第198回:RSのRS違い
2021.01.18 カーマニア人間国宝への道オートマですよ
担当サクライ君から、ステキな提案が届いた。「今度『GRヤリス』を編集部で借りるんですが、お乗りになりますか」。
GRヤリスといえば、話題の激速国産コンパクト。モータージャーナリストが多数購入していることからもわかるように、カーマニア的に大変な重みを持つモデルである。
ただ、もともとドブス(私見です)のヤリスを戦闘的なルックスに仕上げているだけに、モテないオーラも非常に強い。つまりカーマニアとして、いろいろな意味で心をかき乱されるクルマなのである。
私は「乗る乗る~!」と即答した。
1都3県に緊急事態宣言が出る前夜。サクライ君がGRヤリスでわが家に乗りつけた。運転席に乗り込んでシートベルトを締め、いざ走りだそうとして驚愕(きょうがく)。
オレ:これ、オートマじゃん!
サクライ:オートマです。
オレ:オートマのGRヤリスって、あんまり速くないヤツだよね?
サクライ:……でも、ここまで(走ってきた印象は)悪くない感じでしたよ。
オートマというかCVTのGRヤリスが悪くないことは、私も知っている。富士スピードウェイのショートサーキットで開催された試乗会にて、「これ、意外と速いし、楽しいじゃん!」と思ったのを覚えている。
しかし、『webCG』の編集者からわざわざ「GRヤリス、お乗りになりますか?」と提案されたのだから、最強の1.6リッター直3ターボ272PSフルタイム4WD自動ブリッピング機能付き6段MTモデル「RZ」だと思うのが自然だろう。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
最近のトヨタはマニアにも優しい
オレ:CVTも悪くないのは知ってるけど、これ、ターボ付いてないでしょ?
確認したところ、やっぱり1.5リッター3気筒自然吸気120PS前輪駆動の「RS」であった。RSなんて聞くと最強の「GT3 RS」かと思ってしまうが、違うのである。
サクライ:すいません……。GRヤリスの詳細を知らなくて。
サクライ君は長年自動車メディアで働いていて、スレて鈍感になっている。そういう編集者は少なくない。その点私はまだ、「これ、モテないだろうなぁ」とか言いつつ興味津々なので、カーマニアとしてスレてな~い!
気を取り直して、CVTのGRヤリスRSで首都高へ向かう。するとどうだ。本当に悪くない! というより、とてもイイ!
オレ:このクルマ、足まわりがとってもいいね。
サクライ:そうですよね。
オレ:スポーティーだけど路面からの突き上げが小さいね! 特に首都高のジョイントを乗り越える時は、まるで「ルノー・メガーヌR.S.」みたいだね!
メガーヌR.S.は、日本で大人気につき、ルノー・スポールの開発部隊が日本でわざわざテストしてサスをセッティングした。それにとっても近い感覚なのである。
オレ:このクルマ、目をつぶって乗ったら、メガーヌR.S.と区別つかないよ!
サクライ:そうかもしれません。
オレ:パワーも普通に走れば十分だし、エンジンフィールもいい。いや~、いいクルマだなぁ。最近のトヨタは本当にいいクルマつくるなぁ。わざわざカーマニアのために……。ありがたくて涙が出るね!
サクライ:同感です。
GRヤリスの詳細を何も知らなかったくせに、よく言うわ!
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
スイスポの偉大さを再確認
こうして、オッサン2名を乗せたGRヤリスは、無事辰巳PAに到着した。
うーむ、驚くほどクルマが少ない。このところ辰巳に来るたびにモーターショー状態だったのに、こんなにガラガラなのは久しぶりだ。緊急事態宣言イブだからだろうか。それとも単に寒波のせいだろうか。
夜の辰巳で見る黒いGRヤリスは、それこそメガーヌR.S.みたいに見えた。少なくとも「ルーテシアR.S.」とは見間違えそうだ。「モテないカーの帝王」とか言ってたけど、これ、そんなにモテないこともないかもしれない!
帰路は助手席である。
女子気分で乗っていても、コンフォート性に関して不満はなかった。目をつぶって座っていれば、ドイツ製のプレミアムコンパクトのようだ。安っぽいダッシュボードも暗くてよく見えないし。
オレ:ホントにいいクルマだね~。で、いくらだっけ。
サクライ:えっと、265万円です。
オレ:うーん、265万円で120PSのCVTか……。
私の中で、カーマニアの警告音がピコピコ鳴った。
オレ:サクライ君! これを買うなら絶対「スイフトスポーツ」だよ!
サクライ:ですか?
オレ:だってスイスポは1.4リッターターボの140PSで、オートマだって6段トルコンだよ! それでたったの200万円ちょいだよ! ドアも4枚あって便利だし! このGRヤリスRSを選ぶ理由があるとしたら、ラリーに出るとかだけっしょ!?
