レクサスIS300“Fスポーツ”プロトタイプ(FR/8AT)/IS300h“Fスポーツ”プロトタイプ(FR/CVT)/IS350“Fスポーツ”プロトタイプ(FR/8AT)
円熟のスポーツセダン 2020.08.17 試乗記 2020年秋の発売が予告されている、改良型の「レクサスIS」。登場から7年を経てのマイナーチェンジでその走りはどう変わったのか? クローズドコースで3モデルのプロトタイプに試乗し、実力を確かめた。実質的に“一新”レベル
この新しいISは、レクサス的にはマイナーチェンジという扱いになるらしい。ちなみに30系となる現行ISが登場したのは2013年。メルセデスやBMWもモデルライフは7年が基本。すなわち、フルモデルチェンジにはおあつらえ向きのタイミングでもある。
とあらば、「LS」や「LC」が採用するGA-Lプラットフォームを採用しての完全刷新というのが通常の流れだ。が、新型ISはアーキテクチャーを継承したこともあってだろう、先述の通りマイナーチェンジという話になっている。
ADAS(先進運転支援システム)の進化も目まぐるしく、パワートレインの変革も待ったなしの状況下で、それらを包括した総合的進化のための投資が難しいのか。そう邪推したりもしてみたが、開発をまとめた主査が話す理由は実に単純明快だった。いわく、重量や価格を想定内におさめたかった、と。
確かにGA-Lプラットフォームを採用する「クラウン」はナロートレッドにもかかわらず、2リッターターボの最安グレードで1690kgある。レクサスに望まれる装備や加飾、遮音等を加えながら、現状と同等以下の車重(1630kg)を達成するには難儀しそうだ。加えて、海外市場ではISのユーザー層が若く、スポーティーであることやアフォーダブルであることに対するプライオリティーが高いという背景も、キャリーオーバーを後押ししたのだろう。
とはいえ、新型ISで改良されたポイントは多岐にわたり、かつ大がかりだ。例えるなら「ゴルフ7」が「8」になったくらいのインパクトは十分に感じられる。ずうずうしくフルモデルチェンジと言い切ってもよかったように思うが、そのつつましさもまた日本のブランドらしさということだろうか。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
コツコツとリファイン
新型ISで最も重点的に手を加えられたのはシャシーまわりだ。タイヤ&ホイールの締結を、ハブから出たボルトで固定するハブナット型ではなく、ハブに直接ボルトで固定するハブボルト型へと変更。締結トルクの向上も相まっての剛結化と、4輪で1kgのバネ下重量軽減を両立した。反面、脱着時には位置決めなどで手間を要するため今まで採用が見送られてきたが、効果が認められれば他のレクサスのモデルでも展開したいと主査は期待を寄せる。
バネ下まわりはジオメトリーをそのままに、アーム類を鍛造アルミ化したりコイルやスタビライザーに高応力材を使ったりと、軽量・高剛性化がくまなく尽くされた。また、バンプラバーを低反発の特性とし、微小入力の応答性が高いスイングバルブダンパーを設定するなど、乗り心地に関してもきめ細かなリファインが施されている。これらの施策を受けてタイヤサイズは幅側がひと回り大きくなり、全幅は30mm拡大の1840mmとなった。
ボディーまわりではサイドメンバーの“日の字断面”化、ラジエーターサポートの強化、ピラー構造の見直し、開口部のスポット増しなどで剛性強化を図った。また、ドアパネルやトランクリッドなどを軽量化し慣性モーメントの低減に努めている。
パワー&ドライブトレイン関係は前回のマイナーチェンジでアップデートされたものをキャリーオーバーしているが、2リッターターボはドライバーの意思をアクセル操作などから推測し、8段ATとの連携効率を最適化するアダプティブ制御をより進化させている。また、2.5リッターハイブリッドはバッテリーのマージンをより積極的に持ち出してモーターの使用領域を拡大する新たな駆動制御を採り入れた。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
これまでのネガにサヨナラ
こういった刷新項目を総合的にまとめ上げるべく走り込んだのが、新設された愛知の下山テストコースだ。
従来のテストコースとは一線を画する、性悪な入力が連続するその場所で、ドライバーの意思を正確に反映し、余裕や安心感をもって意のままに走ることができるか。単に限界性能を向上させるのではなく、そういった点にフォーカスして熟成が重ねられたという。
発売前のプロトタイプということもあって、試乗はクローズドコース(千葉)で行われた。グレードはすべて“Fスポーツ”ということで、新たに設定された19インチタイヤを履いている。
同じコースは前型のISでも走ったことがあるが、違いは転がり始めからはっきりと伝わってくる。摺動(しゅうどう)部の精度や剛性がひと回り高まったことによる滑らかな滑走感は、前型はもとより、レクサスの他の銘柄とも一線を画するものかもしれない。細かな入力に対するバネ下の動きも軽快で、タイヤまわりから伝わる情報は濁りなくクリアだ。
