日産リーフG(FF)
これなら買える 2017.11.28 試乗記 2010年の登場以来、電気自動車(EV)普及の立役者として販売されてきた「日産リーフ」。7年ぶりのフルモデルチェンジで登場した新型は、従来型よりも未来感覚あふれる走りと、意外なほどの快適性や静粛性を味わわせてくれた。見た目はより一般的に
「2016年には世界150万台レベルまで普及させる」と、当時のカルロス・ゴーンCEOの言葉は勇ましかったが、残念ながら初代日産リーフの販売はもくろみほどには伸びなかった。それを受けて登場した2世代目の狙いは、初代で果たせなかった普及、量販への再チャレンジである。そのため不評だったポイントが徹底的に見直されると同時に、EVならではのもの、先進性を感じさせるものなど、多くの新機軸が採用されている。
不評で見直された部分としてまず筆頭に記すべきは、一目瞭然のデザインだろう。先進性もスタイリッシュさも欠いた先代のデザインは、それだけで売れない理由としては十分だったというのが筆者の見立て。それが、未来感のようなものはやや後退したかもしれないが、明らかにより広く受け入れやすいものとなった。
一方、インテリアも従来の2段式メーターをやめて、より一般的なデザインになっているが、さすがにこちらは没個性という感が否めない。せめてクオリティーがもう少し高ければいいのだが、ダッシュボードは全面ハードパッドだし、ドアトリムはガラスとともに先代からの流用。ブラックでは暗く沈んだ感じだから、せめて明るいエアリーグレーを選びたい。
大きく変わったスペック
ともあれ、個性を狙ってもハズしてしまえば受け入れられない。それなら、仮にキャラクターは薄くても、多くの人に嫌われないデザインを。おそらく狙いは、そんなところに違いない。
カタチはそんな風に受け入れられるとして、問題は中身だ。EVへの懸念として筆頭に挙げられるのは航続距離。新型リーフはJC08モードで、先代後期型の280kmから一気に400kmへの飛躍的な向上を実現した。デビュー当時のリーフは航続距離200kmだったのだから、実に倍である。
そのためリチウムイオンバッテリーは、従来の30kWhから同サイズのままで40kWhへと容量を拡大している。充電所要時間は、急速充電で「80%まで40分」となる。
一方、新技術で注目されるのは、まずe-Pedalである。「ノートe-POWER」に採用された「e-POWER DRIVE」と同様、アクセルペダルをオフにすると減速Gを発生し、ブレーキペダルをほとんど使わないワンペダルドライブを可能とするこのシステムは、減速Gがさらに高められ、さらには油圧ブレーキも併用することで、より緻密な制御、完全停止に停止保持までできるようになった。
室内の快適性に驚く
そして日産車では3モデル目となる、「プロパイロット」も搭載された。これは設定速度のキープ、前走車への追従だけでなく、ステアリングのアシストによる車線キープも行うことで、高速道路での巡航や渋滞時などの運転負担を軽減する。また、画面上で駐車したい位置を指定するだけで、ギアチェンジやパーキングブレーキまで含めたすべての操作を自動で行う、自動駐車機能の「プロパイロット パーキング」も用意された。
もっとも、これら飛び道具が無くても走りっぷりは十分、インパクトがあると言っていい。驚くのは快適性の高さ。静粛性が非常に高く、またサスペンションが非常にソフトで、ふんわりとした乗り心地なのだ。特に印象的なのは、後席。スペースの広さもあって、まさにひとクラス上の感覚を味わえる。
ただし、乗り心地に振ったセッティングのおかげで、フットワークのキビキビ感は若干スポイルされてしまった。走りの楽しさでリーフにほれていた人にとっては、ちょっと残念なところかもしれない。
動力性能は、まったく不満を感じさせない。最高出力150ps、最大トルク320Nmとスペックは大幅に向上しており、加速は力強い。アクセル操作に対する力の出方はよく吟味されていて、発進は動き出しから滑らかだし、必要とあれば即座に、意のままに力を引き出すこともできる。高い静粛性、シームレスな加速感と相まって、とても上質で、そしてこれまで以上に未来感覚の走りを楽しめるのである。
