プジョー3008 GTライン デビューエディション(FF/6AT)
わが道を行くSUV 2017.05.25 試乗記 フルモデルチェンジを受けて、より一層SUVらしい存在感を得た「プジョー3008」。新世代のi-Cockpitが採用され、先進運転支援システムも大幅に強化されるなど、見どころ満載のニューカマーだ。180台限定の装備充実仕様「GTライン デビューエディション」に試乗した。“4桁プジョー車”が2世代目に
その発祥が、1929年のパリモーターショーで発表された「201」までさかのぼる、「真ん中に“0”を挟んだ3桁数字」からなるプジョー車の独特なネーミング。
そのおきてを破り、今度は中央にゼロを2つ並べた4桁数字の車名を初めて採用したのは、2004年のやはりパリモーターショーで大々的にアピールをされた「1007」だった。
「基幹モデルではカバーのできない、より自由な発想に基づいたモデルには、今後4桁数字の車名を与える」という当時のプジョー社のコメントにあったように、両サイドに電動スライドドアを設けた3ドアボディーという1007のデザインは、確かにそれまでのプジョー車にはなかった挑戦が盛り込まれたものであった。
その後の3008に「5008」、そして「2008」と続いた4桁ネーミングプジョー車は、なるほどそのいずれもが、SUVやミニバンなど、既存のラインナップの枠を外れたキャラクターの持ち主で占められてきた。
ここにお伝えするのは、そんな3008が初めてのフルモデルチェンジを行い、2代目へと世代交代したもの。
すなわち、前出プジョーの「既存の枠にとらわれないキャラクターにチャレンジする」というモデルづくりも、これで2巡目へと足を踏み入れたことになるわけだ。
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駆動方式はFFのみ
このところ、世界中でその動きを明確なものとしている、SUV人気の潮流――端的に言えば、新しい3008はまずそのルックスからして、このところのそうした時代背景により分かりやすく応えたことがうかがえるモデルに仕上げられている。
4450×1840×1630mmというボディーのスリーサイズは、従来型比では「全長のみがひと回り大きくなった」と紹介できるもの。残念ながら、日本固有のパレット式立体駐車場の多くは諦めなければならない全高の持ち主だが、今でもモデルチェンジによるサイズの肥大化が止まらない中にあって、うれしいことに全幅は5mmの増加にとどまった。5.6mという最小回転半径と相まって、「これならば何とかなりそう……」と、まずスペックを眺めた段階で感じる人は少なくないはずだ。
今回取材を行ったのは「GTライン デビューエディション」なる、新発売を機に180台限定で設定されたバージョン。354万円という絶妙なスターティングプライスが設定されている新型3008だが、当該のバージョンはちょうど400万円という最高価格。
今のところ、日本仕様として導入されているモデルが搭載するパワーパックは、最高で165psを発するターボ付き4気筒ガソリンエンジン+6段ATのみの組み合わせだが、この限定モデルではベースモデルに対してよりスポーティーな装いを特徴とするエクステリア/インテリアや専用デザインのホイール、アルミ製ペダルやフロント・ドアステップガードなどが標準装備とされている。
4WD仕様を持たず、前2輪駆動というのは他のグレードと同様。が、ダイヤル式スイッチによりモードを選択することで、路面状況に応じたトラクション力の調整などを行う、ヒルディセントコントロール機能付きの“アドバンスドグリップコントロール”や、シリーズ中で唯一のマッド&スノー・タイヤを標準装備とするなど、実際に幾ばくかのオフロード性能向上を意図していたスペックを見せるのも特徴となっている。
外も内も個性的
欧州ではすでに昨年6月に発表され、立ち上がりの販売も好調というニュースが伝わる新型3008。実車と対面すると、その存在感が思いのほか強いことをあらためて教えられることとなった。特に、インバース形状を描きつつ大胆に直立したフロントグリルが、これまでのプジョー車には類を見ない、かなりの迫力を放つのだ。
SUVを名乗りつつもスラントしたノーズを備えるモデルが少なくない中で、3008のそれは「高いグリルの上に、フラットに近いフードを置いた」という仕立てが顕著。ブラックベルトの中に“爪がひっかいた跡”をモチーフにしたという3連レンズからなるライトグラフィックが印象的なリアビューも、あらためて目にするとなかなか個性的だ。
見かたによっては、「ちょっとばかりプジョー車離れをしている」とも思えるエクステリアから、インテリアへと目を転じるとこちらも“魅せるデザイン”を意識していることを実感。あえて“逆回転表示”とされたタコメーターはやはり「見にくいナ……」と感じてしまうが、イグニッションOFF時には一面がブラック化されるバーチャルメーターや、ファブリックやレザー、メタルなど多彩な素材のコラボレーションを演じる全体の雰囲気、そしてダッシュボード下部に“整列”されたトグルスイッチなどが、実用一辺倒とは異なるユニークさを醸し出す。
