルの配置。こうしたすべての要素が絡み合って、実に「普通」に仕上げられている。
CX-5のセリングポイントのひとつである静粛性は、マツダ自体はモデルによる格差はないというが、XDにはなぜか少し及ばないと感じた。少なくともタイヤの選択は、静かさを売りにするならこだわってほしい。
それでも旧モデルに対しては振動も遮断されているし、一般的には静かな部類には入る。ただモデル格差がないのであれば、ドアを締めるとバシュッとした風圧とともに訪れる、圧倒的な「密閉感」が欲しい。もっとも一番ベーシックなモデルとしてなら、「贅沢は言わない。これで十分!」というレベルには仕上がっている。
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車体剛性をトコトン上げてほしい
総じて20Sは、CX-5という端正なSUVボディーを現実的な価格で楽しめる、非常にお買い得なモデルに仕上がっている。4WDの設定にこだわらず、ミニマムにCX-5を楽しむなら本当にこれで十分である。
本来であれば6段トルコンATではなく、やはりフォルクスワーゲンばりのレスポンスを持つデュアルクラッチトランスミッションが欲しい。いまやトランスミッションはクルマの動力性能や切れ味を大きく左右するシステムだからだ。ここにキラリと光るソリューションがあれば(たとえば「スズキ・ソリオ」のようにシングルクラッチ式AGSの空走感をモーターでアシストするような!)、SKYACTIVエンジンはさらに素晴らしくなる。
もっと言えば、車体剛性をトコトン上げてほしい。それにはコストが掛かるのは百も承知。しかし年間販売台数が50万台規模でボルボがこれを実践しているのであるから、同じグループにいた立場としては負けていられない。
マツダは実際の剛性を向上させるというより、軽さを主軸に剛性バランスを取ることでその身のこなしを表現していると思う。今のところこの20Sではそれがバッチリと生きているし、XDはディーゼルユニットの重さや4WDの重量バランス、そして駆動力がそのどっしり感を演出できている。しかし高いシャシー剛性は、乗り心地、振動透過を伴う静粛性、ハンドリング、駆動力……といった、マツダが喧伝(けんでん)するすべての要素の機軸となる。ここがよくなれば、すべての威力が倍になるのだ。CX-5は確かにいいクルマだが、かたや味わいというか個性が薄いのは、すべては車体剛性に起因していると筆者は思う。別にドイツ車になれというわけではない。素材の重量を増やさずとも、機知に富んだ設計で剛性を出してほしい。
とはいいつつ、246万2400円からという価格はやっぱり衝撃的だ。これだけのことを想起させながらも、すべてを納得させてくれる性能で20Sを世に出してくれたことには、本当に頭が下がる思いである。だから今、ガソリンエンジンのベーシックグレードである20Sは買い! だと再び筆者は結論づける。そしてみんなが笑顔でこれに乗ってくれている間に、骨太な次期型を開発してほしい。
(文=山田弘樹/写真=田村 弥/編集=竹下元太郎)
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テスト車のデータ
マツダCX-5 20Sプロアクティブ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4545×1840×1690mm
ホイールベース:2700mm
車重:1530kg
駆動方式:FF
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ
トランスミッション:6段AT
最高出力:155ps(114kW)/6000rpm
最大トルク:196Nm(20.0kgm)/4000rpm
タイヤ:(前)225/55R19 99V/(後)225/55R19 99V(トーヨー・プロクセスR46)
燃費:16.0km/リッター(JC08モード)
価格:268万9200円/テスト車=286万2000円
オプション装備:特別塗装色代<ソウルレッドクリスタルメタリック>(7万5600円)/ドライビング・ポジション・サポート・パッケージ<運転席10wayパワーシート&シートメモリー/アクティブ・ドライビング・ディスプレイ連動、運転席&助手席シートヒーター、ステアリングヒーター>(6万4800円)/CD/DVDプレーヤー+地上デジタルTVチューナー<フルセグ>(3万2400円)
テスト車の年式:2017年型
テスト開始時の走行距離:3391km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(5)/山岳路(3)
テスト距離:374.4km
使用燃料:39.0リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:9.6km/リッター(満タン法)/10.9km/リッター(車載燃費計計測値)

山田 弘樹
ワンメイクレースやスーパー耐久に参戦経験をもつ、実践派のモータージャーナリスト。動力性能や運動性能、およびそれに関連するメカニズムの批評を得意とする。愛車は1995年式「ポルシェ911カレラ」と1986年式の「トヨタ・スプリンター トレノ」(AE86)。
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