その名はカローラ スポーツ!
新型ハッチバックでトヨタは何を狙うのか?
2018.07.02
デイリーコラム
いまこそカローラをひとつに
「カローラハッチバック」(仮称)あらため正式名称「カローラ スポーツ」は、「フォルクスワーゲン・ゴルフ」などとガチンコ競合する国際派Cセグメントだから、当然のごとく、3ナンバーサイズである。ただ、そういうことになると、これは必然的に歴史的な大事件である。
なぜなら、日本で3ナンバー車がカローラを名乗るのはこれが史上初だから……と書きかけたら、2年半ほど前まで販売されていた「カローラルミオン」が3ナンバーだったことに気がついた。ただ、ルミオンは1世代かぎりで終わった変わりダネ商品なので、“伝統的な車体形式のカローラとしては”という条件をつければ、やはり今回のカローラ スポーツが日本初の3ナンバーカローラ……と、こじつけることは可能である。
カローラ スポーツを手がけた開発陣によると、今回は“カローラ統一”が開発の大テーマだったという。つまり、今後出てくるはずの新型セダンとワゴン(今でいう「アクシオ」と「フィールダー」)もスポーツと同じく「GA-Cプラットフォーム」を土台とした3ナンバー車に脱皮するのが確定っぽい。GA-Cとは「プリウス」や「C-HR」も使うアレである。
カローラは今なお世界ベストセラー乗用車の一角(2017年実績も1位)だが、その背景には徹底した“地域最適化”もあった。というのも、従来のカローラでは海外だと北米/アジア系と欧州系の2種類のプラットフォームを使っていた。それに加えて、そのどちらとも異なるコンパクトカー用プラットフォームを使った5ナンバーサイズのカローラが日本専用車として存在した。
新型カローラ スポーツを含む新世代カローラ最大のキモは、このように世界でとっ散らかって(技術資源も分散して)しまったカローラを、世界で再統一することなのだ。
ちなみに、今回のカローラ スポーツの登場にともなって、国内では「オーリス」が姿を消すことになる。それが世間で「カローラ スポーツはオーリスの事実上の後継車」といわれる理由だが、なんのことはない、こうして名前が変わるのも日本だけだ。欧州では新型もオーリスのままだというし、それ以外の地域では以前からこれがカローラのハッチバックだ。
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このままいけば消滅する!?
話を今一度整理すると、もろもろの歴史的都合で混在していた海外向けプラットフォームを統一したうえで、ここ2世代に用意されてきた日本専用モデルを廃止して、すべてを基本的に統一する……というのが新世代カローラの基本戦略である。
そういう決断ができた理由を、新型カローラのチーフエンジニアである小西良樹氏は「デザインや車体サイズのニーズが世界的に似通ってきた」のと「日本で再び若者にカローラに乗ってもらいたい」から……と説明した。
前者の理由は多くの人が肌感覚で感じていることだろうが、後者のそれは切実だ。聞けば、日本のカローラ乗りの平均年齢はセダンのアクシオで70代(!)、比較的若いとされるフィールダーでも60代(!!)に達しているのだという。このままではカローラはオーナーとともに年を取って、遠からず自然消滅するのは必至である。
だが、カローラが高齢化に悩んでいるのも、じつは日本だけらしい。カローラの大票田は北米と中国だが、北米や中国の南部ではユーザーの主力は大学生や20代の若者で、年齢層が比較的高めという中国北部でも30~40代。また、欧州では北米や中国より層が幅広いというが、競合する欧州Cセグメント各車と比較して高齢というわけでもない。というか、欧州でのオーリス=カローラは王者フォルクスワーゲン・ゴルフに対して、ハイブリッドなど独自性を武器に追いあげる若い新興勢力である。
こうして世界のカローラをあらためて見渡すと、新しい統一カローラもまた、北米、中国、欧州などの海外市場では、TNGAで効率的に真正面から“いいクルマ”にするのが主眼といっていい。まさに正常進化だ。
ただ、そういう世界の正常進化に歩調を合わせただけで、軽自動車とミニバンと5ナンバーとハイブリッドが牛耳るニッポンでは、こうして歴史的な事件になってしまう……。軽自動車もミニバンも日本が誇るべき技術の粋ではあるけれど、旧世代の中年クルマ好きの私なんぞは、新型カローラ スポーツがニュースになってしまう今の国内クルマ市場に、モヤッと複雑な気持ちになってしまうのも事実だ。
(文=佐野弘宗/写真=田村 弥、webCG/編集=関 顕也)

佐野 弘宗
自動車ライター。自動車専門誌の編集を経て独立。新型車の試乗はもちろん、自動車エンジニアや商品企画担当者への取材経験の豊富さにも定評がある。国内外を問わず多様なジャンルのクルマに精通するが、個人的な嗜好は完全にフランス車偏重。
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