メルセデス・ベンツC200アバンギャルド(FR/9AT)
“最善か無か”を継ぐもの 2021.12.14 試乗記 数多い新型「メルセデス・ベンツCクラス」のラインナップのなかで、先陣を切って上陸した「C200アバンギャルド」に試乗。1.5リッター直4ターボ+マイルドハイブリッドのパワートレインと、後輪操舵システムを採用したシャシーが織りなす走りを確かめた。取り回しに優れる伝統は健在
前身にあたる「メルセデス・ベンツ190E」が登場したのは1982年のこと。メルセデス初のDセグメントモデルであり、日本では“小ベンツ”などとあまりうれしくはないだろうあだ名で呼ばれていたが、それでも高く評価されていたのは小さくても中身は本物のメルセデスだったからだ。ブランドの根幹ともいえる安全思想や質実剛健なつくり、高級車らしい装備などは格上のクラスと遜色なく、メルセデスには大きさやクラスによるヒエラルキーがないのだと印象づけたのである。
7年ぶりのフルモデルチェンジで5代目となった新型Cクラスにも、それは当てはまる。見た目はまんま「Sクラス」をスケールダウンしたかのような、最新のメルセデスデザインをまとっている。全長は従来型比で65mm伸長され、Aピラーおよびフロントウィンドウは後方へと移動した。それでいてフロントオーバーハングは短くなっているので、ボンネットの長さが強調されたダイナミックなプロポーションとなった。
ラインやエッジといった装飾的な要素は極力排して、フォルムそのものの美しさや彫刻的な面構成を際立たせる手法だ。ショルダー部の控えめなキャットウオークラインで車高を低く見せることや、上下に薄くクールな印象のヘッドライトの採用、横に長い三角形のリアコンビネーションランプのデザインなどはSクラスと共通するイメージである。
従来はライバルに対して後席がやや狭かったが、25mmのロングホイールベース化によって後席レッグルームは21mm広げられ、ヘッドルームにも余裕が増した。
それなりに大型化されたわけだが、全幅は10mmの拡幅にすぎず、また最小回転半径は従来の5.3mに対して小さくなっている。このクラスでは初となるリアアクスルステアリングの装着車ならなんと5.0m、非装着車でも5.2mだ。Cクラスの伝統的な美点である“取り回しのよさ”は失われていないのである。
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大幅なパワーユニットの進化
新型CクラスはISG(インテグレーテッド・スターター・ジェネレーター)による48Vマイルドハブリッド、あるいはプラグインハイブリッドで全車電動化されたが、最初に日本導入となるのはガソリンの1.5リッター直4ターボ+ISGの「C200」と、ディーゼルの2リッター直4ターボ+ISGの「C220d」。
先代モデルのC200はBSG(ベルトドリブン・スターター・ジェネレーター)だったが、より効率的なISGへと換装され、ディーゼルのマイルドハイブリッド化は今回がメルセデス初。ISGはエンジンとトランスミッションの間に挟み込まれ、最大で20PS、200N・mのブーストが可能となっている。
今回の試乗車は前者のパワートレインを搭載したC200アバンギャルドだ。先代モデルもC200は1.5リッターの割に力強いと評判だったが、新開発されたエンジンは同排気量ながら最高出力が184PS/5800-6100rpmから204PS/5800-6100rpmへ、最大トルクが280N・m/3000-4000rpmから304N・m/1800-4000rpmへと向上した。より大きなトルクを低回転から発生するようになり、BSGにはできない瞬間的なブーストも備わるのだから進化の幅は小さくない。
先代モデルよりもさらに力強くなったのは言うまでもないが、低回転域のレスポンスが改善され、ドライバビリティーが大いに向上したことに進化を感じた。たとえば1000rpm台で高速巡航中に、緩やかに加速させようとアクセルを踏み増していくと、先代モデルではターボラグがあってもどかしかったが、新型では反応が良くてストレスがない。
ちなみに100km/hでのエンジン回転数は8速で1500rpm、9速で1300rpm。たいていの場合は8速だが、もう少し加速して110km/h以上程度になると9速にシフトアップされ、そこから速度が100km/hに落ちてきても平たん路ならば9速のまま巡航できる。
日本ではめったに9速に入るシーンはないが、新東名の120km/h制限区間ならば恩恵があるだろう。ECOモードを選択すると、コースティング時にエンジンが停止して滑走していく。
そこからのエンジン再始動がスムーズで違和感がないのはISGの恩恵。アイドリングストップからの再始動もしかりで、48Vマイルドハイブリッドは燃費改善もさることながら、上質な乗り味にも効果をもたらす。
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後輪操舵の効果は絶大
アクセルを踏み込んだときの吹け上がりは思いのほか鋭く、特に4500rpmを超えてからはスポーツモデルのように勇ましい。最高出力発生回転数の6100rpmまできっちりと回りきり、多段トランスミッションはステップ比が近いので小気味いい加速をみせる。スポーティーに走らせると実に軽快なのだ。
