ホンダ・ヴェゼル モデューロ仕様 プレミアムエアロスタイル(4WD/7AT)
デビューの日が待ち遠しい 2019.03.20 試乗記 開発が進む「ホンダ・ヴェゼル モデューロX」のプロトタイプに試乗。時にアクティブでありながらリラックスしたドライビングも楽しませてくれる走りは、量産型への期待が膨らむものだった。ヴェゼル モデューロXがいよいよ登場!?
大人4人の乗車に必要十分なキャビン空間と、どこに乗りつけるにも抵抗感のないサイズ。さらには、充実したハイブリッド仕様のラインナップや200万円プラスアルファというスターティングプライス等々と、日本のユーザーを強く意識したと思える内容が好評を博し、2013年末の発売以来、高い人気をキープし続けているヴェゼル。
「N-BOX」の大ヒットで、とかく軽自動車ばかりが脚光を浴びがちなホンダのラインナップにあって、ヴェゼルは貴重な“登録車”のヒット作でもあるわけだ。
一方で、これまでありそうでなかったのが、そんなヴェゼルのモデューロX。モデューロXとは、専用開発されたサスペンションやボディーキットを採用しながら1台のニューモデルとして仕上げられた、いわば“ホンダ純正のコンプリートチューニングカー”である。しかしそれは、現時点では「S660」や「ステップワゴン」、「フリード」には設定されるものの、なぜかヴェゼルには用意がなかったのだ。
しかし、そんな理不尽? な状況にも間もなく終止符が打たれそう。なぜなら、まだコンセプトモデルとしての扱いながら、2019年1月に開催された東京オートサロンのブースに、待望だったヴェゼルのモデューロXがついに出展されていたからだ。
実は、東京オートサロンとモデューロXは“切っても切れない”関係にある。現在販売中の前出3モデルも、いずれも「発売前にオートサロンに出展された」という実績の持ち主なのだ。
となれば、ヴェゼル モデューロXも、もはや発売間近と考えるのが自然だろう。今回は、“鋭意開発中”をうたうそんなモデルのプロトタイプを、特別にテストドライブすることができた。
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
とにかく安心して走行できる
ステップワゴンのモデューロXとともに北海道の地に用意されていたヴェゼルは、2018年2月にマイナーチェンジを受けた同車の、「ハイブリッドZ・Honda SENSING<4WD>」をベースとするモデル。これまでのモデューロXはすべてが2WDだったが、ヴェゼルではSUVというキャラクターも鑑み「2WDだけでなく、4WD仕様の設定も考えている」という点が新しい。
かくして、そんな4WDのテスト車だが、実はあくまでも既存のモデューロパーツを組み込んだ車両で、コンプリートモデルとしてのモデューロXにまではまだ至らない開発途上の状態というものだった。
サスペンションも、「差し当たり街乗りでの快適性を主眼に考えた仮のセッティング」で、専用ボディーキットを装着しての空力のバランス取りも「まだ行っていない段階」というのは、モデューロの開発統括を担当する福田正剛氏のコメントだ。
スタートして早々に実感できたのは4WDのありがたみ。ヴェゼルが用いるのは、前輪駆動ベースながらも路面と走行状況に応じて後輪にも素早く駆動力が伝達される「リアルタイムAWD」。それゆえ、高いトラクション能力が得られることはもとより、コーナー後半で積極的にアクセルを踏み込むことでコーナリングフォームを作り出していく、よりアクティブな走りも可能だった。
それも含めて、「とにかく安心して走行できる」というのが、このモデルの終始変わらない印象。路面状況が刻々と変化する中でも、常にリラックスしたドライビングを楽しませてくれるという感覚が、深く心に刻まれた。
まだ“未完成”という状態ゆえ、今後はさらなる熟成が進むはず。スタッドレスタイヤを装着しての雪道走行が大半で今回はチェックできなかったものの、サマータイヤを装着しての舗装路上でのフットワークのテイストも、これまでのモデューロX各車と同様、ベース車両を明確に上回る上質なものに仕上げられるに違いない。
ホンダきってのヒット作とモデューロのコラボレーションがどのようなコンプリートカーとして現れることになるのか。真にデビューが待ち遠しい一台である。
(文=河村康彦/写真=荒川正幸/編集=近藤 俊)
【スペック】
全長×全幅×全高=4330×1770×1605mm/ホイールベース=2610mm/車重=1390kg/駆動方式=4WD/エンジン=1.5リッター直4 DOHC 16バルブ(132ps/6600rpm、156Nm/4600rpm)/モーター=交流同期電動機(29.5ps/1313-2000rpm、160Nm/0-1313rpm)/トランスミッション=7段AT/燃費=23.2km/リッター(JC08モード)/価格=292万6000円/テスト車の価格=419万4568円
