ベントレー・コンチネンタルGTコンバーチブル(4WD/8AT)
ベントレーにしかつくれない 2019.04.03 試乗記 ベントレーの4シーターオープン「コンチネンタルGTコンバーチブル」の3代目がデビュー。同じグループ内のポルシェが手がけたというモジュールプラットフォームを採用した新型は、どのような進化を遂げたのだろうか。スペイン・アンダルシアで試乗した。21世紀のベントレーのビジネスをリード
「コンチネンタル」は、ベントレーが長い歴史を持つスポーツブランドであることを体現し続けてきたモデルだ。その名が物語るのは海に囲まれたイギリスの東方にある巨大な「大陸」。かの地を優雅に走る姿を想起させるデザインに強大なエンジンと豪華なキャビン、広い荷室……と、その中身は1950年代以降、クルマのカテゴリーとして広まり始めたGT=グランツーリズモ的な趣旨を端的に示すものでもあった。
“英国病”と呼ばれるほどの経済停滞を迎えた1970年代にその歴史はいったん途切れるが、1990年代以降は2ドアクーペボディーを持つコンチネンタルが復活。そしてフォルクスワーゲン(VW)グループ傘下となり一気に最先端のエンジニアリングを手に入れたオールニューモデルは、「コンチネンタルGT」と名付けられ、21世紀のベントレーのビジネスをけん引する存在となる。
MSBモジュール初のオープントップモデル
2003年のデビューから数えて3代目となる新型コンチネンタルGTは、グループのストラテジーにのっとってネジ1本に至るレベルでハードウエアの完全な変更を受けている。そのコアとなるのはポルシェが開発を主導した「MSB」モジュールの採用で、これによりホワイトボディーは剛性向上とともに先代比で20%の軽量化を果たした。加えて車両通信や電装関係のアーキテクチャーも共有できるなど開発工数的なメリットは大きいが、ベントレーにとって何よりおいしいのは、前軸側が135mmも前に押し出されたことだろう。前後オーバーハングの長さやフロントタイヤとAピラーの位置関係がFR寄りになったことで、ラグジュアリーカーらしいプロポーションの適正化がかなえられた。ロングホイールベース化の恩恵はこの先現れるはずの、次期型「フライングスパー」の側により強く表れるだろう。
このMSBモジュールでは初のオープンモデルとなるコンチネンタルGTコンバーチブルは、初代、2代目と同じ幌(ほろ)屋根を継承しており、Z型に折り畳むことで開放時にもスッキリとコンパートメントに格納される。トランク容量は屋根を開けても閉めても先代とほぼ同じ258リッターを確保。大型のスーツケースは形状を選びそうだが、そこはコンチネンタルだ。基本的には2人で乗ることになるはずで、そのぶんのトラベルバゲッジは余裕をもって収納できることが前提となっている。
初代、2代目と同じく、リアサスの取り付け点を微妙に調整しながら開閉の所作までも考え抜いたという新型の幌屋根は5レイヤー構造で、ボタンひとつで開閉とも約19秒で可能。力の掛かる駆動部をモーターライズし、50km/hまでならば走行中でも開閉が行える。表側のテキスタイルはツイードをアレンジしたものをはじめ7種類が用意されるが、その厚みを見るに濃いめのボディー色に明るめの屋根色という組み合わせが似合いそうだ。
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2つのキーファクター
初代から変わることのないキーファクターである6リッターW12エンジンは新型でも継承されている。ただし、設計はまったく新しいものでその最高出力は635ps。8段DCTを介しての最高速は333km/h、0-100km/hは3.8秒と動力性能に不満を抱く向きはいないはずだ。とはいえ、そのパフォーマンスはデビューして間もない4リッターV8エンジン搭載グレードでもおそらくほど近いものが得られる上、運動性能的にはそちらの側が優位に立つだろう。が、圧倒的な物量が紡ぎ出すフィーリングこそがこのクルマの贅(ぜい)だとすれば、W12こそが本懐とも思えてくる。
そしてもうひとつのキーファクターといえば4WDだ。新型では駆動方式がフルタイム4WDとなり、前軸側へのトルク配分は3~38%の間で可変する。すなわち骨格だけでなく駆動の側もFR的な振る舞いを意識しているわけだ。さらに3室チャンバーを設けたエアサスや48V回生システムを組み合わせたアクティブスタビライザーなど、最新のテクノロジーが走りを支えている。
これらをもって新しいコンチネンタルGTコンバーチブルの動的質感は、前2代とはがぜん異なるものに仕上がっている。乗り心地は低速域からフラット感が増し、路面のわだちや凹凸に対する応答も鷹揚(おうよう)になった。オプションの22インチタイヤでさえ路面に接した感触がしっとりとステアリング越しに伝わってくるのは、足まわりの精度と余力が高まったことを示しているのだろう。
“遊びグルマ”を大真面目に
そのまま速度域をぐんぐん高めていっても、フィーリングは変わらない。高速道路をどーんと突き進んでもワインディングロードで左右に車体を振っても、タイヤはがっつりグリップし、サスはしっかり踏ん張るも、そのタッチは常に滑らかだ。先代からの大きな変化として姿勢変化の少なさやロールコントロールの巧みさが挙げられるが、変に突っ張る風ではなく自然な動きに仕立てられているところも、この巨体がひと回り小さくなったかのような安心感につながっている。
回転感に12気筒らしい丸みが加わったエンジンは、アクセルひとつで自在にパワーをコントロールできる。8段もあれば変速のビジー感も気になるところだが、マネジメントもこの余裕綽々(よゆうしゃくしゃく)かつ粒感細かいトルクをうまく使うようにしつけられており、日常的な加速では煩わしさを感じることもない。
2000万円超級のオープンカーといえば世間的には放蕩(ほうとう)の極みかもしれない。が、ベントレーは長きにわたってその特殊なカテゴリーを理解し、そこに向けての究極を大真面目に目指し続けてきた。この肌感覚に技術的背景が融合した、コンチネンタルGTコンバーチブルは、やはりベントレーにしかつくれない万能の一台なのだと思う。
(文=渡辺敏史/写真=ベントレー/編集=藤沢 勝)
テスト車のデータ
ベントレー・コンチネンタルGTコンバーチブル
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4850×1954×1399mm
ホイールベース:2851mm
車重:2414kg
駆動方式:4WD
エンジン:6リッターW12 DOHC 48バルブ ツインターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:635ps(467kW)/6000rpm
最大トルク:900Nm(91.8kgm)/1350-4500rpm
タイヤ:(前)275/35ZR22 104Y/(後)315/30ZR22 107Y(ピレリPゼロ)
燃費:14.0リッター/100km(約7.1km/リッター、WLTCモード)
価格:2818万円/テスト車=--円
オプション装備:--
※価格を除き、数値は欧州仕様のもの。
テスト車の年式:2019年型
テスト開始時の走行距離:--km
走行状態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター

渡辺 敏史
自動車評論家。中古車に新車、国産車に輸入車、チューニングカーから未来の乗り物まで、どんなボールも打ち返す縦横無尽の自動車ライター。二輪・四輪誌の編集に携わった後でフリーランスとして独立。海外の取材にも積極的で、今日も空港カレーに舌鼓を打ちつつ、世界中を飛び回る。
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