ホンダが「インテグラ」復活を宣言 果たして勝算は?
2021.09.08 デイリーコラム国産高級車ブランドの元祖
ホンダファンの間で「インテグラ復活」が話題となっている。2021年8月16日のwebCGのニュース記事にもあるように、ホンダの米国現地法人がアキュラブランドで「インテグラ」を復活させると発表した。同社によると、新型インテグラの復活は2022年で、オリジナルと同じファントゥドライブ精神とDNAをもつ“プレミアムコンパクト”だそうだ。
ご承知の向きも多いように、アキュラとはホンダが海外で展開する高級車専業ブランドで、現在はアメリカ合衆国とカナダ、メキシコ、中国、クウェートなどで展開している。ただ、実際の販売は年間15~17万台を売り上げる合衆国が圧倒的なメインマーケットで、それにカナダも含めた北米だけで全販売台数の9割を占める。クルマの開発拠点も北米だ。
アキュラは1986年に合衆国でスタートした。そもそものキッカケは、1981年に導入された対米自動車輸出の自主規制にある。1970年代の石油ショック以降、ホンダの初代「シビック」など日本車の“売れすぎ”に業を煮やした合衆国政府と当時のビッグスリーは露骨な“ジャパンバッシング”を展開。日本は対米自動車輸出台数の自主規制に追い込まれた。いわゆる日米自動車摩擦である。
これを機に日本メーカーはそろってアメリカ現地生産に乗り出す。いっぽうで、日本からの輸出は台数そのものが制限されるので、一台あたりの利益率の高い高付加価値商品にする必要があり、国産メーカーは次々とアメリカ向け高級車の開発に乗り出した。トヨタのレクサスや日産のインフィニティも同様だが、これらのスタートは1989年だった。それよりひと足早かったアキュラこそが国産高級車ブランドの元祖ということもできる。
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インテグラからRSXに
スタート時点のアキュラに用意されたのが旗艦の「レジェンド」とインテグラの2機種だった。その後、1990年に「NSX」が、1992年に「ビガー」が加わって、アキュラは独立ブランドらしい規模に成長していく。当時、アキュラはスタートから5年連続でJ.D.パワーの調査による“ディーラー顧客満足度”でトップとなり、まさに飛ぶ鳥を落とす勢いだった。
現在のアキュラの車名はすべてアルファベット3文字になっているが、こうしたコードネーム的な車名に統一されるようになったのは2000年前後のことだ。インテグラも日本でいう4代目(2001年発売)から「RSX」となった。ただ、そのRSXも1世代かぎりで2006年に姿を消した。販売の主力が「MDX」や「RDX」などのSUVに移ったためだ。
日本におけるインテグラは前身となった「クイント」同様(初代インテグラの国内名称は「クイント インテグラ」)にシビックより“半クラス上級”の若者向けのファッショナブルなモデルと位置づけられた。初代インテグラの国内発売は1985年だから、北米アキュラ版を最初から織り込んで開発されたことも明らかだった。5ドアや4ドアも用意されたが、日米とも3ドアクーペが売れ筋となったこともあってか、世代を追うごとにスポーツ性を増して、3~4代目には「タイプR」も設定された。
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インテグラの重要性
今回のインテグラ復活には、北米のアキュラファンにとって、3つの大きな意味がある。
ひとつは車名の原点回帰だ。現在のアキュラの車名はすべてアルファベット3文字なのだが、今回の復活モデルは前モデル最後のRSXではなく、インテグラを名乗っている。もしかしたら、新しいインテグラを機に、アキュラは車名戦略を含めたマーケティング全体を見直すつもりなのかもしれない。
2つ目は、その存在が2代目NSXの2021年モデルをもっての生産終了と、ほぼ同時に明かされたことだ。じつはNSXに先がけて、レジェンドのアキュラ版である「RLX」も2020年モデルを最後に姿を消している。つまり、NSXがなくなると、顧客満足度で連続1位を獲得していた時代の元祖アキュラ(の子孫)が完全に断絶してしまうことになる。しかし、インテグラが2022年モデルとして登場するなら、それをギリギリで回避できることを意味する。かなり強引な理屈だが、イメージやストーリー性が勝負の高級車ブランドにとって、こういう歴史的事実や継続性は重要なのだ。
最後は、インテグラというのは、単なる古いアキュラではないということだ。1986年のスタートからRSXとして生産終了する2006年まで、インテグラはアキュラのエントリーモデルであり続けた。イメージリーダーはレジェンドやNSXだが、この時代のアキュラを本当に支えたのはインテグラである。また、現在のアキュラのターゲット顧客層であるアメリカの中高年にとっても、インテグラはもっとも身近で、おそらく青春時代の記憶に残っているアキュラだ。
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果たして勝算は?
新型インテグラがどんなクルマになるかは不明である。しかし、現時点で明らかな「オリジナルと同じDNA」や「プレミアムコンパクト」といったキーワードからすると、かつてと同じくシビッククラスの骨格をもつ3ドアクーペになると思われる。つまり、シビックベースの現行セダン「ILX」の事実上の後継機種になる可能性が高い。複数のバリエーションがあるかもしれないが、最強モデル(最後のNSXと同じく「タイプS」を名乗るか?)は次期「シビック タイプR」由来の2リッターターボを積むと考えるのが自然だ。
北米で確固たる地位をきずいたアキュラは北米市場で年間16万~18万台を売り上げるが、全盛期が年間20万台を軽く超えていたことを考えると、少し物足りなくもある。もはやスポーツクーペは大量販売を期待できるジャンルではないが、根強いファンは存在する。となれば、不人気ジャンルゆえに競合も手薄となっている今だからこそ、アキュラ主顧客層の記憶に強く残るインテグラ復活に勝機あり……と判断しても不思議はない。
NSX生産終了の報がアキュラスポーツカー潜在顧客の渇望感を刺激しまくっているところに、手が届きやすい価格のスポーツクーペを投入すれば人気沸騰の可能性もなくはない。そう考えると、NSXと絡めた今回のインテグラ復活は、用意周到な高等戦術(?)ともいえる。
今回のインテグラ復活の知らせには、わが日本でも熱狂的なホンダファンが色めきだった。しかし、今回の発表はあくまで北米現地法人によるもので、日本向けの公式コメントはまったくない。そして漏れ伝わってくる内部情報も合わせると、新型インテグラが日本で発売される可能性はかぎりなく低そうなのが、残念ではある。
(文=佐野弘宗/写真=本田技研工業/編集=藤沢 勝)
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佐野 弘宗
自動車ライター。自動車専門誌の編集を経て独立。新型車の試乗はもちろん、自動車エンジニアや商品企画担当者への取材経験の豊富さにも定評がある。国内外を問わず多様なジャンルのクルマに精通するが、個人的な嗜好は完全にフランス車偏重。
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