ポルシェ718ボクスターGTS(MR/6MT)/718ケイマンGTS(MR/7AT)
名実ともに最強モデル 2018.01.09 試乗記 4気筒ターボエンジンを搭載するポルシェのスポーツカー「718ボクスター/718ケイマン」に、新たな高性能モデル「GTS」が登場。スペックだけでは伝わらない走りの質を、スペイン南部の都市・マラガから報告する。最もパワフルなフラット4
自然吸気エンジンを搭載するモデルの中で、最もスポーティーなバージョン―― GTSというグレード名が与えられたポルシェをそのように簡潔に紹介できる時代も、あっという間に過去のものになってしまった。
今や、「911」の「GT3」など、ごく一部を除いて、すべてのポルシェ車が“ターボ付き”という時代。量販モデルのハイパフォーマンス版である「S」グレードをベースに仕立てられるGTSの心臓も、当然のごとくターボ付きへと改められて久しいのだ。
ターボ付きの水平対向4気筒エンジンが搭載された初めてのミドシップポルシェ、すなわち718ボクスター/718ケイマンに新設定されたGTSグレードも、もちろんその例外ではない。
ベースとなるSグレード用エンジンの350ps/6500rpmというスペックに対して、GTS用のものが同じ6500rpmで発生する最高出力は365ps。
「その15psの上乗せ分は、専用デザインのインテークチャンバーによる部分が7psで、8psはコンプレッサー径を64mmから68mmへと拡大させたことで得られたものです」とは、国際試乗会に同席したエンジニア氏の弁。資料には紹介されていないマル秘コメントだ。
独自のドレスアップも見どころ
こうして最高出力を上乗せした心臓を搭載すると同時に、やはりSグレードではオプション設定にとどまる各種の「走りのアイテム」を標準装備化することで、より高い運動性能の獲得に挑むのも、GTSグレードを仕立てる際の常とう手段。
かくして、電子制御式の可変減衰力ダンパー「PASM」を筆頭に、機械式LSDを含むトルクベクタリングシステム「PTV」、さらにはダイナミックトランスミッションマウントや、MT仕様でのシフトダウン時のブリッピング機能などを含むドライブモード可変システム「スポーツクロノパッケージ」など、さまざまなアイテムが標準装備される。
同時に、シリーズ中の新たなフラッグシップという役割を担うこともあり、内外装に独自のメイクアップが施されるのも、GTSならではの流儀だ。
718ボクスターGTSと718ケイマンGTSのエクスエリアは、前方へと突き出したリップ付きのフロントエプロンや、Sグレード比で1インチプラスになるブラックの20インチホイール、内部がブラック仕上げになったバイキセノン式ヘッドライト、スモーク処理が施されたリアコンビネーションランプが特徴。さらには、ブラックのセンターテールパイプやマットブラック塗装のリアエプロンなどが外観上の目を引くポイントだ。
インテリアでは、シートを筆頭に各部にアルカンターラを用いた独自のフィニッシュが、スポーティーさとともにゴージャスな雰囲気を醸し出している。
しなやかさと軽やかさに感心
今回の国際試乗会のプログラムは、ボクスターを一般道で試し、ケイマンは1周が5km超という本格的な高速サーキット「アスカリ・レースリゾート」のみを走行するというもの。個人的には、ぜひともケイマンも一般道でチェックしてみたかったが、残念ながらそれはかなわなかった。
まずホテルからサーキットまでの、80kmあまりの区間をテストドライブしたのは、低速域での操舵力を低減する「パワーステアリングプラス」がオプション装着されたボクスターのMT仕様。重めのクラッチを踏み込み、1速ギアをチョイスしてクラッチをエンゲージしていくと、さしてアクセルペダルを踏み込まずともスルスルとスタートした。Sグレード以上のハイチューニングが施されたとはいえ、その出力特性に神経質さは皆無だ。
20インチシューズを履いているとは信じられないしなやかな乗り味には走り始めるやすぐに感心させられたのだが、それもいまでは「ポルシェの作品なら想定内」と言えるもの。そんな軽快なフットワークと、前出のパワーステアリングプラスがもたらす「タイトな低速ターンでも軽やかなハンドリング感覚」に、スタート早々にして魅了させられてしまった。
ノーマルモードでも低音の効いた排気サウンドは、やはりSグレードではオプションながらGTSには標準装備としておごられるスポーツエキゾーストシステムの働きもあってのもの。個人的には、ちょっと爽やかとは言いかねる“こもり感”がやや気になったものの、スポーツ/スポーツプラスの走行モードを選択した際の、アクセルオフのたびに響きわたる破裂音を好ましいと思うスポーツ派ドライバーも少なくないだろう。
