ジープ・グランドチェロキーLサミットリザーブ(4WD/8AT)
受け継がれる魂 2022.02.18 試乗記 世界中で人気を博すSUVブランドのジープ。そのフラッグシップモデルである新型「グランドチェロキー」が日本に導入された。フルモデルチェンジを経て、より上質に、豪華に進化した5代目にも受け継がれる、アメリカンSUVならではの魅力を報告する。プラットフォームはイタリア系
それを必要とする人だけが買う、旧態依然とした泥臭いプロダクト。そんなジープのブランドイメージを刷新し、民生への門戸を大きく広げたモデルが1983年に登場した2代目のXJ型「チェロキー」、そしてそのアーキテクチャーを共有するZJ型グランドチェロキーだ。特に快適装備や加飾を充実させたグランドチェロキーの登場は、後のSUV市場の興隆を刺激したと言っても過言ではないだろう。
その後、2代目以降は当時提携関係にあったダイムラーの技術が随所に反映されたものとなったが、5代目となるこのWL型では、ついにFCAのソリューションが100%生かされたモデルへと変貌を遂げている。
ベースとなるアーキテクチャーは、同門のアルファ・ロメオがラインナップするFR系モデル「ジュリア」や「ステルヴィオ」が用いる「ジョルジオ」だ。ちなみにステルヴィオの全長・全幅・ホイールベースがおのおの4690・1905・2820mmなのに対して、新型グランドチェロキーは4915・1980・2960mm、そして今回日本に導入された3列シートのロングボディーモデル「グランドチェロキーL」は、5200・1980・3090mmとなる。その車格はイタリアの兄弟に対して軽くふたまわりは大きい。志半ばで亡くなったセルジオ・マルキオンネの肝いりだったというジョルジオが、相当な拡張性を秘めたプラットフォームだということが伝わってくる。ちなみにマセラティが開発しているSUVの「グレカーレ」にも、このアーキテクチャーが採用されるという。
メカに見るオフロードへの構え
グランドチェロキーLのラインナップは2つ。本国仕様の6グレードのうち、「リミテッド」と「サミットリザーブ」の2つが日本に導入されている。今回の試乗車両はサミットリザーブ。従来の最上級グレードであった「サミット」のさらに上、その意は超頂点とでも解すればいいのか、ともあれ一番いいやつだ。
リミテッドとの差異は価格差相応に加飾や装備面、ADAS機能やナイトビジョンの有無など多岐に及ぶが、走行機能面で最も大きい違いはサスペンションにコイルではなくエアスプリングを用いることだろう。乗降や積載時に重宝する低床状態から、ガレ場や川を越えるための高床状態まで、5段階・106mmの可変幅での車高調整が可能となっており、走りのシチュエーションに応じて5つのドライブモードを選べる「セレクテレイン」との連動だけでなく、任意での調整も可能だ。
縦置きで搭載するエンジンは伝統の「ペンタスター」ユニットの最新バージョン。オールアルミの3.6リッターV6自然吸気は、最高出力286PS、最大トルク344N・mを発生する。これに組み合わされるトランスミッションは8段ATとなり、トランスファーに副変速機を備えるフルタイム4WDシステム「クォドラトラックII」が採用されるなど、悪路走破性は駆動系にもしっかり織り込まれた。
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装備はまさに至れり尽くせり
サミットリザーブは3列のシートレイアウトながら2列目を独立2座のキャプテンシートとすることで、乗車定員がリミテッドの7人に対して6人となっている。リアエアコンも左右独立式となり、手動式ながらリミテッドにはないウィンドウシェードも備える。ショーファードリブン的な用途も意識しているのか、装備の充実ぶりは後席に陣取っても感じられるところだ。一方で、3列目のシートもやっつけ的なものではない。大人でも極端に膝を曲げる必要はなく、短距離であれば苦もなく座っていられる姿勢がとれる。
シートやトリムに上質な鞣(なめ)しのレザーがおごられた内装は、本杢目(ほんもくめ)のオーナメントやサテンクロームのトリムなどえりすぐりのマテリアルで彩られており、その上質感は「キャデラックXT6」にも見劣りのないところに達している。ことサミットリザーブについては、その質感は今までのジープブランドのイメージを大きく覆すものであることは間違いない。ADAS(先進運転支援システム)もフルスペックなら、インフォテインメント系もMcIntoshのオーディオシステムが標準搭載と、ともあれ装備は至れり尽くせり。後に加えたくなりそうなものが思い浮かばないほどだ。
