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トライアンフ・ストリートトリプルRS(MR/6MT)

立ち技系の怖いヤツ 2018.05.01 試乗記 田村 十七男 従来モデルから大幅なパワーアップと軽量化を実現した「トライアンフ・ストリートトリプル」。“ストリートファイター”の草分け的存在である3気筒ロードスターが遂げた進化に、恐ろしいまでに律義なトライアンフの“バイク造り”を感じた。
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その姿勢はファイティングスタイル

まごうことなき立ち技系の達人。そう感じたのは、シートにまたがった瞬間だ。小さなちゃぶ台を思わせる丸いフューエルタンク。その幅が短い分、ハンドルは手元に、かつ高めに迫ってくる。そこに両手を置いた姿勢は、相手の懐に詰め寄った途端、上下左右どこへでも力強く拳を打ち込めるファイティングスタイル以外のなにものでもない。だからこう思った。おっかねぇなあコイツ……。

トライアンフのストリートトリプルRS。ジャンルに落とし込めばストリートファイター。まずはその名称が先入観と緊張感を膨張させる。そもそもは「街のケンカ屋」という意味でしょ。とまぁ、その辺はジャンル名に多少の過激さを含ませる遊び心と理解するけれど、トライアンフの場合、そういうおっかねぇモデルを淡々と仕込み続けているのである。

調べて分かったことだが、元はカスタムマニア間の呼称だったストリートファイターおよびそのスタイルを、メーカーとして真っ先に扱ったのがトライアンフだったらしい。片や「ボンネビル」という古典的なオートバイを今も提供しながら、その裏(?)では市中最強のファイターを育成し続けるなんて、いったいどういうことなんだろう。

元祖“ストリートファイター”こと「スピードトリプル」の弟分として、2007年にデビューした「ストリートトリプル」。現行モデルは2017年に発表・発売された。
元祖“ストリートファイター”こと「スピードトリプル」の弟分として、2007年にデビューした「ストリートトリプル」。現行モデルは2017年に発表・発売された。拡大
メーターの代わりに装備される、フルカラーの5インチTFTスクリーン。表示のスタイルは全6種類で、ラップタイマー機能も搭載されている。
メーターの代わりに装備される、フルカラーの5インチTFTスクリーン。表示のスタイルは全6種類で、ラップタイマー機能も搭載されている。拡大
トライアンフ製ストリートファイターの特徴ともいえる、凝縮感のある前のめりなサイドビュー。今回は「ストリートトリプル」の中でも、最上級グレードの「RS」に試乗した。
トライアンフ製ストリートファイターの特徴ともいえる、凝縮感のある前のめりなサイドビュー。今回は「ストリートトリプル」の中でも、最上級グレードの「RS」に試乗した。拡大
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体を絞りつつパワーアップも実現

2007年のデビューから10年後の、昨年(2017年)初頭にブラッシュアップが図られたストリートトリプルRS。最大の特徴は、トリプルという名前が示す通り、他ではあまり見かけない並列3気筒エンジンの採用だ。トライアンフはこの3気筒がよほど好きらしく、スピードトリプルが属するロードスターグループの他、アドベンチャー&ツーリングの「タイガー」系、果ては2.3リッターの「ロケットIII」にも、というかバーチカルツインのボンネビル以外で使いまくっている。

この3気筒、感想を求められると緊張するが、感覚的には並列4気筒のモーター感に寄っている。ただし4気筒ほど直線的にパワーが上昇するわけではなく、立ち技に欠かせない下半身の粘りと呼ぶべきタメもあって……、つまりは独特なのです。

先代より排気量で90cc増の765ccとなり、馬力も16%アップの123psを実現したそうで、いやもう、これで十分以上に街中で戦える、いや走りが楽しめる。この上には1050ccで150psの元祖ストリートファイター「スピードトリプル」が控えているが、同部屋なので同じ土俵に上がらなくてすむ。というか、これまた先代より軽くなり階級を下げた感のある乾燥重量166kgの締まった車体との相性を考えれば、765ccのほうが軽快さを楽しめるのではないかと思った。決して目の上のたんこぶ的横綱にビビったわけではなく。