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ターボとATの制御が絶妙
より強化された心臓が生み出すシャープかつ強力な動力性能は、連続してフルアクセルを与えることが許された、ケイマンのサーキットセッションで堪能することになった。
こちらで乗ったのは、ポルシェがPDKと呼んでいるDCT(デュアルクラッチトランスミッション)仕様。このトランスミッション、ステアリングホイールに設けられたダイヤルでスポーツプラスのモードを選択すると、サーキットスピードでもほとんど「パドル操作要らず」の的確なシフトアップ/ダウンを繰り返すことに、あらためて感心させられた。
ちなみに6段のMT仕様と比べた場合、シフト時の駆動力ロスが排除されると同時に、7段のこちらはより細かなクロスレシオが実現されているというアドバンテージがある。サーキット走行では「ステアリング操作に集中できる」という決定的なメリットが得られるだけでなく、加速力自体も着実にPDKがMTを上回ることになるわけだ。
一般道の走行ではターボラグが気にならないという点を確認できたが、高回転域に向けての頭打ち感が認められないのも、良い意味で「ターボらしさ」を意識させられない一因だ。こうしたフィーリングは、まさに、「コンプレッサー側を大容量化した可変ジオメトリー式」という凝ったターボチャージャーの威力が発揮された部分だろう。さらに言えば、ボクスター以上と感じられるボディーの剛性感が、より正確なハンドリングにつながっていることも実感できた。
そんな718ケイマンGTS(のPDK仕様)は、ニュルブルクリンクの北コースを7分40秒のラップタイムで駆け抜けるという。先代モデルのベストラップよりも13秒、現行Sグレードよりも2秒の短縮というこの値は、3.8リッター自然吸気エンジンにMTを組み合わせた981型「ケイマンGT4」、そして997後期型の「911 GT3」と同一(!)なのだ。まごうかたなき、最強にして最速のボクスター/ケイマンの誕生である。
(文=河村康彦/写真=ポルシェ/編集=関 顕也)
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テスト車のデータ
ポルシェ718ボクスターGTS
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4379×1801×1272mm
ホイールベース:2475mm
車重:1375kg
駆動方式:MR
エンジン:2.5リッター水平対向4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:6段MT
最高出力:365ps(269kW)/6500rpm
最大トルク:420Nm(42.8kgm)/1900-5000rpm
タイヤ:(前)235/35ZR20 88Y/(後)265/35ZR20 95Y(ピレリPゼロ)
燃費:9.0リッター/100km(約11.1km/リッター、欧州複合モード)
価格:1032万円/テスト車=--円
オプション装備:--
※車両本体価格は日本市場でのもの。
テスト車の年式:2017年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター
ポルシェ718ケイマンGTS
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4393×1801×1286mm
ホイールベース:2475mm
車重:1405kg
駆動方式:MR
エンジン:2.5リッター水平対向4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:6段AT
最高出力:365ps(269kW)/6500rpm
最大トルク:430Nm(43.8kgm)/1900-5000rpm
タイヤ:(前)235/35ZR20 88Y/(後)265/35ZR20 95Y(ピレリPゼロ)
燃費:8.2リッター/100km(約12.2km/リッター、欧州複合モード)
価格:1053万2000円/テスト車=--円
オプション装備:--
※車両本体価格は日本市場でのもの。
テスト車の年式:2017年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:トラックインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター

河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
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