フォルクスワーゲンup! GTI(FF/6MT)/ポロGTI(FF/6AT)/ゴルフGTIパフォーマンス(FF/6MT)
3兄弟見参! 2018.05.08 試乗記 フォルクスワーゲンが擁するホットハッチ「up! GTI」「ポロGTI」「ゴルフGTI」が、スペインのアスカリサーキットに集結。その走りを公道とクローズドコースの双方で確かめるとともに、今年で誕生42年を迎えるGTIブランドの進化に思いをはせた。GTIというブランドの魅力を再確認
ヨーロッパ諸国の人々にとって慣れ親しんたリゾート地、スペインはマラガ。その西部に位置する会員制レースリゾート「アスカリ」を起点に、フォルクスワーゲンが「GTI Performance Day 2018」なるイベントを開催した。理由は、up!とポロに「GTI」がラインナップされたからだろう。大・中・小の3兄弟がそろい踏みしたことを契機に、「いま一度、GTIというブランドの魅力を思う存分クローズドコースで楽しんでくれ!」という極めてシンプルな催しである。
ちなみにアスカリサーキットとは、伝説的なイタリア人F1ドライバーであるアルベルト・アスカリから名前を取ったコースで、全長は5425mとかなりのロングコース。その構成はテクニカルなショートコースを3つ集めて作られたようなレイアウトとなっており、なんとバンクまで備えるマニアックぶり。当日はそのコースの3分の2ほどを使って、フォルクスワーゲンのインストラクター先導によるサーキット・エクスペリエンスが行われた。
当日詰めかけたメディアたちが、われ先にと受付で走行予約を取る様子はまるで、高校生の時の昼飯どきを思わせた。目当てのパンをいち早くゲットするために通訳のT氏が人混みへと突入し、消えていく……。筆者は完全に出遅れたのだが、人の良いT氏はわれわれ全員分のパン……ならぬ予約をつかみ取り、ガッツポーズ。ボクが最初に手にしたのは大好物の焼きそばパンならぬ、up! GTIだった。
素材のよさがあればこそ
up! GTIは今年(2018年)の1月末にニースで開催された国際試乗会で既に試しており、その出来栄えにはうならされていた。主にサスペンション周りの剛性アップによって磨き上げられたフットワークは、ロードユースにおいてup!の小さなボディーをしっかりと支えつつ、17インチのハイパフォーマンスタイヤ(グッドイヤー・エフィシエントグリップ パフォーマンス)を足元におさめながらも快適な乗り心地を確保。ここに現行GTIの、高次元領域における速さより快適性に軸を置いたキャラクターを見いだし、またこれを実現するのは一にも二にもベース車両の出来栄えである、という信念を見た。
というのもup! GTIはエンジンのパワーアップ(75ps→115ps)に対して特別なボディー補強をしていない。すなわちフォルクスワーゲンのGTIとは、エボリューションモデルではなくベースモデルの素性の証明なのである。
そんなup! GTIをクローズドコースで走らせると、想像通り軽さが際立った。
先導する「ゴルフR」に加速では引き離されても、ブレーキングポイントがまるで違うから追いついてしまうのだ。もちろんインストラクターは十分なマージンをもって先導しているわけだが、それにしてもドーン! と加速を見せつける相手をブレーキングで突っつき、一緒になってターンする様は痛快。これに反応して徐々にアベレージスピードを上げていくゴルフRのバックミラーに、up! GTIのニンマリとしたドヤ顔を大写ししているかと思うと、おかしくて仕方なかった。
もちろんそんな走りができるのは、このup! GTIが考え尽くされたシャシーバランスを持っているから。高い荷重領域でもフロントの舵が奥まで利き、リアトーションビームのねじれによる接地性変化を感じさせない安定感が、すべての走りを支えている。基本的なハンドリングはオン・ザ・レールだが、1478mmとちょっと高めの全高による重心の高さはやはり挙動に影響していて、これを少しばかり固めた足まわりとのバランスで振り子のように使うと、up! GTIはいきいきと走る。
欠点も含めて愛せそう
逆に言えば、この“フラフラ感”を不安に感じるドライバーも少なからずいるだろう。しかしこれ以上サスペンションを固めれば跳ねたり切り返しの動きが急になったりすることが予想され、ここが現時点でフォルクスワーゲンの定めた最良の落としどころなのだと理解できる。小さなセグメントのクルマほど、車内の圧迫感をなくすために室内高を伸ばすのは日本の軽自動車に限らず全世界的なトレンドのようで、厳密に言えばGTIと呼ぶにふさわしい超高速安定性を持たせるのはコスト面でも、ディメンション面でも難しいのだ。それは同じAセグメントでリアエンジンの形式を採る「ルノー・トゥインゴ」の足まわりが、結構固めにしつらえられていることからもわかる。
一方で、待望の6段MTを搭載しつつもブレーキペダルを踏み込んだときのアクセルペダル位置が高すぎて、ヒール・アンド・トウが非常にやりづらいことは少し残念だった。115ps/200Nmのアウトプットに対して、シングルクラッチのASGが対応できないのか、DSGを積むにはコストと重さがネックになるのか。エンジニアからは明確な答えをもらえなかったが、だとすればコストのかからないペダル位置だけは直すべきだろう。
