メルセデス・ベンツA220 4MATICセダン(4WD/7AT)
骨肉相食む 2018.10.20 試乗記 とどまるところを知らぬメルセデスの新型車攻勢。新型「Aクラス」にも、「ハッチバック」に続いて早くも「セダン」が設定された。ややもすれば「Cクラス」をも食いかねない、ニューフェイスの出来栄えやいかに!? アメリカ・シアトルからの第一報。FF系メルセデスの最新モデル
いわゆるジャーマンスリーのプレミアム性を物語る要素として、いま挙げるべきことのひとつといえば、車種数の多さではないだろうか。
例えばメルセデス・ベンツ(日本法人)のウェブサイトをみれば、その数は実に28。ここにAMGやスマートも加えるとトヨタのそれを軽く凌駕(りょうが)するだろう。もちろん他に日本に導入されていないモデルもあるわけで、230万台くらいの年間販売規模を考えると、多品種少量生産こそが贅沢(ぜいたく)の証しと言わんばかりの風呂敷の広げっぷりである。
先日、メルセデス・ベンツのR&D部門のトップであり、次期社長の座が内定しているオラ・ケレニウス氏に話を聞く機会があった。氏は、今後は電動化への注力もあり、今までのようなペースでの新車種投入は難しいとおっしゃっていた。しかし、一方でまだユーザーが求めるニッチ的なニーズも把握しているということだったから、もうひと声新たな車種が増えることも十分考えられる。ともあれ中にいるエンジニアたちは大変だ。
とりわけ、メルセデスにとってエントリークラスにあたるFF系プラットフォームのラインナップは、若いユーザー層のさまざまな嗜好(しこう)をくむにふさわしい拡張性に富んでいる。これまでは「Aクラス」「Bクラス」「GLA」「CLA」そして「CLAシューティングブレーク」と5つのバリエーションが用意されていたが、最新世代ではこの隙間にさらなる新しいモデルが追加されるのでは……といううわさが海外のスクープ情報からも伝わってくる。このAクラス セダンも、そんなうわさが現実化した一台だ。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
ボディーサイズは先代「Cクラス」に近い
全長×全幅×全高=4549×1796×1446mm。Aクラス セダンのディメンションは例えるなら先代W204系「Cクラス セダン」のそれにほど近い。ちなみに2018年4月に北京ショーで発表されたAクラス セダンはホイールベースが60mm長い「L」に相当するもので、中国市場専用車とされている。
ここまでくると“ニッチ・オブ・ニッチ”と言いたくもなるが、ここはCクラスに対する機能的優位が著しく抜きん出ることは避けたいという社内的な思惑により、この微妙な作り分けを余儀なくされているところもあるのだろう。それでもAクラス セダンは後席に座れば現行Cクラスに比肩するほどの空間があり、ゴルフバッグもきれいに収まりそうな形状のトランクを擁してもいる。駆動方式にこだわりのないユーザーにとっては、CクラスよりAクラスの方が合理的なセダン像にみえるだろう。
2019年春の日本デビューが予定されているAクラス セダンの導入仕様は定かではないが、本国仕様には1.3リッターから2リッターの4気筒ガソリンユニットと1.5リッターディーゼルが用意される。トランスミッションは全グレードで7段DCT(「A180」では6段MTも選択可能)が組み合わされ、上位グレードには「4MATIC」(4WD)の設定もある。このあたりの構成はハッチバックのAクラスと同様だ。
ハッチバックに対するアドバンテージは空力性能
Aクラス セダンとハッチバック、性能面において両車の大きな違いとなるのは空力特性かもしれない。ハッチバックボディーにして0.25という破格のCd値も見事だが、セダンはその延長したテール部を生かしつつ0.22という市販車最高レベルに達している。当然ながらこれは燃費や最高速に効いてくるわけで、Aクラス セダンはベーシックな「A180」でも、1.3リッター直噴4気筒ターボをして最高速は230km/hをマークするという。