※数値はベース車「ヴェゼル ハイブリッドZ・Honda SENSING<4WD>」のもの

河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
-
BMW 525LiエクスクルーシブMスポーツ(FR/8AT)【試乗記】 2025.10.20 「BMW 525LiエクスクルーシブMスポーツ」と聞いて「ほほう」と思われた方はかなりのカーマニアに違いない。その正体は「5シリーズ セダン」のロングホイールベースモデル。ニッチなこと極まりない商品なのだ。期待と不安の両方を胸にドライブした。
-
スズキ・エブリイJリミテッド(MR/CVT)【試乗記】 2025.10.18 「スズキ・エブリイ」にアウトドアテイストをグッと高めた特別仕様車「Jリミテッド」が登場。ボディーカラーとデカールで“フツーの軽バン”ではないことは伝わると思うが、果たしてその内部はどうなっているのだろうか。400km余りをドライブした印象をお届けする。
-
ホンダN-ONE e:L(FWD)【試乗記】 2025.10.17 「N-VAN e:」に続き登場したホンダのフル電動軽自動車「N-ONE e:」。ガソリン車の「N-ONE」をベースにしつつも電気自動車ならではのクリーンなイメージを強調した内外装や、ライバルをしのぐ295kmの一充電走行距離が特徴だ。その走りやいかに。
-
スバル・ソルテラET-HS プロトタイプ(4WD)/ソルテラET-SS プロトタイプ(FWD)【試乗記】 2025.10.15 スバルとトヨタの協業によって生まれた電気自動車「ソルテラ」と「bZ4X」が、デビューから3年を機に大幅改良。スバル版であるソルテラに試乗し、パワーにドライバビリティー、快適性……と、全方位的に進化したという走りを確かめた。
-
トヨタ・スープラRZ(FR/6MT)【試乗記】 2025.10.14 2019年の熱狂がつい先日のことのようだが、5代目「トヨタ・スープラ」が間もなく生産終了を迎える。寂しさはあるものの、最後の最後まできっちり改良の手を入れ、“完成形”に仕上げて送り出すのが今のトヨタらしいところだ。「RZ」の6段MTモデルを試す。
-
NEW
開幕まで1週間! ジャパンモビリティショー2025の歩き方
2025.10.22デイリーコラム「ジャパンモビリティショー2025」の開幕が間近に迫っている。広大な会場にたくさんの展示物が並んでいるため、「見逃しがあったら……」と、今から夜も眠れない日々をお過ごしの方もおられるに違いない。ずばりショーの見どころをお伝えしよう。 -
NEW
レクサスLM500h“エグゼクティブ”(4WD/6AT)【試乗記】
2025.10.22試乗記レクサスの高級ミニバン「LM」が2代目への代替わりから2年を待たずしてマイナーチェンジを敢行。メニューの数自体は控えめながら、その乗り味には着実な進化の跡が感じられる。4人乗り仕様“エグゼクティブ”の仕上がりを報告する。 -
NEW
第88回:「ホンダ・プレリュード」を再考する(前編) ―スペシャリティークーペのホントの価値ってなんだ?―
2025.10.22カーデザイン曼荼羅いよいよ販売が開始されたホンダのスペシャリティークーペ「プレリュード」。コンセプトモデルの頃から反転したようにも思える世間の評価の理由とは? クルマ好きはスペシャリティークーペになにを求めているのか? カーデザインの専門家と考えた。 -
トヨタ・カローラ クロスGRスポーツ(4WD/CVT)【試乗記】
2025.10.21試乗記「トヨタ・カローラ クロス」のマイナーチェンジに合わせて追加設定された、初のスポーティーグレード「GRスポーツ」に試乗。排気量をアップしたハイブリッドパワートレインや強化されたボディー、そして専用セッティングのリアサスが織りなす走りの印象を報告する。 -
SUVやミニバンに備わるリアワイパーがセダンに少ないのはなぜ?
2025.10.21あの多田哲哉のクルマQ&ASUVやミニバンではリアウィンドウにワイパーが装着されているのが一般的なのに、セダンでの装着例は非常に少ない。その理由は? トヨタでさまざまな車両を開発してきた多田哲哉さんに聞いた。 -
2025-2026 Winter webCGタイヤセレクション
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>2025-2026 Winterシーズンに注目のタイヤをwebCGが独自にリポート。一年を通して履き替えいらずのオールシーズンタイヤか、それともスノー/アイス性能に磨きをかけ、より進化したスタッドレスタイヤか。最新ラインナップを詳しく紹介する。