そして、これは街中での話だが、過給圧も十分に掛かるであろう2000-3000rpmの領域で、2速であれ3速であれアクセルを大きく踏み込むと加速が一瞬息をつく瞬間が今回は認められた。サーキットのような常に高回転高負荷の場面では感じなかったこの症状は、環境性能をにらんで装着された粒子フィルターの影響だろうか。パーシャルスロットルから徐々に踏み込む分にはあまり気にならなかったのだが、街中でも場所によっては100km/hが出せる欧州の地で、こうしたレスポンスの悪さが少し目立った。
とはいえ総合的な評価としてはこのup! GTI、ニヤけるほどに楽しい。至らぬ部分も含めて愛せそうなキャラクターには、小型車本来の魅力がたくさん詰まっていると思えた。
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往年のゴルフGTIを思わせる実直さ
この勢いでポロGTIも! ……といきたかったのだが、クローズドコースではその順番がうまく回ってこなかったので、これはすべてオープンロードでの評価となることをご留意願いたい。
ポロGTIで話題とすべきは「これさえあれば、もはやゴルフいらずか!?」という点に尽きると思う。
横置きモジュールアーキテクチャー「MQB」を得たことで、とうとうライバルたちと同等の“プレミアムBセグメントサイズ”を得たポロ(GTI)。そのボディーは全長×全幅×全高=4067×1751×1438mmへと、全長は「ゴルフIII」(4020mm)を超え、全幅も「ゴルフIV」(1735mm)以上、ワッペングリルの「ゴルフV」(1760mm)に迫るサイズとなった。
しかしながら、この最新のポロGTIを走らせて感じた一番際立つ性能は、“実直さ”だった。ハイパフォーマンスモデルをしてそれってどうなの? なんて言われそうだが、とにかくそのドライバビリティーは、ゴルフV以前のGTIにとてもよく似ていた。実は今回、筆者はGTI Performance Dayで歴代のゴルフGTIにも乗る機会を得ていたのだが、そこで感じたIIIやIV時代のゴルフGTIが持っていた質実剛健さに、ポロGTIの実直な乗り味がオーバーラップしたのである。
オプションのスポーツサスを仕込んだ足まわりは、やはりオプションで18インチにもなるスポーツタイヤを見事に履きこなし、サーキットではゴルフGTIに迫るスタビリティーとコーナリング性能を示すであろうことが容易に想像できる。ついに2リッターとなったTSIエンジンの最高出力は200ps、最大トルクは320Nmと、ゴルフGTIとの差は30ps/30Nmでしかない上に、わずかながらもポロGTIの方が、車重が25kgほど軽い(5ドア・DSG仕様での比較)。こうなるとゴルフGTIに、さらにパワーを15ps、トルクを20Nm上乗せした「GTIパフォーマンス」をラインナップしたくなる気持ちもよくわかる。
それでいて、ポロGTIの基本的な操作性には、奇をてらったところがひとつもない。
飛び道具に頼ることなく走りを磨く
先代までは小ぶりな車体を生かし、ガッチリと固めた足まわりと電子制御ディファレンシャルロック(XDS)の能力を最大限に使って、はじける若さでワインディングを飛び回った。しかし現行モデルはそのボディー剛性を基軸にスポーツサスをもしなやかに伸縮せしめ、その乗り味は、洗練というよりもすっかり大人びたものとなった。それはXDSの作動を乗り手に意識させないことでもわかる。4輪が常に大地を捉えているから、無遠慮な電子制御の介入が起きないのだと思う。
飛び道具で走りをごまかさず、ひたむきにマジメさを貫く。
だからこの現行ポロGTIは、平均速度の高いヨーロッパでもろ手を挙げて受け入れられるだろう。かたや日本ではその良さを100%発揮するのは難しく、むしろ面白みには欠けてしまうかもしれない。
ただ、気がつけば限りなく400万円に近づいてしまったゴルフGTIに対して、300万円台前半からになるだろうと思われるポロGTIの価格は、まだわれわれ庶民の味方といえそうだし、新世代デザインによってキレッキレにエッジを立てた存在感も、地味目な走りのキャラクターを後押ししてくれるとは思うのだが。
それにゴルフGTIは、もはやクラスを超えた王者の風格である。階級の違いはハッキリとつけるのが欧州流。現行ゴルフGTIとポロGTIの間には、単純にサイズやパワー、内装の質感や電動サイドブレーキの有無だけではない、歴然とした質感の差がある。
それでもやはり、ゴルフは違う
具体的には、そのしっとりとした乗り心地に加えて遮音性がポロGTIより一枚上手で、ダンパーを構成するしゅう動部品のクオリティーや、ブッシュのコンプライアンスにまで違いがあるように感じられる。そしてこの路面にぺったり吸い付くような操縦性とDSGの追従性、そしてムダのないトラクションの掛かり方が、サーキットでもオープンロードと同じように発揮される。
