シトロエンC4 セダクション(FF/4AT)/エクスクルーシブ(FF/6AT)【試乗記】
乗ってナンボ 2011.06.22 試乗記 シトロエンC4 セダクション(FF/4AT)/エクスクルーシブ(FF/6AT)……256万円/299万円
シトロエンのCセグメントカー「C4」がフルモデルチェンジ。先代からどのような進化を遂げているのか? 2つのグレードに試乗した。
オーソドックスな仕立て
新型「シトロエンC4」の試乗会は、いつものテストドライブより少し厳しい目で臨むことになった。理由のひとつは1週間前にライバルと目される新型「ルノー・メガーヌ」の試乗会に参加し、好印象を得ていたこと。そしてもうひとつは、僕自身が家族用の車両として旧型C4を所有しているからだ。
モデルチェンジとともに日産と共同開発した2リッターエンジンとCVTを導入したメガーヌに対し、新型C4のベースグレード「セダクション」が積む1.6リッターとトルコン式4段ATは、形式的には自分が所有する旧型と同じなのである。
新型にはほかに、1.6リッターターボの上級グレード「エクスクルーシブ」も存在する。ただしこちらのトランスミッション6段EGS(エレクトリック・ギアボックス・システム)はシングルクラッチ方式の2ペダルMTで、近年欧州車で採用例が増えているデュアルクラッチトランスミッションと比べると、見劣りするという印象は否めない。
しかもスタイリングは、フランス車らしい優しい曲線で描かれた新型メガーヌや旧型C4と比べると、かなり実用的な造形で、3世代前の「ZX」を思わせる。インテリアも同じで、スケルトンタイプのデジタル式センターメーターや、センターパッドが固定のステアリングといった個性的なディテールは姿を消した。
この点はインポーターも認めていて、同じクラスにスペシャリティな「DS4」が存在することから、C4はあえてオーソドックスに仕立てたのだという。
つまり新型C4は、デザインやメカニズムといった表面的な部分からは、魅力を見いだすことが難しい。「乗ってナンボ」なクルマなわけで、その点でも普段より厳しい目で試乗に臨むことになったのだった。
実用的デザインの恩恵
最初に乗ったのはセダクション。運転席に乗り込もうとして、サイドシルが幅広くなっていることに気づいた。常識的なデザインになったインパネは、質感が明らかに向上した。ドイツ車を思わせる進化だ。
でも幅広いドアポケットや多彩な収納を持つセンターコンソールなど、フランス車らしい実用本位の設計は継承されているし、ウインカーの音を4種類、メーター照明を5段階のブルーから選べるなど、遊び心がなくなったわけじゃない。おまけに「ラマ」というオフホワイトのカラーのおかげで、開放感も得られる。
前席はシトロエンらしく優しい座り心地。前後にスライドするアームレストもうれしい。身長170cmの僕が座ると、後席のひざの前の空間は15cmぐらいで旧型同様だが、頭上の余裕は増えた。ルーフラインが直線的になった成果だ。しかも高さや傾きが絶妙で、クッションは硬すぎず、このクラスの後席ではベストの居住性に思えた。
リアゲートの開口部が低めで、中身は380リッターもの容積を誇る荷室を含めて、機能を優先したがための実用的なフォルムであることが理解できた。
ではこのボディを1.6リッターと4段ATで満足に走らせることができるのか。結論から言えば、車重が旧型同等グレードより10kgしか増えていないし、ATのマナーはさらに熟成されているので、加速に不満はなかった。発進や変速時のマナーは、あとで乗ったエクスクルーシブのEGSや、一部のデュアルクラッチトランスミッションよりはるかに自然だ。
エンジンは上り坂では回し気味になるけれど、澄んだ音なので不快ではない。100km/hは2750rpmぐらいに達するものの、制限速度が100km/hの日本ではこれで十分だ。たしかにターボのトルクの余裕やギアの数の多さは魅力的だが、そもそもシトロエンは加速よりも乗り心地を求めるブランドなのだから、僕なら自然吸気を取る。
純度の高い快適さ
その乗り心地は、ホイール/タイヤが16インチのセダクションと17インチのエクスクルーシブで、大差はなかった。もちろん取るに足らないという意味ではなく、どちらも素晴らしく快適だった。
旧型もしっとり優しいシトロエンテイストが味わえたが、一方で細かいゴツゴツ、ザラザラが気になることもあった。新型ではそれが消え、ハイドラクティブサスペンション付きの「C5」を思わせる、より純度の高い快適性が堪能できるようになったのだ。
タイヤはどちらも、かつてのシトロエンの親会社ミシュラン製で、セダクションが省燃費タイプの「エナジーセイバー」(205/55R16)、エクスクルーシブがプレミアム指向の「プライマシーHP」(225/45R17)を履く。
細くハイトの高いタイヤは乗り心地がいいというのは昔の話で、最近の省燃費タイヤは転がり抵抗を低減するためにトレッド面が硬い。エナジーセイバーも例外ではないことを、他車の試乗で教えられた。ところが新型C4では、その硬さが伝わってこない。ボディやサスペンションの基本設計が高度なレベルにあるのだろう。
ゆえにコーナーでの粘り腰も、旧型の一段上をいっている。クイックなステアリングとゆったりしたロール感の組み合わせはそのままに、荒れた路面での追従性がさらに高まっているように感じた。とりわけグリップ力にたけたタイヤを履くエクスクルーシブのロードホールディングは、このクラスではトップレベルだと断言できる。
試乗会場には、秋以降に発売される予定のDS4も展示されていた。デザインで注目されるのは間違いなくこちらだ。でもひと足先に登場した「C3」と「DS3」のコンビでは、見た目が個性的なDS3に対し、走りが個性的なのはC3のほうだった。Cセグメントの2台にも同じ関係が成り立つのではないかと、新型C4の乗り心地を味わいながら思った。
(文=森口将之/写真=郡大二郎)
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森口 将之
モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。ヒストリックカーから自動運転車まで、さらにはモーターサイクルに自転車、公共交通、そして道路と、モビリティーにまつわる全般を分け隔てなく取材し、さまざまなメディアを通して発信する。グッドデザイン賞の審査委員を長年務めている関係もあり、デザインへの造詣も深い。プライベートではフランスおよびフランス車をこよなく愛しており、現在の所有車はルノーの「アヴァンタイム」と「トゥインゴ」。
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