“走りの幅”が広がった
e-Pedalをオンにしていると、アクセルオフでの減速度は最大で0.2Gにも達する。また加速も強力だから、ノートe-POWERよりも慣れるのに時間が必要な感はあるものの、負担は確実に減るし、何より楽しい。e-Pedalはオン/オフ可能で、しかもDレンジとBレンジが選べるから、好みで、あるいは状況に応じて、望むドライバビリティーを自分で見つけ出すことが可能だ。
高速道路ではプロパイロットも試した。特に「セレナ」との比較で感じるのは、直進の制御が非常に洗練されたこと。あるいは制御以前に、クルマ自体の直進性、路面追従性のよさの方が貢献度は大きいかもしれない。安心して使えるシチュエーションがさらに広がっているのは間違いないだろう。
日産本社にて新型リーフの試乗車を借用した時、バッテリーは100%充電の状態で航続可能距離は257kmと表示されていた。400kmを期待していると肩すかしをくらうかもしれないが、実際にはこれだけ走るならば日常の利便性は相当に高まる。東京~箱根間の往復ぐらいなら途中での充電は不要だし、やはり東京から、浜名湖まで休憩も挟まずノンストップで行くということはめったにないだろうと考えれば、今までリーフが購入候補に挙がらなかった人でも、検討の余地アリと考えるに違いない。もちろん従来のユーザーにしてみたら、迷う理由はないように思える。
しかも何より世の中、今はまさにEVブームである。今度こそリーフ、思惑通りのセールスを実現できるのではないだろうか?
(文=島下泰久/写真=田村 弥/編集=関 顕也)
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
テスト車のデータ
日産リーフG
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4480×1790×1540mm
ホイールベース:2700mm
車重:1510kg
駆動方式:FF
モーター:交流同期電動機
最高出力:150ps(110kW)/3283-9795rpm
最大トルク:320Nm(32.6kgm)/0-3283rpm
タイヤ:(前)215/50R17 91V/(後)215/50R17 91V(ダンロップ・エナセーブEC300)
一充電最大走行可能距離:400km(JC08モード)
交流電力量消費率:120Wh/km(JC08モード)
価格:399万0600円/テスト車=425万9514円
オプション装備:ブリリアントホワイトパール<3P>+オーロラフレアブルーパール<P>2トーン<特別塗装色>(7万0200円)/寒冷地仕様<後席クッションヒーター+後席ヒーター吹き出し口+不凍液濃度アップ[50%]>(2万7000円) ※以下、販売店オプション ドライブレコーダー(3万9054円)/デュアルカーペット<フロアカーペット[消臭機能付き]、ブラック+ラバーマット>寒冷地仕様車用(3万3800円)/トノカバー(1万9800円)/LEDフォグランプ(6万8962円)/ウィンドウはっ水12カ月<フロントウィンドウ1面+フロントドアガラス2面 はっ水処理>(1万0098円)
テスト車の年式:2017年型
テスト開始時の走行距離:1311km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(8)/山岳路(0)
テスト距離:147.0km
消費電力量:--kWh
参考電力消費率:6.2km/kWh(車載電費計計測値)

島下 泰久
モータージャーナリスト。乗って、書いて、最近ではしゃべる機会も激増中。『間違いだらけのクルマ選び』(草思社)、『クルマの未来で日本はどう戦うのか?』(星海社)など著書多数。YouTubeチャンネル『RIDE NOW』主宰。所有(する不動)車は「ホンダ・ビート」「スバル・サンバー」など。
-
BYDシールAWD(4WD)【試乗記】 2026.1.17 BYDのBEVサルーン「シール」の機能アップデートモデルが登場。強化のポイント自体はそれほど多くないが、4WDモデルの「シールAWD」は新たに電子制御式の可変ダンパーを装備したというから見逃せない。さまざまなシーンでの乗り心地をチェックした。