つまりゴルフGTIはフォルクスワーゲンの魂で、そこにはちょっとだけコストを度外視したクオリティーが込められているのだろう。メルセデスでは「Sクラス」が。ポルシェでは「911」が。BMWでは「3シリーズ」が(最近は「7シリーズ」も素晴らしいが)。各メーカーには自分たちのアイデンティティーともいうべき“顔グルマ”があり、フォルクスワーゲンの場合はゴルフ、そしてGTIなのである。
だから価格はさておき、ポロがゴルフを超えるということは、あり得ないのだ。
1976年のアウトバーン。クラスを超えた速さと安定性で格上のサルーンたちを蹴散らし、多くのドライバーに「ゴルフI」のGTIは衝撃を与えた。そして42年の歳月が流れた今、GTIはさらなる進化を果たした。彼らにとってスピードは絶対の命題だ。しかしそれと同時に、驚くほどに洗練された動的質感も獲得した。そしてこれがゴルフGTIを頂点に(ゴルフRはまた別の話として)、ポロGTI、そしてup! GTIへと受け継がれているのだ。
そんなことを強く意識させられた「GTI Performance Day」であった。
(文=山田弘樹/写真=フォルクスワーゲン/編集=堀田剛資)
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テスト車のデータ
フォルクスワーゲンup! GTI
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=3600×1641×1478mm
ホイールベース:2410mm
車重:1070kg
駆動方式:FF
エンジン:1リッター直3 DOHC 12バルブ ターボ
トランスミッション:6段MT
最高出力:115ps(85kW)/5000-5500rpm
最大トルク:200Nm(20.4kgm)/2000-3500rpm
タイヤ:(前)195/40R17 81V/(後)195/40R17 81V(グッドイヤー・エフィシエントグリップ パフォーマンス)
燃費:4.8リッター/100km(約20.8km/リッター、NEDCモード)
価格:--円/テスト車=--円
オプション装備:--
※数値は欧州仕様のもの。
テスト車の年式:2018年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(プレミアムガソリン)
参考燃費:--km/リッター
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フォルクスワーゲン・ポロGTI
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4185×1751×1438mm
ホイールベース:2549mm
車重:1355kg
駆動方式:FF
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:6段AT
最高出力:200ps(147kW)/4400-6000rpm
最大トルク:320Nm(32.6kgm)/1500-4400rpm
タイヤ:(前)215/40ZR18 89Y/(後)215/40ZR18 89Y(ミシュラン・パイロットスポーツ4)
燃費:5.9リッター/100km(約16.9km/リッター、NEDCモード)
価格:--円/テスト車=--円
オプション装備:--
※数値は欧州仕様のもの。
テスト車の年式:2018年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(プレミアムガソリン)
参考燃費:--km/リッター
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フォルクスワーゲン・ゴルフGTIパフォーマンス
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4268×1790×1482mm
ホイールベース:2626mm
車重:1387kg
駆動方式:FF
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:6段MT
最高出力:245ps(180kW)/5000-6700rpm
最大トルク:370Nm(37.7kgm)/1600-4300rpm
タイヤ:(前)225/40R18 92Y/(後)225/40R18 92Y(ブリヂストン・ポテンザS001)
燃費:6.5-6.6リッター/100km(約15.2-15.4km/リッター、NEDCモード)
価格:--円/テスト車=--円
オプション装備:--
※数値は欧州仕様のもの。
テスト車の年式:2018年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(プレミアムガソリン)
参考燃費:--km/リッター

山田 弘樹
ワンメイクレースやスーパー耐久に参戦経験をもつ、実践派のモータージャーナリスト。動力性能や運動性能、およびそれに関連するメカニズムの批評を得意とする。愛車は1995年式「ポルシェ911カレラ」と1986年式の「トヨタ・スプリンター トレノ」(AE86)。
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