ランドローバー&レンジローバー雪上試乗会【試乗記】
知恵とコツを受け継いで 2011.03.07 試乗記 ランドローバー・ディスカバリー4 HSE/レンジローバースポーツ 5.0 V8スーパーチャージド/レンジローバーヴォーグ Autobiography……839万円/1144万円/1692万9000円
ただの高級SUVにあらず、本格オフローダーとして知られるランドローバー・ファミリー。その実力を、雪山の特設コースで確かめた。
足さばきに「誇り」
スノーボードを脇に抱えた若者たちが闊歩(かっぽ)するスキー場のホテルで、ランドローバーの担当者から説明を受ける。同社の雪上試乗会が開催されるのだ。
「『レンジローバーヴォーグ』以外は、2011年モデルです。ヴォーグとスポーツはスーパーチャージャー付き。そうそう、ヴォーグは150万円ほどお安くなったんですよ……」泣く子も黙る高級SUV、レンジローバーヴォーグは、5リッターNAのベース価格が1329万円から1180万円に、スーパーチャージドが1554万円から1400万円となった。
ゲレンデのふもとに、特設コースが設営されていた。急斜面の上り下りを意図した三角の山と、巨大なコブがいくつか。いままさにスタッフの人がレンジローバーでコブ越えのテストをしているところで、前につんのめった後姿から、リアのサスペンションがよく見える。
かつては左右の車輪を結ぶ車軸が「外れるんじゃないか!?」と思われるほど傾いて、タイヤが奇妙な角度で、しかししっかりと接地している様子が観察されたものだが、もちろん、現行モデルは4輪独立式である。豊かなストロークと太いエアサスユニットを誇りながら、大きく、ゆっくりと左右に傾きながらコブを越えてゆく。通りすがりのスノーボーダーたちが、興味深げに視線を投げかける。
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【Movie】
雪上試乗会におけるランドローバー&レンジローバーの走りを、動画でもごらんください。
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事情は変われど、変えない世界
靴底の雪を落としてコマンダーズシートことレンジローバーヴォーグの運転席に座ると、外のゲレンデと隔絶した世界が広がっている。建築のように構成されたダッシュボードまわりやセンターソール。ウッドパネル。たっぷりしたサイズの革シートと太いハンドルが、いつものレンジローバーだ。
会社自体がBMWからフォード、そしてタタの傘下に移っても、変わることのないブリティッシュ・オフローダーの世界である。「クルマの心臓」ともいえるエンジンさえ、デビュー後4年ほどで、バイエルンのそれからジャガー由来のV8に変更されたのではなかったか。それでも、レンジローバーの個性はいささかも揺るがなかった。最新モデルは、ジャガー同様、排気量が5リッターとなり、NA(375ps)と過給機付き(510ps)が用意される。
左脇のトンネルコンソールに設置されたテレイン・レスポンスのダイヤルは、すでに「草地/砂利/雪」モードになっていた。文字どおり「オートマチック」で、レンジローバーヴォーグは、雪の特設コースを楽々とこなすことができる。
「パワーの出方」「アクセルペダルへの反応」「シフトタイミング」「足まわりの硬さ」「路面への力の伝え方」などを細かく変化させ、クルマを統合制御するテレイン・レスポンスを最初に採用したのは、ディスコ3こと先代の「ディスカバリー」だった。オンロード、雪、泥、砂地、岩場といった5種類のモードには、それぞれに先達の知恵とコツが詰まっている。
2009年に登場した「ディスカバリー4」は、ランドローバー車の機能性を体現しつつ、レンジローバーもかくや、という質感の高さを手に入れたモデルである。先代「ディスコ3」のオーナーであるKカメラマンは、最新モデルのここかしこを子細に眺めてはうんうんうなっていたが、何を発見したか、「旧型のほうが優れているところを見つけた!」と表情を明るくした。
老舗の挑戦は続く
Kカメラマンによると、「カップホルダーの数が11から10に減っている」そうである。ディスコ4では、グローブボックス脇のホルダーが廃止された。
カップホルダーの数がかくも多いのは、ディスカバリーがサードシートを備えているからだ。3列目へのアクセスはつらいが、一度座ってしまえば、極端に卑屈な姿勢を強いられることがない「使える」シートである。Kカメラマンの場合、年に一度だけ、正月に祖父と妹を乗せるときに活用するらしい。
ディスカバリー4のエンジンは、5リッターNAのみ。オンロード専用の(!?)ジャガーより、アウトプットを落として余裕をもたせた375ps/6500rpmの最高出力と52.0kgm/3500rpmの最大トルクは、レンジローバーのNAモデルと同じ。革内装の「SE」が675万円、さらに上質な革を使い、ウッドパネルやハンドルのヒーター、ハーマンカードン製オーディオなど、豪華装備を追加した「HSE」が794万円となる。
ディスコ4から「レンジローバースポーツ」に乗り換えるとき、「シャコタン・レンジでテストコースを行くのは、なんだか忍びないですね」とスタッフの人に言うと、「ベースはディスカバリーですから」と微妙なフレーズで背中を押してくれた。レンジローバースポーツに乗り込みながら「同社のマーケティング担当者が聞いたら渋い顔をするだろうな」とおかしく思った。
というのも、ランドローバー社としては、これから「レンジローバー」と「ランドローバー」をハッキリ区別し、2本のラインでモデルラインナップを構築していくつもりだからだ。使われるロゴも分けられた。
「ただでさえ少ない(経営)資源を……」と少々心配になるが、新たな企業戦略成功の鍵を握るのが、レンジローバー・ラインのボトムレンジとなる小型SUV「イヴォーク」である。「スタイリッシュなクーペ」の位置づけで、2010年のパリサロンでお披露目され、追って5ドアモデルが発表された。イギリスでの販売開始はこの9月からというから、日本での発売は2012年に入ってからだろうか。いまのところ、500万円を切る「戦略的な価格」が検討されているそうである。
(文=青木禎之/写真=郡大二郎)
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青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
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