アルファ・ロメオ・ジュリア クアドリフォリオ(FR/8AT)
血湧き肉踊るスポーツセダン 2017.11.10 試乗記 アルファ・ロメオの新型スポーツセダン「ジュリア」がいよいよ日本の道に現れた。510ps、0-100km/h加速3.9秒、最高速307km/hと、まるでスーパーカーのような数字を誇るフラッグシップの「クアドリフォリオ」。その走りに、ドライバーを鼓舞する、あのアルファならではの“クオーレスポルティーボ”はあるのだろうか?重厚だけど軽やか
アルファ・ロメオ待望のスポーツセダン、ジュリアがとうとう日本上陸を果たした。そして今回は、その最もパワフルでスポーティーなモデルであるクアドリフォリオに、いちはやく試乗することができた。
ちなみに筆者は一連の新生ジュリアを2016年5月にイタリアで開催された国際試乗会で試しており、その内容もwebCGに寄稿している。だから今回は新鮮味がかなり欠ける試乗になることを覚悟していたのだが……その予想は大きく外れた。良いものは何度見ても、何度乗っても、やっぱり良かったのである!
アルファ・ロメオ伝統のレーシングシンボルである“四つ葉のクローバー”、これをそのままグレード名にしたクアドリフォリオの注目すべきポイントは、510ps/600Nmものパワーとトルクを発生するV6ツインターボだろう。2891ccという独特な排気量を持つこのV6エンジンには、フェラーリのリソースが多く採用されているという。ただ、V6なのにバンク角が90度であることから、「フェラーリ・カリフォルニアT」の8気筒から2気筒をちょん切った的な風評があることに、内部の人間が「アルファ・ロメオによる完全な新設計だ!」とちょっと怒っていたことも付け加えておこう。そう、エンツォ・フェラーリいわくアルファ・ロメオは“母”なのである。
それはともかく、その出力はアルファ・ロメオの量産市販車として過去最高の値であり、ついにあの「BMW M3セダン」(431ps/550Nm)をも上回った。相手がモデル末期であること、モデルチェンジすればこれを超えてくるだろうことは想像に難くないけれど、今まで常に後塵(こうじん)を拝してきたM3にパワーで勝ったということは、アルファ・ロメオ・ファンにとってはたまらない話だ。
しかしクアドリフォリオで特筆したいのは、そんな数字比べすら、どうでもよくなってしまうほど気持ち良い走りである。普通、510psものパワーを持つ後輪駆動車ならその足まわりはガッチリと固められ、乗り味も骨太な安定志向となっているはず。しかしクアドリフォリオの乗り心地は、上質なスプマンテのごとく軽い。重厚だけど、軽やかなのだ。
それは新開発のシャシーによって、引き締められた足まわりがきちんと動くからだと思う。今回のような市街地ではその作動幅も少ないが、それでも短いストロークのなかでアシがよく動くから、乗り心地は決して悪くない。電動パワーステアリングはドイツ車慣れしたユーザーには効き過ぎなように感じられるかもしれないが、ギア比もクイック過ぎず適当で、この身軽さに拍車をかけている。
そしてそこから刹那的にアクセルを踏み込んでも、リアホイールがのたうち回らないのも素晴らしい。リアのマルチリンクサスやブッシュがそのパワーを確実に受け止め、電子制御式LSDがそれを確実にトラクションへと変えてくれるのだろう、ドライバーは臆(おく)することなく、むしろ喜々としてこのハイパワーFRを楽しむことができるのだ。
ちなみに筆者はアルファ・ロメオのテストコースである“バロッコ”で、思い切りこのパワーを解放した。ハイパワーFR車にありがちな、偏平タイヤの急激なグリップ抜けによる挙動変化がなく、それでいて徹頭徹尾アンダーステア的なガンコさもないそのボディーワークは、まさにスポーツセダンのお手本であり、姿勢制御も自由自在。往年のジュリアを名乗るにふさわしい内容に仕上がっていた。
しかし普通に街中を走らせているだけでも、何かこう、血湧き肉躍るような楽しさがあるのがクアドリフォリオの素晴らしさである。またその熱がフッと冷めても、極めてクールに気取れる快適さを持っているのは、伊達(だて)を忘れないイタリアならではだと思う。
確かにこれまでのアルファ・ロメオから考えると、1132万円というプライスはとりわけ高価だ。しかしそれでもBMW M3(1185万円)よりはほんの少しだけ安いし、「ポルシェ911カレラ」の一番安価なベーシックモデル(1244万円)でさえも、さらに112万円足さないと買えない。対してクアドリフォリオは、普段使いが十分にできる4ドアセダンであるうえに、その走りは抜群に楽しい。
これでクーペでも出て、なおかつ「GTA」なんて名乗っちゃったりしたら、どうなっちゃうんだろう! アルファ・ロメオの華麗なカムバックにブラーボ! である。
(文=山田弘樹/写真=田村 弥/編集=竹下元太郎)
【スペック】
全長×全幅×全高=4635×1865×1435mm/ホイールベース=2820mm/車重=1710kg/駆動方式=FR/エンジン=2.9リッターV6 DOHC 24バルブ ツインターボ(510ps/6500rpm、600Nm/2550rpm)/トランスミッション=8AT/燃費=--km/リッター/価格=1132万円
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山田 弘樹
ワンメイクレースやスーパー耐久に参戦経験をもつ、実践派のモータージャーナリスト。動力性能や運動性能、およびそれに関連するメカニズムの批評を得意とする。愛車は1995年式「ポルシェ911カレラ」と1986年式の「トヨタ・スプリンター トレノ」(AE86)。
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