フォルクスワーゲン・ポロGTI(FF/6AT)
これぞ“GTI”のあるべき姿 2018.02.27 試乗記 間もなく日本に導入される6代目「フォルクスワーゲン・ポロ」。そのハイパフォーマンスバージョンである「GTI」に、フランスのニースで試乗した。ライバルに肩を並べる高い動力性能と、日常性を犠牲にしない洗練されたドライブフィールをリポートする。稀有な存在だった従来モデル
もうすぐ日本でも正式にデビューする新型ポロは、先の試乗記でも記した通り、今日的なBセグメントのど真ん中のサイズ、つまり日本的にいうところの3ナンバーサイズへと成長する。これによって後席居住性や積載能力などは激変。そして走りのクオリティーも強烈に洗練されたものとなった。
が、それを知るほどにあらためて思うのは、間もなく旧型となるポロのダイナミクスの素晴らしさだ。低速域ではちょっと粗いところもあるけれど、速度が乗ると共に伝わってくるクルマの動きの安定ぶりたるや、「トヨタ・ヴィッツ」や「ホンダ・フィット」に近い車寸とはにわかには信じがたいほどだった。多少狭かろうがにぎやかだろうが、5ナンバー寸にして破格の安心感という魅力は何にも代えがたい。そういう気持ちでポロを選んできた向きもいるだろう。
そこにスポーティネスへの期待値が加われば、小さいことはさらに意味を持つことになる。すなわち先代ポロGTIは5ナンバーサイズにして192psのハイパワーエンジンを積んだ、市中を見回せば意外や稀有(けう)なキャラクターを持つホットハッチだった。
新型のポロGTIはまず基準車の拡大化に準じて車格はBセグメントのど真ん中に入っている。そして搭載されるエンジンは2リッターに拡大……と、裏返せば「ルノー・クリオ(日本名:ルーテシア)R.S.」辺りとガチで比較をされても言い訳はできないパッケージになったわけだ。その中でこのクルマが供してくれる個性は、長きにわたるGTIの歴史に照らしてもまったくブレのないものだった。
ライバルに比肩する動力性能を獲得
新型ポロGTIのサスは形式的には基準車と同じくマクファーソンストラット&トーションビームをベースとするが、ロアAアームやトレーリングアーム、ブッシュやサブフレームマウントなどはパワーアップに合わせて強化され、前後にはスタビライザーが装着されている。
サスのセットアップは2種類が用意される。専用レートのスプリングやガス封入ダンパーが採用され、基準車に対して車高が15mm低くなるスポーツサスが標準仕様となるほか、オプションとして2段階のレート変更が可能となるアダプティブダンパーの採用に加え、前アンチロールバーやステアリングロッド、リアアクスルのコントロールロッドなどが強化されたスポーツセレクトサスが選択可能だ。試乗車はこのスポーツセレクトサスに加えてオプションの18インチタイヤ&ホイールを履いていたが、標準仕様は17インチとなる。ちなみに、日本仕様は今年後半の導入予定ということもあって、仕様詳細は未定だという。
搭載されるエンジンは2リッターの4気筒直噴ターボで、ミラーサイクルの燃焼概念を採り入れた第3世代の「EA888」系となる。その圧縮比は11.65とターボエンジンとしてはかなり高く、最高出力は200psとやや控えめながら最大トルクは320Nmを1500rpmから発生。そして燃費は欧州複合モードで5.9リッター/100km、CO2排出量は134g/kmと、環境性能との折衷点も非常に高いところにあるといえるだろう。
ちなみに、搭載されるトランスミッションは当初は6段DSGのみ。来年には6段MTも追加される予定とのことだが、取りあえず6段DSGの側で公表された動力性能を挙げると、0-100km/h加速が6.7秒、最高速が237km/hとなっている。これはルノー・クリオR.S.や「フォード・フィエスタST」といったライバルと拮抗(きっこう)するもので、「ゴルフGTI」になぞらえれば6代目のそれよりも速い。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
何かをガマンする必要はない
