ポルシェ911スピードスター(RR/6MT)
最高のフィナーレ 2019.06.15 試乗記 スタイリッシュなオープンボディーに500psオーバーのハイチューンエンジンを組み合わせた限定車「ポルシェ911スピードスター」。このスペシャルモデルでどんな快楽が味わえるのか、イタリア・サルデーニャ島から報告する。 拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
キレッキレなのに快適
991型911のファイナルモデルとして1948台限定で販売される911スピードスターは、2018年にポルシェの70周年を記念して発表された「911スピードスター コンセプト」の市販版で、その中身は「911 GT3」のスパイダーバージョンというべき一台である。
エンジンは991-IIのGT3に搭載された自然吸気(NA)の4リッターユニットと基本的に同じだが、新たに250barにアップした高圧フューエルインジェクター、個別スロットルバルブ付きインテークシステムを装着したことで、最高出力510ps/8400rpmへとチューンナップ。欧州排出ガス基準EU6DGもガソリンパティキュレートフィルターを2基備えることでクリアするなど、アップデートされたものとなっている。ギアボックスは6段MTのみで、「911R」や991-IIのGT3に搭載されたのと同じものだ。
一方シャシーもGT3に準ずるもので、リアアクスルステア、ダイナミックエンジンマウント、PTV(ポルシェトルクベクタリング)、PSM(ポルシェスタビリティーマネジメントシステム)、PASM(ポルシェアクティブサスペンションマネジメントシステム)、PCCB(ポルシェセラミックコンポジットブレーキ)を標準で装備。そのほかフルCFRP製のボンネット、フロントフェンダー、リアフード、ステンレス製のエキゾーストシステムなどを採用し徹底的に軽量化した結果(6段MTを採用した理由のひとつはPDKより25kg軽いから)、911 GT3のわずか35kg増しとなる車重1465kgを実現している。
その効果は明らかで、鋭くキレのある走りはGT3そのもの。レッドゾーンの9000rpmまで軽々と吹け上がる4リッターNAエンジンはアイドリング状態から2速でも加速するほど扱いやすいうえ、オートブリッピング機能もセレクトできる6段MTとの相性も抜群。ロック機構だけが自動で、簡単に手動で開閉できるファブリック製のソフトトップを開け放てば、抜けのいい“NAサウンド”が楽しめるのも魅力のひとつである。
またダイナミックエンジンマウントが効いているのか、イタリア・サルデーニャの荒れたワインディングロードを飛ばしても、シャシーはガッチリした印象で、心配していたオープン化による剛性ダウンは特に感じられなかった。それどころか、リアステアの効果もあって、510psのRR車を操っているとは思えないほど常に姿勢は安定していて、驚くほどよく曲がる! ただし、これはカットスリックのような「ミシュラン・パイロットスポーツ カップ2」を履いたドライ路面での話で、ウエット走行ならば無理は禁物。実際、低い速度域でも何度かテールがブレイクしてスタビリティーコントロールのお世話になってしまった。
いずれにしろ、公道においては911スピードスターが911 GT3に勝るとも劣らない実力を持ったピュアスポーツであることに異論の余地はないが、もうひとつ忘れてならないのは、タウンスピードでの意外なまでの乗り心地の良さと、快適性の高さだ。軽量化をうたいエアコンとインフォテインメントシステムがオプション扱いになっているのはスピードスターらしいところだが、ウインドスクリーンが50mm低いにも関わらず空力のコントロールが抜群で、コックピットには不快な風の巻き込みはなく快適。クローズドにしても十分な居住空間と視界が確保されているので窮屈な思いをすることは一切なかった。
そんな911スピードスターの唯一の欠点は、既に1948台分のオーナーリストが埋まっていること。この素晴らしい出来栄えの4リッターNAと6段MTの組み合わせを、992のシャシーでも味わえる日がくるといいのだが……。
(文=藤原よしお/写真=ポルシェ/編集=関 顕也)
拡大 |
【スペック】
全長×全幅×全高=4562×1852×1250mm/ホイールベース=2457mm/車重=1465kg(DIN)/駆動方式=RR/エンジン=4リッター水平対向6 DOHC 24バルブ(510ps/8400rpm、470Nm/6250rpm)/トランスミッション=6MT/燃費=13.8リッター/100km<約7.2km/リッター>(欧州複合モード)/価格=26万9274ユーロ(ドイツ国内価格。邦貨にして約3310万円)

藤原 よしお
-
BMW iX3 50 xDrive Mスポーツ(4WD)【海外試乗記】 2025.12.12 「ノイエクラッセ」とはBMWの変革を示す旗印である。その第1弾である新型「iX3」からは、内外装の新しさとともに、乗り味やドライバビリティーさえも刷新しようとしていることが伝わってくる。スペインでドライブした第一報をお届けする。
-
BYDシーライオン6(FF)【試乗記】 2025.12.10 中国のBYDが日本に向けて放つ第5の矢はプラグインハイブリッド車の「シーライオン6」だ。満タン・満充電からの航続距離は1200kmとされており、BYDは「スーパーハイブリッドSUV」と呼称する。もちろん既存の4モデルと同様に法外(!?)な値づけだ。果たしてその仕上がりやいかに?