新エンジンの採用によるパワーアップに加え、軽量化も実現した新型「スピードトリプル」。乾燥重量は166kgに抑えられている。
新エンジンの採用によるパワーアップに加え、軽量化も実現した新型「スピードトリプル」。乾燥重量は166kgに抑えられている。拡大
765ccの排気量を持つ新型の並列3気筒エンジン。グレードによって最高出力が異なり、「S」は113ps、「R」では118ps、「RS」では123psを発生する。
765ccの排気量を持つ新型の並列3気筒エンジン。グレードによって最高出力が異なり、「S」は113ps、「R」では118ps、「RS」では123psを発生する。拡大
縦方向のねじり剛性を高めるべく採用された、湾曲したスイングアームが目を引くリアの足まわり。「ストリートトリプルRS」にはピレリのハイグリップタイヤ「ディアブロ スーパーコルサSP」が装着される。
縦方向のねじり剛性を高めるべく採用された、湾曲したスイングアームが目を引くリアの足まわり。「ストリートトリプルRS」にはピレリのハイグリップタイヤ「ディアブロ スーパーコルサSP」が装着される。拡大
ブレーキは、前がφ310 mmのダブルフローティングディスクと4ピストンラジアルマウントキャリパー、後ろがφ220mmの固定式シングルディスクとシングルピストンスライディングキャリパーの組み合わせとなっている。
ブレーキは、前がφ310 mmのダブルフローティングディスクと4ピストンラジアルマウントキャリパー、後ろがφ220mmの固定式シングルディスクとシングルピストンスライディングキャリパーの組み合わせとなっている。拡大
サスペンションの仕様は本文の通り。フロントはプリロードと減衰特性の、リアは段階的なプリロードの調整が可能だ。
サスペンションの仕様は本文の通り。フロントはプリロードと減衰特性の、リアは段階的なプリロードの調整が可能だ。拡大
走りに関連する充実した装備も「ストリートトリプルRS」の特長。5種類の制御モードを持つ切り替え式のトラクションコントロールや、“クラッチレス”でシフトアップが可能なクイックシフターなどが標準装備される。
走りに関連する充実した装備も「ストリートトリプルRS」の特長。5種類の制御モードを持つ切り替え式のトラクションコントロールや、“クラッチレス”でシフトアップが可能なクイックシフターなどが標準装備される。拡大

その律義さがおっかねぇ

楽しめると言った根拠は、冒頭に挙げた立ち感の強い姿勢にある。現実的に123psとフルコンタクトして圧倒できる技量も体力もないのだが、上体が立つだけで恐怖心が薄れ、少なからず操縦に余裕が持てる。そんなマージンを生み出すための措置にもトライアンフは手抜かりがない。

一気に記します。5種類のモードが選べるライド・バイ・ワイヤ式スロットル。スムーズなシフトダウンを可能にするスリップアシストクラッチ。サスペンションは前がショーワ製φ41mm倒立フロントフォークで、リアはオーリンズ製STX40モノショック。ブレーキは前後ブレンボ。タイヤはカットスリック並みの「ピレリ・ディアブロ スーパーコルサSP」。もはやサーキット仕様だろと突っ込みたくなるが、そうした各デバイスの優秀さは、総合的にこのオートバイを走らせる楽しみに直結している。体幹の強さを発揮するインナーマッスルのごとく。

そんな本格的な格闘家を、トライアンフは鍛え続けている。「トラといえばボンネ」と信じて疑わない人にすれば目をそむけたくなる真実かもしれないし、この英国発のブランドの見方を大きく変えるポイントになるかもしれない。いずれにせよ、ストリート最強育成に励むトライアンフの律義さが、他の何よりおっかねぇ。

(文=田村十七男/写真=三浦孝明/編集=堀田剛資)

 
トライアンフ・ストリートトリプルRS(MR/6MT)【レビュー】の画像拡大
 
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【スペック】
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=--×735×1085mm
ホイールベース:1410mm
シート高:825mm
重量:187kg
エンジン:765cc 水冷4ストローク直列3気筒 DOHC 4バルブ
最高出力:123ps(90kW)/11700rpm
最大トルク: 77Nm(7.9kgm)/10800rpm
トランスミッション:6段MT
燃費:4.7リッター/100km(約21.3km/リッター、WMTCモード[GTR2])
価格:143万円

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