ちなみに個人的には、その人間工学無視(!)のスタンスにどうしても抵抗感を抱いてしまう、昨今のプジョー車が好んで用いる“iコックピット”、すなわち、極端に小径のステアリングホイールをやはり極端に低い位置にレイアウトし、高い位置に置かれたクラスター内のメーターを(無理やりに……)その上部から読み取るというコンセプトも、このモデルでは違和感が小さかった。
比較的アップライトな姿勢で座ることもあり、相対的にステアリング位置の低さがあまり気にならないというのが、その主な要因でありそうだ。
プジョーならではの“味”がある
一方、175mmという大きめな最低地上高が確保された上で、前述のように比較的アップライトな姿勢で座ることでアイポイントは高めであるにもかかわらず、ボディー前端位置がさほどつかみやすくないと感じられたのは、フロントカウル位置が高めの設定であることと関係が深そう。加えれば、高めの位置に天地方向に薄いリアウィンドウが置かれ、実は後方視界はルームミラー越しでも振り向きによる確認でも、あまり優れてはいないのがこのモデルでもある。
キャビン空間は大人4人が長時間を過ごすのに不満のないものだし、シートバック前倒しでクッション部分を下げながら拡大される荷室空間も、少なくとも外観から予想をする以上のボリューム感。ちなみに、昨今はSUVでも補修キットで済ますモデルも少なくない中、このモデルはテンパータイヤの搭載でパンク対応を行う。
現行「308」から採用の始まった新骨格、“EMP2”を用いた新型3008は、やはり308の場合と同様に、従来型比での軽量化が実現されているのは見逃せない。それもあって絶対的な加速力に不満はないのだが、一方でそんな加速感がアクセル操作にリニアに応答してくれない印象が残った点はちょっと気になった。
例えば、カメラマン氏のリクエストに応じて“並走写真”を撮ってもらおうという場面で、これがなかなか一筋縄にはいかないのだ。同様に、ブレーキのリニアリティーも今ひとつと感じられた。こちらはブースターがドライバー席から遠い車両左側に置かれていたことなども影響があるのだろうか。
フットワークは、路面によって時にばね下の動きに多少の重さを感じるような場面もあったのは事実だが、基本的には接地感に優れ、積極的な荷重移動も楽しく感じられる“プジョー流儀のオイシサ”が認められた。思いのほか静粛性に優れ、それゆえロングツーリングも得意科目と実感できたのは、このグレードならではの装備とされるマッド&スノー・タイヤが、プラス方向に働いた可能性もある。
正直なところ、同じ輸入車ではあっても決して質実剛健とは言いかねるちょっと“キワモノ”的なキャラクターが感じられるのは事実。が、だからこそウマが合う人とは熱愛関係に陥れそうなフランス発ニューカマーなのである。
(文=河村康彦/写真=小河原認/編集=竹下元太郎)
テスト車のデータ
プジョー3008 GTライン デビューエディション
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4450×1840×1630mm
ホイールベース:2675mm
車重:1500kg
駆動方式:FF
エンジン:1.6リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:6段AT
最高出力:165ps(121kW)/6000rpm
最大トルク:240Nm(24.5kgm)/1400-3500rpm
タイヤ:(前)225/55R18 98V M+S/(後)225/55R18 98V M+S(コンチネンタル・コンチクロスコンタクトLX2)
燃費:14.5km/リッター(JC08モード)
価格:400万円/テスト車=435万8980円
オプション装備:パノラミックサンルーフ(15万円)/NEW3008タッチスクリーン専用カーナビ(19万8720円)/ETC(1万0260円)
テスト車の年式:2017年型
テスト開始時の走行距離:1333km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(7)/山岳路(1)
テスト距離:273.0km
使用燃料:24.4リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:11.2km/リッター(満タン法)/11.6km/リッター(車載燃費計計測値)

河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
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