新型ISの進化がはっきりと伝わるのは、一気に高負荷がドサッと動く低速コーナーよりも、じわじわとタイヤやサスに負荷が加わる中高速域のコーナーかもしれない。そこでの上手に抑えられたロールスピードや、ロール量の定常的な推移は今までのISとは大きく異なるところで、ドライバーに操る自信や信頼感をより強く抱かせてくれる。コーナーの安定性も確実に向上しており、限界を超えてリアブレークする際の唐突さもうまく丸められるなど、これまでのシャシーが抱えていたネガはほぼきれいに取り去られているという印象だった。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
他に影響を与える一台
パワートレインにおいては、額面には表れずとも実効的なパワフルさが確実に加わったハイブリッドの進化はさておき、回転フィールやサウンドがリファインされ、気持ちよさの面でもがっかりさせることのなくなったターボの変貌ぶりが印象深い。
これであと300rpmほど余計に回ってくれれば……というのは無理筋かもしれないが、トップエンドのパワーのドロップ感などにもう少し色味がのれば、気持ちよさはさらに増すと思う。
もちろん、今や世界的に見ればこの車格にはトゥーマッチとなった3.5リッターのV6に、ある種のノスタルジーを託しながら乗るのも楽しいだろう。そんなパワーをまったく持て余さない強靱(きょうじん)さも、トルクに任せてゆったり走るにふさわしい柔らかさも、濃密なフィーリングに見合う上質感も、このこなれたシャシーは備えている。
このマイナーチェンジで30系のISは、再び世界のライバルと相まみえるというよりも、レクサスが掲げる「すっきりと奥深い走り」という目標に忠実に進化を遂げた。結果、自分の世界が生まれ始めているのではないかという気がする。確かに薹(とう)が立ってはいるが、クルマとは何が何でも新しければいいというものでもない。新しいISはレクサス内部においても、いい刺激を与える存在になるのではないだろうか。
(文=渡辺敏史/写真=荒川正幸/編集=関 顕也)
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
テスト車のデータ
レクサスIS300“Fスポーツ”プロトタイプ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4710×1840×1440mm
ホイールベース:2800mm
車重:1640kg
駆動方式:FR
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:245PS(180kW)/5200-5800rpm
最大トルク:350N・m(35.7kgf・m)/1650-4400rpm
タイヤ:(前)235/40R19 92Y/(後)265/35R19 94Y(ブリヂストン・ポテンザS001L)
燃費:12.2km/リッター(WLTCモード ※社内測定値)
価格:--
オプション装備:--
テスト車の年式:--年型
テスト開始時の走行距離:1649km
テスト形態:トラックインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
レクサスIS300h“Fスポーツ”プロトタイプ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4710×1840×1440mm
ホイールベース:2800mm
車重:1690kg
駆動方式:FR
エンジン:2.5リッター直4 DOHC 16バルブ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:CVT
エンジン最高出力:178PS(131kW)/6000rpm
エンジン最大トルク:221N・m(22.5kgf・m)/4200-4800rpm
モーター最高出力:143PS(105kW)
モーター最大トルク:300N・m(30.6kgf・m)
システム総合出力:220PS(162kW)
タイヤ:(前)235/40R19 92Y/(後)265/35R19 94Y(ブリヂストン・ポテンザS001L)
燃費:18.0km/リッター(WLTCモード ※社内測定値)
価格:--
オプション装備:--
テスト車の年式:--年型
テスト開始時の走行距離:2023km
テスト形態:トラックインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:--km/リッター
拡大 |
拡大 |
拡大 |
レクサスIS350“Fスポーツ”プロトタイプ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4710×1840×1440mm
ホイールベース:2800mm
車重:1660kg
駆動方式:FR
エンジン:3.5リッターV6 DOHC 24バルブ
トランスミッション:8段AT
最高出力:318PS(234kW)/6600rpm
最大トルク:380N・m(38.7kgf・m)/4800rpm
タイヤ:(前)235/40R19 92Y/(後)265/35R19 94Y(ブリヂストン・ポテンザS001L)
