ルノー・メガーヌ スポーツツアラー インテンス(FF/7AT)
ワゴンの逆襲 2021.10.25 試乗記 日本上陸当初はスポーティーグレードのみをラインナップしていた「ルノー・メガーヌ」だが、マイナーチェンジを機に装備充実の標準グレードに一本化されている。果たしてその走りは退屈か!? ステーションワゴンの「スポーツツアラー」で確かめた。伸びやかなスタイリング
試乗車を受け取る時、ハッチバックモデルも横に並んでいた。メガーヌのメインはハッチバックだと思うのだが、スタイルがこなれていると感じたのはワゴンのほうである。全長は4635mmで、ハッチバックより240mm長い。そのおかげで伸びやかなフォルムになり、エレガントに見える。ワゴンではなく「スポーツツアラー」と名乗っているのも理由のあることなのだ。受注は始まったばかりだが、初速ではワゴンがハッチバックを上回っているという。
メガーヌはCセグメントに属するコンパクトカーで、4代目となる現行型は2017年に日本に導入された。試乗したのは、2021年8月に販売が始まったマイナーチェンジモデルである。ラインナップが整理され、メガーヌもメガーヌ スポーツツアラーも「インテンス」のみのモノグレードとなった。スポーティーグレードの「GT」「GTライン」は設定されない。日本に入らなくなったということではなく、本国にもそういう名前のグレードはない。スポーツモデルは「ルノースポール(R.S.)」が担うということなのだろう。
1.2リッター直4ガソリンターボと1.6リッター直4ガソリンターボの2種類があったエンジンは、1.3リッター直4ガソリンターボに一本化。ダイムラーと共同開発したもので、「ルーテシア」にも搭載されている。ルノーは「欧州市場では2025年までに全ラインナップの65%を電動化したうえで、ルノーブランド車は2030年までに90%をバッテリー式電気自動車にする」という計画を発表しており、必然的に内燃機関の種類は絞り込まれることになる。他の欧州メーカーも事情は同じで、整理縮小が避けられなくなっているのだ。
ハッチバックより広い後席
エクステリアでは、フロントグリルやバンパーのデザインが変更されている。LEDヘッドランプが新意匠になり、立体的な形状になった。リアのウインカーはシーケンシャルタイプを採用している。クロームパーツを多用することで、引き締まった印象に。サイドウィンドウの下に配されたシルバーのラインがリアエンドで跳ね上がり、ルーフレールとのコンビネーションで軽快なリズムが生まれている。ドアハンドルの上面がシルバーになっているのも地味にオシャレだ。
ルーフはリアに向かってなだらかに下降しているが、リアシートに座ってみると頭の上には十分な空間があった。視覚的なイメージとは違って、実際にはさほど低くなってはいないようだ。膝の前にも余裕がある。ホイールベースはハッチバックモデルより40mm長い2710mmで、荷室だけでなく居住空間にも生かされているのだ。5人乗車でも580リッターのラゲッジスペースを確保。荷室の両サイドに備えられたハンドルを使えばワンタッチでリアシートを倒すことができ、1695リッターにまで拡大される。
インテリアには、見た目の大きな変更はないようだ。センターモニターは7インチで、今となってはコンパクトなサイズである。スマートフォンと連携する「イージーリンク」が採用されており、ホーム画面では「Apple CarPlay」の表示が現れた。モニターの下にあるUSBソケットに「iPhone」をつなぐと「Googleマップ」を使える。いちいちスマホをつながなければいけないのか……と思ったが、それはカン違い。試乗車にはオプションのナビゲーションシステムが装備されていた。日本仕様ではホームボタンを長押しすることで、ナビ画面が現れる仕組みだ。
新しい1.3リッターエンジンは、前にルーテシアでも試している。メガーヌよりも一回り小さいBセグメントのハッチバックだから、パワフルな走りが楽しめた。同じエンジンといっても、チューニングは異なる。ルーテシアでは最高出力が131PSだったが、メガーヌ版は159PSなのだ。
スポーツモードでも保たれる節度
ハイチューンとはいっても、マイチェン前の1.6リッターターボが205PSだったのに比べれば低い数値だ。1390kgの車重には力不足ではないかと心配になるが、実際にはまったく問題なかった。1800rpmで最大トルクに達するので発進から力強く、加速時のレスポンスも申し分ない。パワーの出方はリニアで、低速でもコントロールしにくいようなことはなかった。7段DCTはスムーズに変速をこなしていく。
室内でエンジン音がうるさく感じられることはないが、時折ロードノイズが気になることはあった。あえて言えばという程度のことではあるが。高速巡航は快適で、追い越しの際にも余裕がある。アダプティブクルーズコントロールが装備されたのもトピックだ。いまさら、という感じもするけれど、ストップ&ゴー機能も付いているから渋滞時にも使えるのがありがたい。しかし、ルーテシアの上級グレードに付いていた「レーンセンタリングアシスト」は装備されていないので、ステアリングはドライバーが操作する必要がある。