装備に関してはAクラス ハッチバックの日本企画テレビCMでも推されていた、オリジナルAIを用いた音声認識アシスタンス「MBUX」がこちらも標準。加えて運転支援システムは「Sクラス」や「Eクラス」にも迫る充実ぶりと、Cセグメントばなれした先進機能体験が可能となる。日本仕様の詳細が不明な現状では音声認識のユーザビリティーは未知数だが、ローカライズには相当な労力が注がれているというから期待したい。
生産立ち上がりのタイミングということで、用意された試乗車は190psを発生する2リッター直噴4気筒ターボを搭載した「A220」のみだったが、日本にはより高出力な「A250」が投入される可能性が高い。そのあたりを勘案しながら走りだしてみれば、オプションの18インチタイヤを履いていながら、小入力時からのスムーズな足まわりの動きにあらためて驚かされる。これなら多少のパワーアップに対応してアシを固めたところで、街乗り領域での乗り心地が大きく損なわれることはないだろう。
また、この快適さをさらに際立たせているのが静粛性の高さだ。エンジンやトランスミッションといったメカノイズ系の低減もさることながら、速度を高めるほどに際立つのは件(くだん)の空力特性で、風切り音など上屋まわりからのノイズはひとつ上のDセグメントモデルに乗っているかのような少なさである。さらに、荷室部が区切られたセダンボディーのおかげで足まわりからの入力音も小さい。
“白場”が重要視される時代がやってくる
新型Aクラスはグレードに応じて2つのリアサスを使い分けているが、ハッチバックにせよセダンにせよ、今まで試乗したモデルはすべてマルチリンクの4輪独立サスが装着されており、小径肉厚タイヤ&トーションビームというベーシックモデルの乗り味は確認できていない。しかし、おそらく大きくは変わらないであろうことを想定できる理由は、アーム類の基本的な位置決めに相違はなく、それが小入力域からうまく作用している点、そして車体剛性が十二分に確保されている点にある。
この先、パワートレインの電動化が進むほどに、クルマのパッケージは増加する搭載物に対応すべく“白場”をいかに生み出すかがポイントとなってくるだろう。その際にFRだマルチリンクだというキーワードは自動車メーカーにとって支えきれない重荷となる可能性がある。Aクラス セダンの中身を知るにつけ、新型CLAとどうすみ分けるのかという目先の心配もさることながら、ともすればCクラスの実利的な存在理由を奪いかねないという不安を覚えるのは僕だけではないだろう。
(文=渡辺敏史/写真=ダイムラー/編集=藤沢 勝)
テスト車のデータ
メルセデス・ベンツA220 4MATICセダン
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4549×1796×1446mm
ホイールベース:2729mm
車重:1520kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:7段AT
最高出力:190ps(140kW)/5800rpm
最大トルク:300Nm(30.6kgm)/1600rpm
タイヤ:(前)225/40R18/(後)225/40R18(ピレリPゼロ)
燃費:6.7-6.5リッター/100km(約14.7-15.4km/リッター、NEDC複合モード)
価格:--万円/テスト車=-- 円
オプション装備:--
テスト車の年式:2018年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター

渡辺 敏史
自動車評論家。中古車に新車、国産車に輸入車、チューニングカーから未来の乗り物まで、どんなボールも打ち返す縦横無尽の自動車ライター。二輪・四輪誌の編集に携わった後でフリーランスとして独立。海外の取材にも積極的で、今日も空港カレーに舌鼓を打ちつつ、世界中を飛び回る。
-
マクラーレンW1(MR/8AT)【海外試乗記】 2026.6.29 マクラーレンが、かつての「F1」や「P1」に続く“究極のロードゴーイングカー”として開発した、超高性能モデル「W1」。そのドライブフィールはどのようなものか? イタリアで試乗した西川 淳がリポートする。
-
