買わずにタダでクルマが使える!?
エニカの「0円マイカー」って何だ
2019.05.24
デイリーコラム
やらねばならないこともある
DeNA SOMPO Mobilityが運営するカーシェアサービス「Anyca(エニカ)」から、新たに「0円マイカー」なる新プランが登場。2019年5月21日に、その“オーナー”を募集する説明会が開催された。「マイカーが0円」とは、これいかに!? 超おトク(そう)なサービスの詳細を確かめに、筆者も説明会に行ってみた。
のっけからなんだが、やはりというべきか、これは「完全無料でカーライフが送れる」というサービスではない。
ひと言で言えば、「駐車場を自ら用意し、そこでレンタカーとしてのカーシェア業務をサポートしてくれたら、あなたも無料で(何度か)クルマを使えるようになりますよ」というものだ。
その内容をより詳しく説明すると、以下のようになる。
- オーナーは駐車場をエニカに提供する。既に確保しているスペースでも、新たに契約するパーキングでも構わない。
- オーナーは、「レンタカー登録を済ませ、カーシェア受け渡し用機器を取り付けたDeNA SOMPO Mobilityの所有車両」を、自ら提供する駐車場で管理し、カーシェアのサポートを行う。
駐車場は決して「どこでもいい」というわけではなく、今回の「第1期オーナー募集」では、例として東京23区内の六本木や西新宿、下目黒、豊洲などの30カ所ほどが挙げられている。
選べるクルマは、以下の13車種。ほとんどは中古車(2004年~2019年式)で手配される予定だ。
- プレミアムクラス:「メルセデス・ベンツAクラス」「メルセデス・ベンツCクラス」「メルセデス・ベンツGクラス」「BMW 1シリーズ」「BMW 3シリーズ」「MINI」「レクサスNX」「トヨタ・ランドクルーザー」「トヨタ・アルファード」
- ベーシッククラス:「トヨタ・アクア」「トヨタ・プリウス」「日産セレナ」「日産ノート」
このラインナップは、エニカ独自の車両ニーズ分析に基づいて決めたという。聞けば、何を何台という配分もあらかた決まっていて、どの地域にどれだけの需要があるかもシミュレートされている。つまり、車種の希望はこちらからも伝えられるものの、エニカの提案と合致して初めてオーナー契約に至るわけである。ただ、「ベンツじゃなきゃ嫌だ!」という向きも、例えば「日ごろアクアを管理して、ベンツは個別に(個人間カーシェアで)借りる」という手立てはある。これは後述。
![]() |
![]() |
![]() |
カーシェアの成果は重要
筆者を含むオーナー予備軍が最も気になるのは管理、つまりこのサービスに付帯する“義務”だろう。
具体的に、何をしなければならないかというと……
- 日常点検
- 必要に応じての給油、および給油カードの確認
- ユーザー(カーシェア利用者)からの問い合わせ対応
- 車両トラブル発生時の連絡
- ユーザーの忘れ物対応(先方が回収できないものはエニカに郵送)
- 法定点検と車検の対応(工場への入庫のみ。費用負担はなし)
- 洗車および車内清掃(隔週以上)
- 悪天候時のカーシェア看板の管理
一見して「うわぁ、面倒くさいなぁ」と思われたかどうか。定期的な洗車・車内清掃が負担になりそうな印象だが、なにも愛車のように念入りに手洗い洗車する必要はなく、洗車カードを使って近所のガソリンスタンドに依頼するだけでいい。なお、肝心のレンタルはオンライン予約と無人貸借(免許証が解錠キーになる)で行われるから、オーナーがユーザーへの配車にいちいち立ち会う必要はない。
こうしたカーシェアのサポート業務を行うことで、オーナーには一定のポイントが付与される。
内訳は、①「駐車場代相当額」と②「カーシェア売り上げの10%相当額」。例えば、月額3万円の駐車場を提供し、自らサポートしたカーシェアで月に(エニカの予想額である)10万円を売り上げたオーナーは、①3万円+②1万円=4万円相当のポイントを手にすることになる。
