メルセデス・ベンツGLB250 4MATICスポーツ(4WD/8AT)
ワイルドだっていいんじゃね!? 2020.08.21 試乗記 主要な自動車ブランドの例にも漏れず、さまざまなSUVをラインナップするメルセデス・ベンツ。その一翼を担う新型車「GLB」とは、どんなクルマなのか? ガソリンターボの「GLB250 4MATICスポーツ」に試乗して確かめた。“B”ならではの価値はある
さる2020年6月25日、メルセデス・ベンツ日本が国内で発表した、同社にとって9番目となる、まったく新しいSUVがGLBである。『webCG』周辺では出た瞬間から30代を中心に話題となっていて、やっぱり、四角いボディースタイルが彼らには新鮮に映るらしい。
たしかにSUVとして存在感がある。その名の通り、「Bクラス」の、ということは「Aクラス」ともプラットフォームを共用する、エンジン横置きの前輪駆動、ないしは4WDだけれど、ボディーサイズは「GLC」とそう変わらない。
全長×全幅×全高は、4650×1845×1700mm。「GLC300 4MATIC」より20mmほど短くて、45mmほど細いけれど、55mm背が高い。ルーフレール付きで、そもそも最低地上高がGLCより30~40mmほど高い202mmある。それだけ悪路走破性が高い。悪路には行かずとも、運転席に着座したとき、ドライバーの視点がそれだけ高い。たとえ信号待ちで隣にGLCが並んだとしても、こちらのほうが見下ろす立場にある。ふふふ。
しかもGLBは、その四角いデザインゆえ、Aピラーが比較的立っていて、室内が広々と感じられる。フロントスクリーンが立っていて、ボディーがスクエアなので見切りもよい。見切りはよいほうが運転しやすいことは、いまさら申し上げるまでもない。
割り切りの3列シート
もうひとつ、GLCにはない機能として、エンジン横置きプラットフォームの利点を生かし、3列シートの7人乗車を実現している。このために、ホイールベースは2830mmと、たっぷりとっている。「GLA」はAクラス、Bクラスと同じ2730mmだから、100mm長い。
ただし、肝心のその3列目シートは見るからに緊急用で、大変狭苦しい。狭苦しいがゆえに、乗ること自体が運動であり、冒険である。2列目の座席を最大限前に出しても、足元の空間はミニマムで、お尻が膝より落とし込まれた姿勢を強いられる。2時間乗るなら、たぶん苦しくて一生の思い出になるかもしれない。でも、20分だったら、その便利さに「GLBにしてよかった」と思うだろう。
カタログには、「乗車時の安全確保のため、身長168cm以下の乗員のみが使用できます」と書いてある。メーカーも割り切っているわけだ。
GLBの日本仕様は2リッターディーゼルの「200d」(512万円)と、2リッターガソリンを搭載する4WD車「250 4MATICスポーツ」の2本立てになっている。ディーゼルこそSUVにピッタリのような気がするけれど、200dはいまのところ前輪駆動しか設定がない。いかにもオフローダーのカタチをした、3列7人乗りのコンパクトなミニバンなのだ。
快楽を得るならスポーツモードで
今回、試乗した250 4MATICスポーツは、GLBの高性能モデルで、1991ccの直列4気筒ガソリンターボは、最高出力224PS/5500rpm、最大トルク350N・m/1800-4000rpmを発生する。「A250 4MATIC」と同じこのM260型エンジン、ガバチョとアクセルを踏み込むと、プシューっというウェイストゲートが開いているとおぼしきサウンドを発し、レッドゾーンの始まる6250rpmまで滑らかに回って、4000rpmあたりから快音を奏で始める。
ターボがさく裂したときにドバッとパワーが湧き出す一方、コンスタントスロットルだと、新開発の8段デュアルクラッチ式オートマチックが1500rpm以下にエンジン回転を抑えてとても静かな印象を与える。もちろん燃費を稼ぐためだ。
低燃費と高出力の二兎(にと)を追う高効率エンジンゆえ、350N・mという、ぶ厚い低中速トルクを得るには、ほんのこころもち待つ必要がある。ドライブモードを「コンフォート」から「スポーツ」にすれば、8段DCTが低いギアを選択して、このもどかしさは解消される。けれど、なんだか悪いことをしているような気がして、後ろめたい。そういう時代に私たちは生きている。このエンジン、静粛性をこそ、楽しむべきなのかもしれない。
新開発の8段DCTは、Aクラスの7段DCTよりギアが1枚増えているわけだけれど、変速がすばらしくスムーズなため、多段化がまったく気にならない。よくも悪くも存在感が薄い。実は燃費に貢献するという大きな仕事を裏方として行っている。
電子制御の4WDシステムは前後トルク配分を、100:0から50:50まで、天候や路面状況など条件に応じて、最適な駆動力を得るべく変化させる。フツウにドライブしている限り、体感上はさっぱりわからない。トルクステアがほとんどないのと、高速スタビリティーが高いのは4MATICのおかげなのだろう、と推測するのみである。
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あまりの硬さにビックリ
