第67回:金髪リーゼントの慧眼
2017.11.14 カーマニア人間国宝への道酒井メカ、その半生
我が赤い玉号「フェラーリ328GTS」の、想像を絶するほど軽いステアリング。その原因を一発で見抜き、軽く直してしまった金髪リーゼントの酒井メカ。彼はいったいどんな男なのか。
酒井「最初は魚屋でしたけど、22でマルカツに入って、そっから20年間いました」
本人は言葉を濁すが、どうも若い頃は魚屋兼暴走族だったらしい。その後外車専門店のメカニックに転身し、20年間キビシイ職場で鍛えられた。
愛車の「ポルシェ911ターボ(タイプ930)」を買ったのは21年前。以後、ポルシェとバイクを愛し続けるカーマニア兼バイクマニアなのである。
コーナーストーンズの整備工場・尾上サービスに転職したのは2年前のことだ。
ユニバーサルジョイントを疑え!
で、彼は数年前、愛車の911ターボに、「ワゴンR」用の電動パワステを取り付けた。
酒井「そん時ステアリングシャフトもいったん抜いたんですけど、取り付けが終わってテキトーにブッ刺したら、あれ、なんか遊びが多いぞって感じになったんです。もっとクイックだったはずなのになーって」
なるほど!
酒井「ラックのガタかなと思って分解したんだけど直んなくて。しょうがなくていろいろやってるうち、ん? ジョイントの位置が違ってる、これかなと思ってそろえたら、直ったんです」
私が「ユニバーサルジョイントの向き」と表記していたのは、2つのユニバーサルジョイントの十字継ぎ手の位置のことだ。
中間軸は両端の継ぎ手が同じ向きになるようにそろえないと、ステアリングの回転速度が変化してギアボックスに伝わってしまう。我が赤い玉号も酒井メカのポルシェターボも、それが原因で中立付近のステアリング速度がスローになり、遊びが大きいように感じる状態になっていた。
まさかの生まれつき!?
この原理に関しては、正直私の説明能力を超えているので、ウィキペディア等で調べてみてください! ちなみにウィキの「自在継手」の項には、「2つのカルダンジョイントを一列につなげば、両ジョイントの偏位角度が等しい場合に限り、速度変動を補正できる」と書いてあります。押忍。
オレ「ステアリングシャフトを抜くことって、あんまりないわけだよね?」
酒井「そっすねぇ。ステアリングギアボックスをオーバーホールする時くらいじゃないですか」
オレ「じゃ俺の328は、どっかの時点でそれをやって、間違って90度ズレでブッ刺しちゃって、そのまんまだったんだ!」
酒井「でも、赤いペンキで印が付いてて、それは合ってたんですよ」
オレ「え?」
酒井「ペンキの印が合ってたんで、あれ違ったかなって思ったんだけどそうでした。あの印って、ひょっとして最初からかも知んないっす。わかんないすけど」
なななな、なんと!
つまり、我が赤い玉号の激軽ステアリングは、マラネッロのフェラーリ本社工場出荷段階から狂っており、30年間そのままだったのかもしれないのだ! ガーンガーンガーン!!
(文=清水草一/写真=清水草一、池之平昌信/編集=大沢 遼)

清水 草一
お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。
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