このポイント(金額)の範囲内で、オーナーは自ら管理する“マイカー”を利用できる。1回あたりの利用額は前述の契約クラスにより2分され、さらに、1万6000円(プレミアムクラス)と9800円(ベーシッククラス)の24時間パックをはじめ、時間制・距離制で細分される。……ので、ここでは詳細は省くが、使い方次第では獲得ポイント内で多くの人の自動車ニーズをまかなえる、というのがエニカ側の見込みである。
万が一、事故・修理のためにレンタルが休業状態になっても、①の駐車場ポイントは付与される。ということは、駐車場代は高ければ高いほど多くのポイントが得られるが、前述のとおり、契約の可否はエニカとの交渉次第。一方、得られたポイントは今回の0円マイカーに限らず、エニカの個人間カーシェアでも使えるから、マイカーの貸し出し中や他のクルマに乗りたいときは、そちらを利用する、という手もある。
だったらマイカーの存在意義が薄れそうだが、自分にひもづけられたこれらのマイカーには、オーナー向けの平日割引(プレミアムクラスで30%引き、ベーシッククラスで10%引き)が用意されるし、何より近場のマイ駐車場から発着できるというのがメリットになっている。
「面倒くささ」も決め手になる
こうした条件を前におトクかどうかの話をするなら、まず好感をもたれるのは「自宅に駐車場があって、ときどきクルマを使いたいのに、車両を所有していない人」だろう。たとえ値づけされていないスペースでも、相場に見合ったポイント付与用の価格を設定してもらえる。
ただ、オーナーとなる人の大半は、そうではない、「駐車場も所有車もないが、クルマは利用したいと考えている人」のはず。0円マイカーでは、駐車場を提供してレンタル業務に従事すれば、限度はあれどクルマが使える。一方、既存の個人間カーシェアリングは、駐車場契約は必要ないが、車種の“借り賃”はその都度支払う。お金の話に限るなら、駐車場代を出すか、車両のレンタル代を出すかの違いということになる。
いったいどちらがトクなのか?
結論を言ってしまえば、使い方次第。まったくもって「なんともいえない」。どちらが有利かは、どんな場所で、どれだけ使用するかで変わってくるし、エニカ側もその答えは持っていない。ただ先方の算段するところでは、クルマを頻繁に使う人は0円マイカーがふさわしく、あまり乗らない人は個人間カーシェアのほうが有利になる傾向があるという。それとて、アバウトなイメージでしかないけれど。
金銭的な損得勘定から興味を持った筆者としては、「決め手になるのは案外、そうしたコスト面ではないかもしれない」という印象も受けた。
0円マイカーは、オーナーとユーザーが直接会って貸し借りを行うエニカの既存のカーシェアと違い、車両を勝手に出し戻しするシステムだ。自身の個人間カーシェアの利用経験を振り返ってみるに、対人ストレスがあろうがなかろうが、初対面となれば待ち合わせ時間や身だしなみには気を遣う。その点、気軽さを第一に考える人にとって、会わずに貸せる0円マイカーは魅力的に違いない。
ベースが自分の駐車場であるのも大きい。エニカに限らず、カーシェアリングの発着場所(=受け渡し場所)は都合のいいところとは限らない。その点今回のサービスは、それを近所に定められる。見方によっては、「0円マイカーと個人間カーシェアリングのどちらを選ぶかは、面倒くささの許容度次第」と言えるかもしれない。
採算が合わなければ早期のクローズもありうるという、運営側にとってもチャレンジングな0円マイカー。初回となる第1期の契約枠は40人で、申し込みに必要な説明会は、あと5回(2019年5月26日に2回、5月29日、6月2日、6月5日に1回ずつ)開催される。
われこそはと思う方、一度アプローチしてみては?
