キャデラックCT5スポーツ(4WD/10AT)
お値段以上の気持ちよさ 2021.04.17 試乗記 キャデラックの新型ミッドサイズセダン「CT5」が日本上陸。早速そのステアリングを握った筆者は、ドイツ御三家の高級サルーンにも引けを取らない、洗練された走りに驚かされたのだった。見た目だけのクルマじゃない
2021年より日本への導入が始まったキャデラックCT5の全長は4925mm。メルセデス・ベンツの「Eクラス」や「アウディA6」とガチンコ勝負になるサイズだ。けれども、「アウディにしようか、それともキャデラックにしようか」と悩む人は少ないだろうと推測する。
なぜならコンセプトカーの「エスカーラ」をほぼほぼ、まんまそのまま再現したルックスは、LEDライトを組み合わせた先鋭的なフロントマスクといい、ファストバックスタイルを採るリアビューといい、個性的で好き嫌いが分かれると想像するからだ。
ほかのクルマと比べて選ぶというより、「この未来的なカッコにグッときた!」と飛びつくのがキャデラックCT5だろう。と、思いながら乗り込むと、よい意味で裏切られる。滑らかな乗り心地とパワートレイン、ヤル気になった時のアジリティーの高さなどは、まさにEクラスやA6、あるいはBMWの「5シリーズ」あたりと真っ向勝負する出来のよさなのだ。とがったモード服をまとった青年に話しかけたら、知的で温和な好青年だった、というような意外性がある。
意外に感じたドライブフィールについて記す前に、キャデラックCT5の概要を説明すると、同ブランドの「CTS」の後継モデルとして2019年春のニューヨークモーターショーで発表された。日本仕様のパワートレインは2リッターの直列4気筒ターボエンジンと10段ATの組み合わせで、「プラチナム」と「スポーツ」の2グレード構成となる。クロームのフロントグリルが豪奢(ごうしゃ)な印象を与える前者が後輪駆動、黒いメッシュグリルが精悍(せいかん)な後者が四輪駆動で、今回試乗したのはキャデラックCT5スポーツだ。
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上品にしてスポーティー
走りだした瞬間に感心するのは、パワートレインが素晴らしく洗練されていることだ。2リッターの直4は、つきたての餅のように滑らかでむっちりとしたトルクを紡ぎ、10段ATはいかにも効率よくそのトルクを地面に伝える。もち米がひと粒も無駄になっていない。
アクセルペダルを踏み込めば、乾いた音が盛り上がるのと同時に、直4らしいパンチ力も味わえる。キックダウンでもATはシームレスにギアを落としてくれるから、ドライバーは上品にスポーティネスを堪能できる。
“上品スポーティー”なのは乗り心地も同じ。1990年代ぐらいのアメ車、具体的には5代目「キャデラック・セビル」あたりが足腰の筋肉を鍛えて、凸凹を乗り越えた時のふんわり感は残しつつ、その後で訪れる上下動をビシッと抑えているような、気持ちのいい乗り心地だ。
コーナーではしっかりと踏ん張るし、なによりステアリングから路面の情報がきちんと伝わってくるから気持ちがいい。「気持ちがいい」という表現が連続してしまったけれど、乗っていて気持ちがいいクルマなのだ。
驚いたのは価格設定で、筆者の想像より100~150万円安かった。ラグジュアリーセダンにお買い得という表現はどうかと思うけれど、この中身でこの価格はバリュー・フォー・マネーであることは間違いない。
今回は都心での短時間の試乗だったけれど、じっくり試してみたい秀作だった。
(文=サトータケシ/写真=田村 弥/編集=関 顕也)
【スペック】
全長×全幅×全高=4925×1895×1445mm/ホイールベース=2935mm/車重=1760kg/駆動方式=4WD/エンジン=2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ(最高出力:240PS/5000rpm、最大トルク:350N・m/1500-4000rpm)/トランスミッション=10段AT/燃費=--km/リッター/価格=620万円

サトータケシ
ライター/エディター。2022年12月時点での愛車は2010年型の「シトロエンC6」。最近、ちょいちょいお金がかかるようになったのが悩みのタネ。いまほしいクルマは「スズキ・ジムニー」と「ルノー・トゥインゴS」。でも2台持ちする甲斐性はなし。残念……。
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