燃費:10.7km/リッター(WLTCモード ※社内測定値)
オプション装備:--
テスト車の年式:--年型
テスト開始時の走行距離:551km
テスト形態:トラックインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター

渡辺 敏史
自動車評論家。中古車に新車、国産車に輸入車、チューニングカーから未来の乗り物まで、どんなボールも打ち返す縦横無尽の自動車ライター。二輪・四輪誌の編集に携わった後でフリーランスとして独立。海外の取材にも積極的で、今日も空港カレーに舌鼓を打ちつつ、世界中を飛び回る。
-
トヨタbZ4X Z(FWD)【試乗記】 2026.2.14 トヨタの電気自動車「bZ4X」が大きく進化した。デザインのブラッシュアップと装備の拡充に加えて、電池とモーターの刷新によって航続可能距離が大幅に伸長。それでいながら価格は下がっているのだから見逃せない。上位グレード「Z」のFWDモデルを試す。
-
日産リーフB7 G(FWD)【試乗記】 2026.2.11 フルモデルチェンジで3代目となった日産の電気自動車(BEV)「リーフ」に公道で初試乗。大きく生まれ変わった内外装の仕上がりと、BEV専用プラットフォーム「CMF-EV」や一体型電動パワートレインの採用で刷新された走りを、BEVオーナーの目線を交えて報告する。
-
ホンダN-ONE RS(FF/6MT)【試乗記】 2026.2.10 多くのカーマニアが軽自動車で唯一の“ホットハッチ”と支持する「ホンダN-ONE RS」。デビューから5年目に登場した一部改良モデルでは、いかなる改良・改善がおこなわれたのか。開発陣がこだわったというアップデートメニューと、進化・熟成した走りをリポートする。
-
日産キャラバン グランドプレミアムGX MYROOM(FR/7AT)【試乗記】 2026.2.9 「日産キャラバン」がマイナーチェンジでアダプティブクルーズコントロールを搭載。こうした先進運転支援システムとは無縁だった商用ワンボックスへの採用だけに、これは事件だ。キャンパー仕様の「MYROOM」でその性能をチェックした。
-
無限N-ONE e:/シビック タイプR Gr.B/シビック タイプR Gr.A/プレリュード【試乗記】 2026.2.7 モータースポーツのフィールドで培った技術やノウハウを、カスタマイズパーツに注ぎ込むM-TEC。無限ブランドで知られる同社が手がけた最新のコンプリートカーやカスタマイズカーのステアリングを握り、磨き込まれた刺激的でスポーティーな走りを味わった。
-
NEW
レクサスRZ350e“バージョンL”(FWD)【試乗記】
2026.2.16試乗記「レクサスRZ」のエントリーグレードがマイナーチェンジで「RZ300e」から「RZ350e」へと進化。パワーも一充電走行距離もググっとアップし、電気自動車としてのユーザビリティーが大幅に強化されている。300km余りのドライブで仕上がりをチェックした。 -
NEW
イタリアの跳ね馬はiPhoneになる!? フェラーリはなぜ初BEVのデザインを“社外の組織”に任せたか?
2026.2.16デイリーコラムフェラーリが初の電動モデル「ルーチェ」の内装を公開した。手がけたのは、これまで同社と縁のなかったクリエイティブカンパニー。この意外な選択の真意とは? 主要メンバーにコンタクトした西川 淳がリポートする。 -
NEW
第329回:没落貴族再建計画
2026.2.16カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。JAIA(日本自動車輸入組合)が主催する報道関係者向け試乗会に参加し、最新の「マセラティ・グレカーレ」に試乗した。大貴族号こと18年落ち「クアトロポルテ」のオーナーとして、気になるマセラティの今を報告する。 -
トヨタ・カローラ クロス“GRスポーツ”(後編)
2026.2.15思考するドライバー 山野哲也の“目”レーシングドライバー山野哲也が「トヨタ・カローラ クロス“GRスポーツ”」に試乗。ハイブリッドシステムを1.8リッターから2リッターに積み替え、シャシーも専用に鍛え上げたスポーティーモデルだ。後編ではハンドリングなどの印象を聞く。 -
トヨタbZ4X Z(FWD)【試乗記】
2026.2.14試乗記トヨタの電気自動車「bZ4X」が大きく進化した。デザインのブラッシュアップと装備の拡充に加えて、電池とモーターの刷新によって航続可能距離が大幅に伸長。それでいながら価格は下がっているのだから見逃せない。上位グレード「Z」のFWDモデルを試す。 -
核はやはり「技術による先進」 アウディのCEOがF1世界選手権に挑戦する意義を語る
2026.2.13デイリーコラムいよいよF1世界選手権に参戦するアウディ。そのローンチイベントで、アウディCEO兼アウディモータースポーツ会長のゲルノート・デルナー氏と、F1プロジェクトを統括するマッティア・ビノット氏を直撃。今、世界最高峰のレースに挑む理由と、内に秘めた野望を聞いた。






























