(文と写真と編集=関 顕也)

関 顕也
webCG編集。1973年生まれ。2005年の東京モーターショー開催のときにwebCG編集部入り。車歴は「ホンダ・ビート」「ランチア・デルタHFインテグラーレ」「トライアンフ・ボンネビル」などで、子どもができてからは理想のファミリーカーを求めて迷走中。
-
ただいま鋭意開発中!? 次期「ダイハツ・コペン」を予想する 2025.10.13 ダイハツが軽スポーツカー「コペン」の生産終了を宣言。しかしその一方で、新たなコペンの開発にも取り組んでいるという。実現した際には、どんなクルマになるだろうか? 同モデルに詳しい工藤貴宏は、こう考える。
-
航続距離は702km! 新型「日産リーフ」はBYDやテスラに追いついたと言えるのか? 2025.10.10 満を持して登場した新型「日産リーフ」。3代目となるこの電気自動車(BEV)は、BYDやテスラに追いつき、追い越す存在となったと言えるのか? 電費や航続距離といった性能や、投入されている技術を参考に、競争厳しいBEVマーケットでの新型リーフの競争力を考えた。
-
新型「ホンダ・プレリュード」の半額以下で楽しめる2ドアクーペ5選 2025.10.9 24年ぶりに登場した新型「ホンダ・プレリュード」に興味はあるが、さすがに600万円を超える新車価格とくれば、おいそれと手は出せない。そこで注目したいのがプレリュードの半額で楽しめる中古車。手ごろな2ドアクーペを5モデル紹介する。
-
ハンドメイドでコツコツと 「Gクラス」はかくしてつくられる 2025.10.8 「メルセデス・ベンツGクラス」の生産を手がけるマグナ・シュタイヤーの工場を見学。Gクラスといえば、いまだに生産工程の多くが手作業なことで知られるが、それはなぜだろうか。“孤高のオフローダー”には、なにか人の手でしかなしえない特殊な技術が使われているのだろうか。
-
いでよ新型「三菱パジェロ」! 期待高まる5代目の実像に迫る 2025.10.6 NHKなどの一部報道によれば、三菱自動車は2026年12月に新型「パジェロ」を出すという。うわさがうわさでなくなりつつある今、どんなクルマになると予想できるか? 三菱、そしてパジェロに詳しい工藤貴宏が熱く語る。
-
NEW
MTBのトップライダーが語る「ディフェンダー130」の魅力
2025.10.14DEFENDER 130×永田隼也 共鳴する挑戦者の魂<AD>日本が誇るマウンテンバイク競技のトッププレイヤーである永田隼也選手。練習に大会にと、全国を遠征する彼の活動を支えるのが「ディフェンダー130」だ。圧倒的なタフネスと積載性を併せ持つクロスカントリーモデルの魅力を、一線で活躍する競技者が語る。 -
NEW
なぜ給油口の位置は統一されていないのか?
2025.10.14あの多田哲哉のクルマQ&Aクルマの給油口の位置は、車種によって車体の左側だったり右側だったりする。なぜ向きや場所が統一されていないのか、それで設計上は問題ないのか? トヨタでさまざまなクルマの開発にたずさわってきた多田哲哉さんに聞いた。 -
NEW
トヨタ・スープラRZ(FR/6MT)【試乗記】
2025.10.14試乗記2019年の熱狂がつい先日のことのようだが、5代目「トヨタ・スープラ」が間もなく生産終了を迎える。寂しさはあるものの、最後の最後まできっちり改良の手を入れ、“完成形”に仕上げて送り出すのが今のトヨタらしいところだ。「RZ」の6段MTモデルを試す。 -
ただいま鋭意開発中!? 次期「ダイハツ・コペン」を予想する
2025.10.13デイリーコラムダイハツが軽スポーツカー「コペン」の生産終了を宣言。しかしその一方で、新たなコペンの開発にも取り組んでいるという。実現した際には、どんなクルマになるだろうか? 同モデルに詳しい工藤貴宏は、こう考える。 -
BMW R1300GS(6MT)/F900GS(6MT)【試乗記】
2025.10.13試乗記BMWが擁するビッグオフローダー「R1300GS」と「F900GS」に、本領であるオフロードコースで試乗。豪快なジャンプを繰り返し、テールスライドで土ぼこりを巻き上げ、大型アドベンチャーバイクのパイオニアである、BMWの本気に感じ入った。 -
マツダ・ロードスターS(後編)
2025.10.12ミスター・スバル 辰己英治の目利き長年にわたりスバル車の走りを鍛えてきた辰己英治氏。彼が今回試乗するのが、最新型の「マツダ・ロードスター」だ。初代「NA型」に触れて感動し、最新モデルの試乗も楽しみにしていたという辰己氏の、ND型に対する評価はどのようなものとなったのか?