クネクネと曲がりくねった狭いワインディングロードでは、リアアクスルステアリングの恩恵が絶大だった。60km/h以下ではリアが逆位相に最大2.5度ステアされるから、少ない舵角でもスイスイと曲がっていき、コンパクトなボディーがさらに小さく感じられるほど。ライントレースも正確だから、ブラインドコーナーで不意に対向車が現れても必要以上に慎重になることはなく、リラックスしてドライブできる。
60km/h以上では俊敏に曲がる力が必要ならば逆位相に、安定性が必要ならば同位相になり、中・高速コーナーや高速でのレーンチェンジなどでは、俊敏な動きを見せつつ安定性も高いという絶妙な働きをしてくれる。サスペンションは以前よりもコンフォート志向とみえて適度なロールを許すが、懐の深さとリアアクスルステアリングのおかげで連続するコーナーを気持ち良く走っていけるのだ。
乗り心地はそこそこに快適だった。先代のC200はエアサスペンション+アダプティブダンパー(オプション)を備え、クラスを超えた快適性を誇っていたが、新型はコンベンショナルなサスペンションなので、あらゆる路面で適切な硬さに変化していくわけではない。
しかし、それでもロングホイールベース化によってピッチングの動きがゆったりとして高速巡航などでは有利。さらに以前ほどアジリティー重視というわけでもないので、メルセデスとして標準レベル以上の快適性はあるのだ。
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もはやクルマは頼れる相棒
今回の試乗車が装着していた18インチタイヤはほんの少し表面にコツコツとした硬さがあり、路面によってパターンノイズが耳につく場面もあった。実は別の機会に17インチタイヤを履くC220dに短時間ながら試乗したのだが、そちらのほうが快適性に対する印象は良かった。また、リアアクスルステアリング非装着車だったが、小回りは十分に利いてフィーリングもより自然であるなどもろもろ好感触だったことも付け加えておきたい。
安全運転支援システムはもちろん最新で数々の機能強化がなされているが、なかでもアクティブステアリングアシストの精度の高さが気に入った。360°カメラをも白線認識に用いるようになったからだろう。カーブでのステアリングアシストは見事で、“余計なおせっかい”感はない。あくまでドライバーが主体だが、自然と車線中央付近を走れるよう、黒子が見守っていてくれるかのようだ。ダイナミックマップ(3次元高精度地図データ)を搭載しないモデルとしては、最上級の出来栄えだろう。
Sクラスに続いて採用された縦型11.9インチのセンターディスプレイは見た目も操作性も抜群に良かった。手持ちのスマートフォンをBluetoothでつないで音楽を楽しみながらドライブしたのだが、曲は探しやすく、スマートフォン側とシステム側の音量調整が連動していることも意外と使い勝手がいい。おまけにオーディオの音質も良くて気分が上がった。その他も直感的な操作が可能で、操作性は想像以上に進化していた。ARナビもギミックのようでありながら、道路事情がカオスな箇所でもけなげに進むべき道の名と矢印を示してくれて、よくぞここまでつくり込んだと感心させられる。
快適な走りやメルセデス特有の安全思想もさることながら、クルマが相棒のように感じられる新たな仕掛けがいよいよ本物になってきた新型Cクラス。「MBUX」を含めたデジタライズには、ユーザーを引きつけ、一度はまったら抜け出せない魅力がありそうだ。
(文=石井昌道/写真=花村英典/編集=櫻井健一)
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テスト車のデータ
メルセデス・ベンツC200アバンギャルド
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4785×1820×1435mm
ホイールベース:2865mm
車重:1700kg
駆動方式:FR
エンジン:1.5リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:9段AT
エンジン最高出力:204PS(150kW)/5800-6100rpm
エンジン最大トルク:300N・m(30.6kgf・m)/1800-4000rpm
モーター最高出力:20PS(15kW)
モーター最大トルク:200N・m(20.4kgf・m)
タイヤ:(前)225/45R18 95Y XL/(後)245/40R18 97Y XL(グッドイヤー・イーグルF1アシメトリック5)
燃費:14.5km/リッター(WLTCモード)
価格:654万円/テスト車=726万4000円
オプション装備:メタリックペイント<モハーベシルバー>(9万9000円)/ベーシックパッケージ(15万4000円)/AMGライン(32万6000円)/リアアクスルステアリング(14万5000円)
テスト車の年式:2021年型
テスト開始時の走行距離:2659km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(1)/高速道路(6)/山岳路(3)
テスト距離:254.4km
使用燃料:18.0リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:14.1km/リッター(満タン法)/12.3km/リッター(車載燃費計計測値)

石井 昌道
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