-
フェラーリ12チリンドリ(FR/8AT)【試乗記】 2025.12.9 フェラーリのフラッグシップモデルが刷新。フロントに伝統のV12ユニットを積むニューマシンは、ずばり「12チリンドリ」、つまり12気筒を名乗る。最高出力830PSを生み出すその能力(のごく一部)を日本の公道で味わってみた。
-
アウディS6スポーツバックe-tron(4WD)【試乗記】 2025.12.8 アウディの最新電気自動車「A6 e-tron」シリーズのなかでも、サルーンボディーの高性能モデルである「S6スポーツバックe-tron」に試乗。ベーシックな「A6スポーツバックe-tron」とのちがいを、両車を試した佐野弘宗が報告する。
-
トヨタ・アクアZ(FF/CVT)【試乗記】 2025.12.6 マイナーチェンジした「トヨタ・アクア」はフロントデザインがガラリと変わり、“小さなプリウス風”に生まれ変わった。機能や装備面も強化され、まさにトヨタらしいかゆいところに手が届く進化を遂げている。最上級グレード「Z」の仕上がりをリポートする。
-
NEW
ホンダ・プレリュード(前編)
2025.12.14思考するドライバー 山野哲也の“目”レーシングドライバー山野哲也が新型「ホンダ・プレリュード」に試乗。ホンダ党にとっては待ち望んだビッグネームの復活であり、長い休眠期間を経て最新のテクノロジーを満載したスポーツクーペへと進化している。山野のジャッジやいかに!? -
アストンマーティン・ヴァンテージ ロードスター(FR/8AT)【試乗記】
2025.12.13試乗記「アストンマーティン・ヴァンテージ ロードスター」はマイナーチェンジで4リッターV8エンジンのパワーとトルクが大幅に引き上げられた。これをリア2輪で操るある種の危うさこそが、人々を引き付けてやまないのだろう。初冬のワインディングロードでの印象を報告する。 -
BMW iX3 50 xDrive Mスポーツ(4WD)【海外試乗記】
2025.12.12試乗記「ノイエクラッセ」とはBMWの変革を示す旗印である。その第1弾である新型「iX3」からは、内外装の新しさとともに、乗り味やドライバビリティーさえも刷新しようとしていることが伝わってくる。スペインでドライブした第一報をお届けする。 -
高齢者だって運転を続けたい! ボルボが語る「ヘルシーなモービルライフ」のすゝめ
2025.12.12デイリーコラム日本でもスウェーデンでも大きな問題となって久しい、シニアドライバーによる交通事故。高齢者の移動の権利を守り、誰もが安心して過ごせる交通社会を実現するにはどうすればよいのか? 長年、ボルボで安全技術の開発に携わってきた第一人者が語る。 -
第940回:宮川秀之氏を悼む ―在イタリア日本人の誇るべき先達―
2025.12.11マッキナ あらモーダ!イタリアを拠点に実業家として活躍し、かのイタルデザインの設立にも貢献した宮川秀之氏が逝去。日本とイタリアの架け橋となり、美しいイタリアンデザインを日本に広めた故人の功績を、イタリア在住の大矢アキオが懐かしい思い出とともに振り返る。 -
走るほどにCO2を減らす? マツダが発表した「モバイルカーボンキャプチャー」の可能性を探る
2025.12.11デイリーコラムマツダがジャパンモビリティショー2025で発表した「モバイルカーボンキャプチャー」は、走るほどにCO2を減らすという車両搭載用のCO2回収装置だ。この装置の仕組みと、低炭素社会の実現に向けたマツダの取り組みに迫る。






