-
マツダCX-60 XDドライブエディション ナッパレザーパッケージ(4WD/8AT)【試乗記】 2026.1.14 「マツダCX-60」に新グレードの「XDドライブエディション ナッパレザーパッケージ」が登場。スポーティーさと力強さ、上質さを追求したというその中身を精査するとともに、国内デビューから3年を経た“ラージ商品群第1弾”の成熟度をチェックした。
-
カワサキKLX230シェルパS(6MT)【レビュー】 2026.1.13 その出来には“セロー乗り”も太鼓判!? カワサキのトレイルバイク「KLX230シェルパ」に、ローダウン仕様の「シェルパS」が登場。安心の足つき性で間口を広げた一台だが、実際に走らせてみると、ストリートでも楽しめるオールラウンダーに仕上がっていた。
-
メルセデス・ベンツC220dラグジュアリー(FR/9AT)【試乗記】 2026.1.12 輸入車における定番の人気モデル「メルセデス・ベンツCクラス」。モデルライフ中にも年次改良で進化し続けるこのクルマの、現在の実力はいかほどか? ディーゼルエンジンと充実装備が魅力のグレード「C220dラグジュアリー」で確かめた。
-
日産ルークス ハイウェイスターGターボ プロパイロットエディション(FF/CVT)【試乗記】 2026.1.10 日産の軽スーパーハイトワゴン「ルークス」がフルモデルチェンジ。「見えない危険が……」のテレビCMでお茶の間をにぎわせているが、走る、曲がる、止まるをはじめとしたクルマ全体としての仕上がりはどうか。最上級グレードをテストした。
-
NEW
クルマの乗り味の“味”って何だ?
2026.1.20あの多田哲哉のクルマQ&A「乗り味」という言葉があるように、クルマの運転感覚は“味”で表現されることがある。では、車両開発者はその味をどう解釈して、どんなプロセスで理想を実現しているのか? 元トヨタのエンジニア、多田哲哉さんに聞いた。 -
NEW
プジョー208 GTハイブリッド(FF/6AT)【試乗記】
2026.1.20試乗記「プジョー208」にマイルドハイブリッド車の「GTハイブリッド」が登場。仕組みとしては先に上陸を果たしたステランティス グループの各車と同じだが、小さなボディーに合わせてパワーが絞られているのが興味深いところだ。果たしてその乗り味は? -
ベントレー・コンチネンタルGTアズール(4WD/8AT)【試乗記】
2026.1.19試乗記ベントレーのラグジュアリークーペ「コンチネンタルGT」のなかでも、ウェルビーイングにこだわったという「アズール」に試乗。控えめ(?)な680PSのハイブリッドがかなえる走りは、快適で満ち足りていて、ラグジュアリーカーの本分を感じさせるものだった。 -
第327回:髪もクルマもナイスファイト!
2026.1.19カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。日産の新型「ルークス」で夜の首都高に出撃した。しっかりしたシャシーとターボエンジンのパワフルな走りに感心していると、前方にスーパーカーの姿を発見。今夜の獲物は「フェラーリ・ローマ」だ! -
日本で売れるクルマはあるのか!? 最新の“アメリカ産ニホンシャ”を清水草一が検証する!
2026.1.19デイリーコラムアメリカからの外圧による制度変更で、北米生産モデルの国内導入を決めたトヨタ。同様に、今後日本での販売が期待できる「海外生産の日本車」には、どんなものがあるだろうか? 清水草一が検証してみた。 -
フェラーリ12チリンドリ(後編)
2026.1.18思考するドライバー 山野哲也の“目”レーシングドライバー山野哲也が「フェラーリ12チリンドリ」に試乗。前編では伝家の宝刀であるV12エンジンを絶賛した山野。後編ではコンビを組むシャシーの印象を余すところなく聞いてみた。























