乗り心地は、スポーツを名乗るだけあって、基本的に硬い。GLBは可変ダンパーを持っていない。サスペンションのチューニングが3種類あり、200dはコンフォートが標準、オプションでスポーツコンフォートが選べる。250 4MATICスポーツはスポーツサスペンションが標準で、これ以外の選択肢はない。250 4MATICスポーツを選んだ時点で、硬いのがお好きなひと向きとなる。柔らかいのがお好きなひとは200dを、ということなのである。
であるにしても、20インチのホイールが標準の250 4MATICスポーツは硬い。ちなみに、200dは18インチが標準である。試乗車はブリヂストンの「アレンザ」というSUV専用のスポーツタイヤを履いていた。235/40という薄さである。スムーズな路面では大変スムーズに感じられるのは、駆動系のスムーズさのたまものだろうけれど、路面が荒れていると、昔のラバーコーンの「Mini」並みに軽く跳ねる。
このクルマが対象にしている若者、あるいはヤング・アット・ハートな方たちにとって、乗り心地の硬さなんて問題にならないのだろう。むしろ、ワイルドでいいんじゃね。と思ってらっしゃるにちがいない。筆者も、ラバーコーンのMiniに乗っている頃は、いやはや、ひどい乗り心地だ、と思いつつ、喜んでいた。
そもそも、テクノロジーの発達によって、生活が快適になりすぎ、リアルな感覚がうせつつあることに危機感を抱いているようなひとたちが選ぶクルマなのだろう、GLB250 4MATICスポーツは。
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乗り心地か 安心感か
ボディー剛性の高さと強力なブレーキは、さすがメルセデスである。
「アクティブディスタンスアシスト・ディストロニック(自動再発進機能付き)」という長い名前の運転支援システムは、渋滞時にグイグイ攻めるように前に進む。その力強い前進ぶりにドイツ魂、メルセデス魂を見る思いがした。高速巡航からの加速は、高効率エンジンゆえだろう、こころもち時間がかかると感じる場面もあった。
価格は696万円と絶対的には高価だけれど、ナビゲーション機能を含むMBUX、「Hi、メルセデス」と話しかけると答えてくれるインフォテインメントシステムも、本革シートも標準装備する。200dは、どちらもオプションで、もしこれらを付けるとなると、前者が18万9000円、後者がアンビエントライトとブラウンウォールナットウッドインテリアトリムのセットで26万3000円。さらに250では標準のヘッドアップディスプレイも加えると16万8000円必要になる。
それでも、コンフォートサスペンションと18インチホイールで、乗り心地が250よりもっとよいであろうディーゼルの200dは、個人的に大いに気になる。東京周辺だったら雪は年に1、2回だし、前輪駆動で十分だ。燃費ももっといいだろう。いや、でも、4WDにしておけば、行動範囲が広がることは疑いない……。
悩ましいですなぁ。ま、ご自分のお好きなほうを選択されるのが一番である。どちらもGLB、四角いボディーを持っていることに変わりはない。それが、一番大事。
(文=今尾直樹/写真=小林俊樹/編集=関 顕也)
テスト車のデータ
メルセデス・ベンツGLB250 4MATICスポーツ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4650×1845×1700mm
ホイールベース:2830mm
車重:1760kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:224PS(165kW)/5500rpm
最大トルク:350N・m(35.7kgf・m)/1800-4000rpm
タイヤ:(前)235/45R20 96W/(後)235/45R20 96W(ブリヂストン・アレンザ)
燃費:12.0km/リッター(WLTCモード)
価格:696万円/テスト車=696万円
オプション装備:なし
テスト車の年式:2020年型
テスト車の走行距離:1161km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(1)/高速道路(8)/山岳路(1)
テスト距離:378.7km
使用燃料:35.0リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:10.8km/リッター(満タン法)/11.0km/リッター(車載燃費計計測値)

今尾 直樹
1960年岐阜県生まれ。1983年秋、就職活動中にCG誌で、「新雑誌創刊につき編集部員募集」を知り、郵送では間に合わなかったため、締め切り日に水道橋にあった二玄社まで履歴書を持参する。筆記試験の会場は忘れたけれど、監督官のひとりが下野康史さんで、もうひとりの見知らぬひとが鈴木正文さんだった。合格通知が届いたのは11月23日勤労感謝の日。あれからはや幾年。少年老い易く学成り難し。つづく。
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