スバル・レヴォーグSTI Sport R EX(後編)

2022.06.16 あの多田哲哉の自動車放談 多田 哲哉 新型「スバル・レヴォーグ」の2.4リッターモデルに、トヨタの車両開発責任者をつとめた多田哲哉さんが試乗。プロの目に留まったのは、その新エンジンに組み合わされたCVTと、新開発のボディーだった。
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スバルはCVTが分かっている

多田さんは「旧来のガソリンエンジン車としてはピークの完成度」と評する「レヴォーグSTI Sport R EX」。スバルには、走りにうるさいファンも多い。スバルが縦置き無段階変速機=CVTを開発して主力車種に搭載しはじめてすでに13年がたつが、“ラバーバンドフィール”と呼ばれるCVT特有の加速感が、硬派なクルマ好きの間でいまだ賛否を呼んでいるのは否定できない。すると多田さんは即座に「僕はCVT肯定派です」と言い切った。

「理論的にはCVTにデメリットはないはずなんです。なのに、いろいろ批判されるのは結局、きちんとチューニングができていないからでしょう。F1も一度はCVTにいきかけたのに、結局は『速すぎるから』と禁止されたんですから……」

多田さんの発言を補足しておくと、F1マシンにCVTを搭載したのは1993年のウィリアムズ。同年7月に、当時の「FW15C」に試作CVTを組み合わせたテスト車が、英ペンブリーサーキットを走ったのだ。デビッド・クルサード選手が駆るCVT+FW15Cは、エンジンの最高出力をずっと維持できるというメリットによって、ウエットのペンブリーを通常マシンより数秒速いラップタイムで走ったという。

ただ、最高出力を出し続けられることで、逆にエンジン側の耐久性が問題になったらしい。また、そんなウィリアムズの動きを察知したFIAは翌1994年にCVTも含めた多くのハイテク装置を禁止するレギュレーションを導入。結局のところ、ウィリアムズがCVTを実戦投入することはなかった。

「トヨタでもかつてスポーツCVTの技術開発も進んでいたんですが、CVTの技術がいよいよ熟成されたときに、世の中でエコの要求が強まったんです。で、CVTはまずそっちに走ったことで、変なイメージが定着してしまった……と僕は思っているんです。

CVTはもともとポテンシャルがあるので、スポーツに振って開発すればいいものになるはずなんです。スバルもそれは分かっていて、このCVTもスポーツカーの変速機としてまったく問題はないと思います」

 
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