テーマカラーである赤を差し色にした内外装のしつらえは、メーターまわりのオーナメントパネルにややうるささを感じるが、総じて派手すぎない常識的な範囲に収まっており、かつその質感は猛烈に高い。インフォテインメント系やADAS(先進運転支援システム)系装備の充実度も含め、スタティックな商品力はライバルに対して一頭地を抜いている。シートはサポートの盛り上がりが穏やかで乗降性も妨げず、掛け心地もストロークが効いており……と、日常性をいじめていないのもフォルクスワーゲンのGTIらしいところだ。
試乗車は足まわり的に最もハードな仕様となっているはずだが、低速域からの乗り心地はそれをにわかには感じさせないほどに洗練されている。目に見えるほど大きな凹凸や左右輪が同時に通過する目地段差でも、足元がバタつくような動きや鋭い入力は奇麗に丸められており、小さなホットハッチというところから想像するがさつさはみじんもない。
と、そういう乗り方をしていてふと気づくのは静粛性の高さだ。パーシャルスロットルで負荷を掛けずに走っている限りはエンジン側やエキゾースト側からの音量も適切で、大径低偏平のタイヤを履いていながらロードノイズもしっかり抑えられている。湿式クラッチを用いるDSGの変速マネジメントも洗練されており、加減速時のシフトショックもとても滑らか……と、常識的な速度域で走るに不快さを感じる事態はおよそ考えられない。
ホットハッチとはこういうことさ
コーナリングのマナーは徹底的にニュートラルで、追い込んでいくほどにゆっくりとアンダー感が増していくというセオリー通りの作り込みだ。ESCの各輪ブレーキ制御を活用して旋回力を高めるXDSの制御も穏やかで、中高速コーナーではその介入をやすやすと感じることはない。とにかく際立つのは潔癖なまでに足まわりの接地や追従を突き詰めていることで、ライドフィールはこの車格にしてゴルフGTIをも食ってしまいそうな大物感がある反面、その小ささを利してのはじけるような快活さみたいなところは強く打ち出されてはいない。ドライブモードをスポーツの側にしてみても、ステアリングやアクセルのレスポンスは唐突感もなく常識的なところに収められている。
基準車に迫る静粛性、ほぼほぼ劣らぬ実用性、そして同等以上の動的質感を備えることを前提に、ドライビングファンを前面に押し出したライバルに劣らぬダイナミクスを実現する。GTIのセオリーに極めて忠実に仕立てられたポロGTIの魅力は、確かに刺激に富んだものではない。が、偏狭でも許されるスポーツカーとは違い、生活を共にするパッケージだからこそ日常と非日常がシームレスにつながっていなければ意味がないということをフォルクスワーゲンはよく知っている。ホットハッチのあり方とは、すなわちそういうことだということを、だ。
(文=渡辺敏史/写真=フォルクスワーゲン・グループ/編集=堀田剛資)
拡大 |
拡大 |
拡大 |
テスト車のデータ
フォルクスワーゲン・ポロGTI
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4067×1751×1438mm
ホイールベース:2549mm
車重:1355kg
駆動方式:FF
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:6段AT
最高出力:200ps(147kW)/4400-6000rpm
最大トルク:320Nm(32.6kgm)/1500-4400rpm
タイヤ:(前)215/40ZR18 89Y/(後)215/40ZR18 89Y(ミシュラン・パイロットスポーツ4)
燃費:5.9リッター/100km(約16.9km/リッター、NEDCモード)
価格:--円/テスト車=--円
オプション装備:--
※数値は欧州仕様のもの。
テスト車の年式:2018年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(プレミアムガソリン)
参考燃費:--km/リッター
拡大 |

渡辺 敏史
自動車評論家。中古車に新車、国産車に輸入車、チューニングカーから未来の乗り物まで、どんなボールも打ち返す縦横無尽の自動車ライター。二輪・四輪誌の編集に携わった後でフリーランスとして独立。海外の取材にも積極的で、今日も空港カレーに舌鼓を打ちつつ、世界中を飛び回る。
-