ヒョンデ・ネッソ ラウンジ+(FWD)【試乗記】 2026.6.27 ヒョンデの水素燃料電池車「ネッソ」がフルモデルチェンジ。……といっても多くの方にはなじみがないかもしれないが、デザインが一気にモダンになったほか、満タンからの走行可能距離が25%近くも拡大するなど長足の進歩を果たしている。300km余りをドライブした。
-
アストンマーティンDBX S(4WD/9AT)【試乗記】 2026.6.24 「SUVの形をしたGT」こと「アストンマーティンDBX」が、さらに高性能な「DBX S」に進化。より機敏なフットワークと、よりパワフルなエンジンを得たハイパフォーマンスSUVは、どのような体験を提供してくれるのか? 飛ぶがごとく走る英国の巨獣の実力に触れた。
-
三菱トライトンGSR(4WD/6AT)【試乗記】 2026.6.23 三菱のピックアップトラック「トライトン」のマイナーチェンジモデルが登場。トヨタの新型「ハイラックス」を迎え撃つべく三菱は、シャシーを鍛え上げ、走行性能をさらなる高みへと引き上げている。400km余りをドライブした印象をリポートする。
-
ハーレーダビッドソンCVOストリートグライド3リミテッド(6MT)【レビュー】 2026.6.22 ハーレーダビッドソンのユニークな三輪モデル「トライク」シリーズが大幅に進化。お値段800万円超(!)の最上級モデル「CVOストリートグライド3リミテッド」の試乗を通し、新しくなった乗り味と、受け継がれる独創のファン・トゥ・ライドをリポートする。
-
NEW
ホンダのビーチクリーン活動が20年の節目に 本田宗一郎が涙したというそのルーツとは?
2026.7.1デイリーコラムホンダが陰に日向にと活動を支えてきたビーチクリーン活動が2026年で20周年を迎えた。これ自体も素晴らしいが、実はホンダとともに活動を運営する団体の設立には、かの本田宗一郎氏の涙が関連しているというから興味深い。今から60年前の人間味あふれるストーリーを紹介する。 -
NEW
第118回:デザイン目線で大総括! 2026年上半期のニューモデル ―「マツダCX-5」「ホンダ・スーパーONE」編―
2026.7.1カーデザイン曼荼羅例年同様、さまざまなニューモデルが登場した2026年の上半期。クルマ好きの注目を集めた新型車の数々を、カーデザインの視点で振り返ってみよう。まずは、一見キープコンセプトに見える新型「マツダCX-5」と、古くて新しい「ホンダ・スーパーONE」から! -
NEW
BMW R1300RS(6AT)
2026.7.1JAIA輸入二輪車試乗会2026BMWが擁するフラットツインの大型スポーツツアラー「R1300RS」に試乗。巨大なボクサーエンジンと安定志向の足まわりの調律は、大人のライダーが週末を楽しむためのバイクとして、完璧な仕上がりをみせていた。 -
NEW
トヨタGRカローラRZ(4WD/8AT)【試乗記】
2026.7.1試乗記GAZOO Racingの手になる「トヨタGRカローラ」が、一部改良でさらに進化。強化されたボディー剛性にサウンドコントロールシステムの追加など、従来モデルからの変更点をおさらいしつつ、硬派で辛口なその走りをリポートする。 -
アウディQ3スポーツバックTFSIクワトロ150kWアドバンスト(4WD/7AT)【試乗記】
2026.6.30試乗記アウディのコンパクトSUV「Q3」がフルモデルチェンジ。新しくなったのはすっかり押し出しの強くなったフロントマスクだけでなく、内装もすべて新設計。インフォテインメントや灯火類などにも最新のシステムを採用した意欲作だ。「スポーツバック」の4WDモデルの仕上がりをリポートする。 -
フェラーリ初の電気自動車「ルーチェ」をどう思う?
2026.6.30あの多田哲哉のクルマQ&A公開されるやさまざまな議論を呼んでいる、フェラーリ初の電気自動車「ルーチェ」。その存在を、トヨタの車両開発者だった多田哲哉さんはどうみるのか? また、多田さん自身が開発を任されたらどうするのか、話を聞いた。
























































