WRC 2018シーズンを総括
復帰2年目で頂点に立ったトヨタ快進撃の秘密
2018.12.07
デイリーコラム
ラリー復帰2年目での快挙
正確に記すと2018年のWRC(FIA世界ラリー選手権)で「TOYOTA GAZOO Racing World Rally Team」がマニュファクチャラーズタイトルを獲得した。
WRCにはもうひとつ、ドライバーズタイトルというのも存在して、これはフォードに乗るセバスチャン・オジエ/ジュリアン・イングラシアが獲得したので完全制覇というわけではない。「ヤリスWRC」を駆ったオット・タナック/マルティン・ヤルヴェオヤが、3連続優勝という華やかな活躍を見せて最後までタイトル争いに加わったが、結局3位に落ち着いた。
ラリー復帰2年目のチームがここまでのパフォーマンスを見せるとは、誰も想像していなかったのではないだろうか? あと少しでマニファクチャラーズだけでなくドライバーズタイトルさえも取りそうな勢いだったのだ。
ヤリスWRCの開発も順調に進んでいたのだろうが、個人的には快進撃の原動力は今シーズンのドライバーラインナップだと思う。
ヤリ-マティ・ラトバラというエースドライバーと新加入でエースドライバーの座を脅かすほどのスピードを見せたタナック、そして優勝争いにも加われる若手のエサペッカ・ラッピという布陣は、すべてのワークスチームの中で最も豪華に見える。
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速いのに最終結果に結びつかなかった中盤戦
そしてマシンの進化は、時として今まで十分だったはずのものが、足りなくなることを引き起こす。
サーキット走行のF1と違ってWRC、ラリーはシミュレーション外のことが多々起こる。たとえばコーナーの路面(コンディション)が予想より良ければ脱出スピードが上がり、その先にあるジャンプを全開のまま飛んでしまうと、予想値を超えることがある。
そこをコントロールするのがドライバーの裁量でもあるのだが、マシンの信頼度が上がれば、ドライバーはコーナーでより攻め込んだ走りをする。さらにコーナーのインを攻め、フルパワーでコーナーのアウト側ギリギリまで立ち上がるだろう。マシンの熟成はドライバーをその気にさせ、さらなるタイムアップを生み出す、いや生み出してしまうのだ。
その結果、設計値を超えた入力によってマシンが音を上げてしまう。言い方を変えれば、マシンのスピード以上に若いドライバーの進化が勝ってしまうのだろう。
どうもシーズン中盤からそんなことが起きていたようにも見える。速いのに最終結果に結びつかない。そのあたりは2年目のチームにはあらがいがたい経験・データ不足なのではないか。それによってドライバーズタイトルは手のひらからこぼれ落ちてしまったが、マニュファクチャラーズタイトルを獲得したトヨタチームの力は並外れたものだ。
2019年シーズンへの期待も高まる
フォード、ヒュンダイそしてシトロエンも、おとなしくシーズンオフを過ごしはしない。トヨタもあぐらをかいてはいられないが、2019年への展望は明るいように思える。
ドライバーズラインナップも入れ替えがある。トヨタにはクリス・ミークが加わり、ラッピがシトロエンへ。またこのシトロエンには王者オジエが移籍し、スポット参戦で絶対王者セバスチャン・ローブも加わるという。これもまた来シーズンの見どころとなる。
「WRCジャパン復活か?」という話題もあったが、ひとまず2019年は見送られた。かつて開催された北海道ならまだしも、一度も国際ラリーが開催されていない中部でいきなりWRCはハードルが高すぎるのではないだろうか?
オーガナイザー側スタッフにしても、外国人エントラントと関わったことなく世界のトップを受け入れるのは難しいだろうと思う。まずは準備のための国際ラリーを開いて、満を持して“世界”を迎え入れてもらいたい。
そして将来そこで『君が代』が流れ、日の丸が空高く舞うのが見られたら最高だ。
(文=三好秀昌/写真=トヨタ自動車/編集=櫻井健一)

三好 秀昌
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