BYDシールAWD(4WD)【試乗記】 2026.1.17 BYDのBEVサルーン「シール」の機能アップデートモデルが登場。強化のポイント自体はそれほど多くないが、4WDモデルの「シールAWD」は新たに電子制御式の可変ダンパーを装備したというから見逃せない。さまざまなシーンでの乗り心地をチェックした。
-
マツダCX-60 XDドライブエディション ナッパレザーパッケージ(4WD/8AT)【試乗記】 2026.1.14 「マツダCX-60」に新グレードの「XDドライブエディション ナッパレザーパッケージ」が登場。スポーティーさと力強さ、上質さを追求したというその中身を精査するとともに、国内デビューから3年を経た“ラージ商品群第1弾”の成熟度をチェックした。
-
カワサキKLX230シェルパS(6MT)【レビュー】 2026.1.13 その出来には“セロー乗り”も太鼓判!? カワサキのトレイルバイク「KLX230シェルパ」に、ローダウン仕様の「シェルパS」が登場。安心の足つき性で間口を広げた一台だが、実際に走らせてみると、ストリートでも楽しめるオールラウンダーに仕上がっていた。
-
メルセデス・ベンツC220dラグジュアリー(FR/9AT)【試乗記】 2026.1.12 輸入車における定番の人気モデル「メルセデス・ベンツCクラス」。モデルライフ中にも年次改良で進化し続けるこのクルマの、現在の実力はいかほどか? ディーゼルエンジンと充実装備が魅力のグレード「C220dラグジュアリー」で確かめた。
-
日産ルークス ハイウェイスターGターボ プロパイロットエディション(FF/CVT)【試乗記】 2026.1.10 日産の軽スーパーハイトワゴン「ルークス」がフルモデルチェンジ。「見えない危険が……」のテレビCMでお茶の間をにぎわせているが、走る、曲がる、止まるをはじめとしたクルマ全体としての仕上がりはどうか。最上級グレードをテストした。
-
NEW
ベントレー・コンチネンタルGTアズール(4WD/8AT)【試乗記】
2026.1.19試乗記ベントレーのラグジュアリークーペ「コンチネンタルGT」のなかでも、ウェルビーイングにこだわったという「アズール」に試乗。控えめ(?)な680PSのハイブリッドがかなえる走りは、快適で満ち足りていて、ラグジュアリーカーの本分を感じさせるものだった。 -
NEW
第327回:髪もクルマもナイスファイト!
2026.1.19カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。日産の新型「ルークス」で夜の首都高に出撃した。しっかりしたシャシーとターボエンジンのパワフルな走りに感心していると、前方にスーパーカーの姿を発見。今夜の獲物は「フェラーリ・ローマ」だ! -
NEW
日本で売れるクルマはあるのか!? 最新の“アメリカ産ニホンシャ”を清水草一が検証する!
2026.1.19デイリーコラムアメリカからの外圧による制度変更で、北米生産モデルの国内導入を決めたトヨタ。同様に、今後日本での販売が期待できる「海外生産の日本車」には、どんなものがあるだろうか? 清水草一が検証してみた。 -
フェラーリ12チリンドリ(後編)
2026.1.18思考するドライバー 山野哲也の“目”レーシングドライバー山野哲也が「フェラーリ12チリンドリ」に試乗。前編では伝家の宝刀であるV12エンジンを絶賛した山野。後編ではコンビを組むシャシーの印象を余すところなく聞いてみた。 -
BYDシールAWD(4WD)【試乗記】
2026.1.17試乗記BYDのBEVサルーン「シール」の機能アップデートモデルが登場。強化のポイント自体はそれほど多くないが、4WDモデルの「シールAWD」は新たに電子制御式の可変ダンパーを装備したというから見逃せない。さまざまなシーンでの乗り心地をチェックした。 -
新生ノートンがいよいよ始動! 名門の復活を担う次世代モーターサイクルの姿に迫る
2026.1.16デイリーコラム英国のモーターサイクル史にあまたの逸話を残してきた名門、ノートンが、いよいよ再始動! その数奇な歴史を振り返るとともに、ミラノで発表された4台の次世代モデルを通して、彼らが思い描く未来像に迫った。















