数値的には「レクサスLX」に近いかより大きいかという巨体ゆえ、その取りまわしに苦労するかと思いきや、車両のつかみやすさは望外なほど優れていた。真っすぐ寄りのボンネット形状や水平な窓枠など、視界にまつわるあれやこれやに奇をてらったところがないのが奏功しているのだろう。このあたりは、オフロード走行で最も重要なのは視認性だということをきちんと知るメーカーゆえの実直さだろうか。さすがに後退や側方などの確認はカメラに頼ることも多いが、映像はクリアで情報量も十分だ。
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受け継がれるアメリカ車の味わい
今回は残念ながらオンロードのみでの試乗となったが、走りのフィーリングはジョルジオうんぬんの出自から想像していたよりも、がぜんアメリカンSUVのタッチだった。発進から低中速域にかけての速度コントロールのしやすさや、その域での巨大なバネ下を若干持て余しながらのおうような乗り心地は、欧州銘柄とは一線を画する、いい意味での頼もしさを覚える。エンジンのトルクは有り余るほどではないにせよ車格に対して十分で、ちょっとザラみのある音質にも牧歌的なムードが感じられなくもない。
とはいえ、そこはショートストロークの自然吸気ユニットとなるペンタスターだ。最高出力や最大トルクの発生回転域は今日日どちらかといえばレーシーかと思うほどで、回すほどに快音とともに活気づく、そのにぎにぎしさと低中速域での穏やかなイメージのギャップにちょっと笑いがこみ上げてくる。
ハンドリングは、その高回転域でのキャラクターにしっかり呼応した頼もしいものだった。四駆特有のアンダー傾向は控えめで、アクセルオンでも挙動はニュートラルに推移するからドライバーは安心して手綱を握ることができる。変速のつながりも前型に比べるとはっきりとタイトで、シフトスピードも小気味よい。このあたりは世界のライバルをしっかりキャッチアップしているということだろう。
とはいえ、それは数多い引き出しのひとつだ。新型グランドチェロキーの真骨頂は、急がず飛ばさず淡々とロングツーリングをこなし、想像するに手抜きはないだろうオフロード性能をもってジープだけが見せてくれる景色を眺めに行くことだと思う。グローバル化が世の隅々に及ぶなか、ちゃんとアメリカ車らしい味わいを忘れないでいてくれたことが、個人的にはうれしかった。
(文=渡辺敏史/写真=荒川正幸/編集=堀田剛資)
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テスト車のデータ
ジープ・グランドチェロキーLサミットリザーブ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=5200×1980×1795mm
ホイールベース:3090mm
車重:2250kg
駆動方式:4WD
エンジン:3.6リッターV6 DOHC 24バルブ
トランスミッション:8段AT
最高出力:286PS(210kW)/6400rpm
最大トルク:344N・m(35.1kgf・m)/4000rpm
タイヤ:(前)275/45R21 110H/(後)275/45R21 110H(ピレリPゼロ)
燃費:7.7km/リッター(WLTCモード)
価格:999万円/テスト車=1006万0400円
オプション装備:なし ※以下、販売店オプション フロアマット(7万0400円)
テスト車の年式:2021年型
テスト開始時の走行距離:1523km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(4)/高速道路(6)/山岳路(0)
テスト距離:278.4km
使用燃料:40.1リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:6.9km/リッター(満タン法)/6.9km/リッター(車載燃費計計測値)

渡辺 敏史
自動車評論家。中古車に新車、国産車に輸入車、チューニングカーから未来の乗り物まで、どんなボールも打ち返す縦横無尽の自動車ライター。二輪・四輪誌の編集に携わった後でフリーランスとして独立。海外の取材にも積極的で、今日も空港カレーに舌鼓を打ちつつ、世界中を飛び回る。
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