第656回:「グッドイヤー史上最強」をうたう新スタッドレスタイヤ「アイスナビ8」を試す
2021.09.06 エディターから一言グッドイヤーからスタッドレスタイヤの新製品「ICE NAVI 8(アイスナビ8)」が登場。左右非対称パターンと新コンパウンドの採用で実現したウインター性能の仕上がりは? 冬の東京~長野を往復して感じた、ドライ路面での印象と合わせて報告する。
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最新作は技術の塊
まだまだ猛暑日を記録することも珍しくない、残暑厳しい昨今。しかし、そんなタイミングで早くもスタートしているのが冬タイヤ商戦だ。実際に、来る次の冬シーズンに向けたアイテムも続々と発表されている。今回紹介するグッドイヤーの新タイヤ、アイスナビ8も、そのひとつである。
1997年に初代モデルが登場した「アイスナビ」シリーズも、名称が示すように最新作で8代目。「撥水(はっすい)シリカゴム」やミクロのガラス繊維を配合した「マイクログラスコンパウンド」の採用など、各世代で特徴的なテクノロジーを採り入れてきた歴代のアイスナビだが、従来の「アイスナビ7」の後継モデルである最新作、アイスナビ8で目立つ新たなテクノロジーはまず、「シリーズで初となる左右非対称のトレッドパターンを採用」したことにある。
「アシメトリックナビパターン」と名づけられたそのデザインの狙いは、アウト側の剛性を高めて氷雪・ドライ路面上での旋回時の操縦安定性を高めると同時に、ランド比(タイヤのトレッド面における接地部分の比率)をアイスナビ7から2%拡大させることで氷上・ドライ路面での密着性を高めたこと。
同時に、多方向にラグ溝やスロットを配置したことで生まれる「マルチディレクショナルエッジ」の採用や、ピッチ数を増してアイスナビ7比でのトータルエッジ成分が7%向上したことなどにより引っかき効果を増したことで、氷上ブレーキ性能が向上した点も特徴として挙げられている。
左右方向に横切る幅が広めのラグ溝は、雪柱せん断力を増すことによって雪上でのトラクション能力向上を狙った「バインディングスノーデザイン」。これも新たに採用されたテクノロジーだ。
ユーザーニーズもしっかり反映
そんな特徴的なポイントに加え、エッジ効果を高めて新品時から高い氷上性能を発揮させる「イニシャルエッジデザイン」や、やはり新品時からのエッジ効果をアップさせる「エフィシェントホール」、氷上路面における倒れ込みを抑制しグリップ向上を図るための「ウルトラナビブレード」なども新たなトレッドパターンにおける特徴。一般に、多くのユーザーが同じようなタイミングでタイヤ交換を行おうと入庫するため、ひと手間増す販売店の負担を考えると「好まれない」ともされる冬タイヤの非対称パターンだが、ここに紹介するようなさまざまなメリットがあることを考慮したうえで、「歴代シリーズで初めての採用に踏み切った」と紹介できそうなのがアイスナビ8に採用された新しいトレッドパターンだ。
一方、ユーザーへのリサーチ結果を踏まえ、あらためて最新モデルで性能向上の項目に取り組んだというポイントが、氷上でのブレーキの利きとライフ性能である。
前者は、前述のようなラグ溝やスロットの配置の工夫を行ったことによる高い引っかき効果の実現で、アイスナビ7比での有効制動距離指数で8%のアップを達成。また後者は、柔軟持続性を高める軟化剤を採用した「エキストラコンタクトコンパウンドプラス」を採用したことで、より高い性能持続性を実現させたという。
なお、そうしたさまざまな工夫によってドライ性能や氷上性能をアップさせながら、それと背反関係にある雪上での性能は、雪柱せん断力を高める溝の交点を多く配置した「マルチインターセクション」や連結したラグ溝が強い雪柱を形成する「バイティングスノーデザイン」、縦スロット両端のブロック剛性をあえて低くすることで雪柱の形成と排雪を促す「センターリブスロット」など、やはりトレッドパターンを注意深くデザインすることで、アイスナビ7と同等レベルを確保することに成功しているという。
そんなアイスナビ8をFWD仕様の「トヨタ・プリウス」に装着。2月の某日、まずは完全なドライ状態にある都心の道を上信越方面へと向けて出発した。
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驚異の“ノープロブレム”
サマータイヤとの直接比較では、特にドライの舗装路面上での諸性能においていくばくかのウイークポイントが散見されることも予想されるのがスタッドレスタイヤ。しかし、それでもアイスナビ8を装着しての走りの印象に、不満を抱くことはなかった。
確かに、意地悪くチェックしてみればわずかなパターンノイズが聞き取れたし、高速道路上でやや急なレーンチェンジにトライすると、横方向の剛性感が少々低めに感じられたりしたことは事実。
しかし、それらはいずれも装着しているのがスタッドレスタイヤであるということを知ったうえで、さらに意識を研ぎ澄ました際にようやく認められた程度だった。見方を変えれば、そうした事前情報なしに、装着したタイヤには目をくれることもなく走り始めてしまえば、何の違和感やストレスを覚えることもなく何時間でも走れてしまうというのが、大方の人の印象でもあるはずだ。
高速道路を降り、ドライ路面のままワインディングセクションへと差しかかると、ここでも「違和感なし」という印象が続くことになった。少々速いペースで走ってもコーナリング時の腰砕け感などは認められず、特に早いタイミングでタイヤが悲鳴を上げ始めるといったことも皆無。さすがにステアリング操作に対する応答性は機敏とはいえず、スポーティーというイメージこそなかったものの、これだけ“普通”に走ってくれればそのドライ性能に不満を抱く人などはまず存在しないだろうという仕上がりでもある。
そして、待望の(?)雪道へと差しかかると、そこでの走りのポテンシャルは期待した通りのものだった。
前述のように今回のテスト車はFWD仕様。にもかかわらず、多少ラフなアクセル操作でもトラクションコントロールは簡単には介入せず、加減速時には雪面をしっかりつかんでいる感触がイメージできる。撮影のために、傾斜のきつい新雪路面へとあえて踏み込んでみてもそれは同様。「これは4WDでないときついのでは!?」と一瞬乗り入れをためらうようなエリアへも、危うい思いをすることなく無理なく出入りが可能だったのだ。
幸か不幸か今回はひどいアイスバーンに遭遇するようなことはなかったが、少なくとも“スノータイヤ”としての性能にこれで大きな不満を抱く人はいないはず。今回のチェック走行では、そんな思いを強く抱かされることになった。
オールシーズンタイヤのプロモーションに力を入れるグッドイヤーだが、それでも本格的な”冬路面”に遭遇してみれば、そうしたアイテムとは一線を画す実力を発揮してくれるのがスタッドレスタイヤである。氷上性能にも万全の備えを整えたいというユーザーにとっては、やはり”一択”の存在となる必須のアイテムであることは間違いない。
(文=河村康彦/写真=峰 昌宏/編集=関 顕也)
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河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
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