モト・グッツィV7スペシャル(6MT)
エンジンLOVERにささぐ 2021.05.29 試乗記 イタリアの名門、モト・グッツィのネイキッドバイク「V7」。新開発の850ccエンジンを得た最新型では、どんな走りが楽しめる? クラシカルな外観が特徴のグレード「V7スペシャル」で確かめた。大切にしてきたパワーユニット
熱狂的なファン以外にとってモト・グッツィは、“そういえば”的な存在だと思う。二輪の分類をエンジンの種類で行ったときには決して外せないし、何より縦置きVツインというエンジンを半世紀以上も世に送り出し続けているメーカーはほかにないから。
いわば独創的。言い方を変えれば偏屈。だからこそ熱狂的な支持を集めるモト・グッツィは、今年で創業100周年を迎えるそうな。記念すべきアニバーサリーなので創業秘話を紹介したい。
時は第1次世界大戦。創設されて間もないイタリア空軍で3人の男が出会う。モーターサイクル好きのカルロ・グッツィと、有名な二輪レーサーのジョバンニ・ラベッリ。そして資産家御曹司のジョルジオ・パローディ。彼らは戦火の中で、毎日のように終戦後の夢を語り合っていたという。その夢とは、二輪メーカーの起業だった。
1918年に戦争が終わると、彼らは夢の実現を急いだ。1921年には「8HP Normale」という市販車を発売。しかし、終戦後に事故で命を落としたジョバンニだけは夢がかなった瞬間を見届けることができなかった。残されたグッツィとジョルジオは3人の友情の証しに、出会いの場となったイタリア空軍の羽を広げた鷲(わし)の紋章を自社エンブレムとした。これが後に100年続くモト・グッツィの始まり。
そんな美しいエピソードを知っていたなら、“そういえば”的だなどと失礼なセリフは吐かなかったのにな。さておきモト・グッツィ100周年で登場したのが、縦置きVツインを初搭載して1967年に発売されたV7の最新モデルである。数えてみると偏屈な、いや独創的なエンジンもデビューから半世紀を超えているわけで、このユニットがモト・グッツィにとっていかに大事な存在かが時間の長さからもよくわかるし、やっぱり二輪を象徴するのはエンジンだよなとも強く思う。
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見ても乗っても品格がある
新しいV7の最大のトピックは、従来の744㏄から853.4㏄への、排気量の拡大だ。最高出力を25%増しの65PSとしつつ、Euro 5規制に適合させる改善を施した。ラインナップは3種で、今回試乗にあずかったのは「オリジナルモデルの精神に最も近い」とされるV7スペシャル。クロームメッキパーツの多用とスポークホイールの採用。さらに冷却フィンの縁を切削加工しシルバー感を高めることで、他のラインナップとは異なるクラッシクテイストを演出している。それから、フューエルタンクのストライプ。前作のV7IIIにも似た仕様のクラシックが用意されていたが、今作に加わったグラフィックによってより懐かしさが高まっている。
総じて言えるのは、見た目にも乗り味にも品格を感じること。特に機関面において、およそ100㏄のキャパシティーアップという、モデルチェンジにおいて重大な課題に取り組みながら、その成果をやたらと前面に出して主張してこないその一点だけでも、ジェントルでエレガントで好感が持てた。
とはいえ、エンジン自体に主張がないわけではない。アイドリング時にスロットルを吹かすと、車体を右側に揺らす縦置きVツイン特有の癖は依然として残っているし、走行中もエンジンの鼓動というより心拍を感じ続ける。それがバランスのとれた大き過ぎない車格と素直なハンドリングと相まって、このV7ならではの品格を醸成しているように思えた。機械の側が力まないから、生身の乗り手もリラックスできる。この相乗効果、おそらく飽きない理由へとひもづくのだろう。
返す返すも二輪は、エンジンに乗るものだと思う。ふと視線を落とせば目に入る左右のシリンダーヘッド。その内部に触れれば大けがでは済まない高熱を発している内燃機関がむき出しなんて、実はこれほど危なっかしい乗り物はない。そんな非常識にさえ品格を醸せるのが、縦置きVツインの魅力かもしれない。であれば、食わず嫌いのエンジンラバーこそモト・グッツィに触れるべきだ。「そういえば」とのたまった口で何を言うとあきれられるだろうが。
(文=田村十七男/写真=向後一宏/編集=関 顕也)
【スペック】
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=2165×--×1100mm
ホイールベース:1450mm
シート高:780mm
重量:203kg
エンジン:853.4cc 空冷4ストロークV型2気筒 OHV 2バルブ
最高出力:65PS(48kW)/6800rpm
最大トルク:73N・m(7.4kgf・m)/5000rpm
トランスミッション:6段MT
燃費:--km/リッター
価格:127万6000円

田村 十七男
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