「ルノーマルチセンス」を使ってドライブモードを選ぶことができる。センターコンソールのスイッチを押すと、モニターに設定画面が現れた。エアコン操作ダイヤルの下に「ファスト」というボタンがあるが、これは素早い空調を行うためのものなので押してもクルマは速くならない。モードは「スポーツ」「コンフォート」「エコ」に加えて自分好みにカスタマイズする「マイセンス」がある。エンジンの出力特性やシフトタイミング、ステアリングの反応が変わるだけでなく、メーター表示やアンビエントライトも連動している。
エンジンサウンドもモードによって変化する。スポーツを選ぶと、少しだけ勇ましい音が響くのだ。過剰に荒々しい音になるわけではなく、音量も控えめである。出力やハンドリングの設定も、節度を保っている。それでもワインディングロードではステアリング操作に応じて即座に鼻先をインに向ける感覚が心地よく、スポーティーな走りを楽しむことができた。
シャシーはルノースポールと同じ
最近はSUVに試乗する機会が多く、山道でも軽快に走ることに感心する。でも、こういうクルマに乗ってみると、やはり違いを感じてしまうのだ。重心が低いことでロールが抑えられ、コーナリングでの安定感にアドバンテージがある。シャシー性能の高さがもたらすパフォーマンスなのだろう。日産・三菱とのアライアンスで開発された「CMF-C/Dプラットフォーム」は、メガーヌR.S.と同じだ。FF車最速を狙うモデルと同じシャシーというぜいたくさなのだ。
コーナリング性能が高いからといって、ガチガチに固めているということではない。剛性が高いうえに、しなやかに足が動くことが大切なのだ。目地段差が連続して不快な乗り心地を強いられる西湘バイパスでも、絶妙にショックを吸収する振る舞いは感動的だった。荒れた路面を上手にいなして乗員には嫌な揺れを伝えない。ワインディングロードでの素早い動きと両立させていることに感服する。
リアのホイールアーチを見ると、タイヤとの間に結構な隙間がある。ワゴンなのだから、大量の荷物を積むことを想定しているのだろう。試乗では空荷だったが、レジャーや旅行で荷室をいっぱいにすれば、さらに落ち着いた挙動を見せるのかもしれない。
1990年代にはワゴンがブームとなっていた。ライフスタイル商品として人気だったのである。レジャーや旅行に向いたクルマとされていたが、もっと多くの人数が乗れるミニバンが台頭し、さらにはSUVがトレンドになったことでワゴンの存在感は薄くなっていった。しかし、久しぶりに乗ってみると、ワゴンはマルチパーパスでオールマイティーなクルマであることを再確認した。メガーヌ スポーツツアラーは、何より見た目がスタイリッシュである。価格も魅力的で、幅広いユーザーにアピールできる実力派だと思う。
(文=鈴木真人/写真=向後一宏/編集=藤沢 勝)
テスト車のデータ
ルノー・メガーヌ スポーツツアラー インテンス
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4635×1815×1495mm
ホイールベース:2710mm
車重:1390kg
駆動方式:FF
エンジン:1.3リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:7段AT
最高出力:159PS(117kW)/5500rpm
最大トルク:270N・m(27.5kgf・m)/1800rpm
タイヤ:(前)225/40R18 92W XL/(後)225/40R18 92W XL(コンチネンタル・プレミアムコンタクト6)
燃費:16.6km/リッター(WLTCモード)
価格:330万円/テスト車=365万8600円
オプション装備:メタリックカラー<ルージュフラムメタリック>(5万5000円)/フロアマットセット<プレミアム>(3万0800円)/カーナビゲーション&ETC2.0キット(27万2800円)
テスト車の年式:2021年型
テスト開始時の走行距離:3171km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(7)/山岳路(1)
テスト距離:285.2km
使用燃料:21.9リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:13.0km/リッター(満タン法)/13.2km/リッター(車載燃費計計測値)

鈴木 真人
名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。
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