サクライ:そ、そうですね。
GRヤリスRS。確かにいいクルマだ。しかし私は最終的に、スイスポの偉大さを再確認し、猛烈に乗りたくなったのだった。スイスポ最高!
(文=清水草一/写真=清水草一、webCG/編集=櫻井健一)

清水 草一
お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。
-
第336回:やっぱり絶交! 2026.5.25 清水草一の話題の連載。夜の首都高に200台の台数限定で販売される「マツダ スピリット レーシング・ロードスター12R」で出撃した。手作業で組まれた2リッター直4エンジンを搭載するマツダ入魂のスポーツモデルに、カーマニアは何を感じた?
-
第335回:水平尾翼が効いてるのかな 2026.5.11 清水草一の話題の連載。フルモデルチェンジで2代目となった「シトロエンC5エアクロス」で、夜の首都高に出撃した。最新のデザイン言語を用いて進化した内外装とマイルドハイブリッドの走りに、元シトロエンオーナーは何を感じた?
-
第334回:親でもここまではしてくれまい 2026.4.27 清水草一の話題の連載。先日試乗した「トヨタGRヤリスRZ“ハイパフォーマンス”+エアロパフォーマンスパッケージ」はすごかった。MTと縦引きパーキングブレーキの組み合わせを用意してくれるトヨタは、カーマニアにとってもはや神である。
-
第333回:毛が生えようが、ハゲようが 2026.4.13 清水草一の話題の連載。「ジープ・アベンジャー」に追加設定された4WDモデル「アベンジャー4xeハイブリッド」で夜の首都高に出撃した。ステランティスで広く使われるマイルドハイブリッドパワートレインと4WDの組み合わせやいかに。
-
第332回:クルマ地味自慢 2026.3.30 清水草一の話題の連載。最近、年齢とともに地味なモデルが大好きになった。そんななか、人気の「フォレスター」や「クロストレック」の陰にひっそりと隠れたスバルを代表する地味モデル「インプレッサ」に試乗。果たしてその印象は?
-
NEW
まさしく桁違いの1169PS&2000N・m 新型「メルセデスAMG GT 4ドアクーペ」が搭載する数々の新機軸
2026.5.27デイリーコラム2025年発表のコンセプトカー「メルセデスAMG GT XX」が新型「メルセデスAMG GT 4ドアクーペ」として正式にデビューした。その中身は100%電気自動車であり、上位グレードは最高出力1169PSという途方もないスペックを誇る。技術的ハイライトを解説する。 -
NEW
第114回:メイク・アメリカ・グレート・アゲイン!(前編) ―「トヨタ・タンドラ」の導入に対する元カーデザイナーの本音―
2026.5.27カーデザイン曼荼羅「トヨタ・タンドラ」が日本にやってくる!? トランプ大統領のゴリ押しと、トヨタ&ホンダによるアメリカ生産車の日本導入決定により、今にわかに注目を集めている“アメリカのクルマ”。かの地で育まれた特殊な造形美を、カーデザインの識者はどう見ているのか? -
車載カメラが普及した今、“デジタルサイドミラー”が主流にならないのはなぜか?
2026.5.26あの多田哲哉のクルマQ&Aサイドミラーの役割をカメラが担う“デジタルサイドミラー”は、レクサスやアウディなどで採用例があったものの、普及するには至っていない。その決定的な理由はなにか? 元トヨタの車両開発者、多田哲哉さんが語る。 -
マツダ スピリット レーシング・ロードスター12R(FR/6MT)【試乗記】
2026.5.26試乗記販売台数わずか200台の限定車「マツダ スピリット レーシング・ロードスター12R」に試乗。スーパー耐久レース参戦をはじめとするマツダのモータースポーツ活動を担うサブブランドが生み出した初の市販コンプリートカーは、いかなる走りをみせるのか。 -
買った後にもクルマが進化! トヨタ&GAZOO Racingが提供するアップデートサービスのねらいと意義
2026.5.25デイリーコラムGAZOO Racingが「トヨタGRヤリス/GRカローラ」の新しいソフトウエアアップデートを発表! 競技にも使える高度な機能が、スマートフォンのアプリで調整できるようになった。その詳細な中身と、GRがオーナーに提供する“遊びの機会”の意義を解説する。 -
第336回:やっぱり絶交!
2026.5.25カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。夜の首都高に200台の台数限定で販売される「マツダ スピリット レーシング・ロードスター12R」で出撃した。手作業で組まれた2リッター直4エンジンを搭載するマツダ入魂のスポーツモデルに、カーマニアは何を感じた?







































