“未来の相棒”電動マイクロコミューターは本当に普及するか?
2022.07.15 デイリーコラムそもそも構えすぎ
「近い将来の日常の足!」として、電動マイクロコミューターが登場して、もう何年になるだろう。当時は現実感がなかったのでよく覚えていないが、20年くらいでしょうか?
電動マイクロコミューターは、形も大きさも車輪の数もさまざまだけど、四輪タイプは全部ペケだ。2021年、トヨタの「シーポッド」に試乗させてもらったが、相変わらず「ダメだこりゃ」でした。
全長2490mmは、確かにそこそこマイクロだ。トヨタは「『アルファード』1台分の駐車スペースに2台置ける」と言うけれど、それは、シーポッドを2台買う人だけが受けられるメリット。結局クルマである以上、移動先では駐車スペースが1台分必要だし、ここまで小さいと、乗車定員(2人)や積載性の面で不便でしかない。おまけに最高速はわずか60km/h、それで価格は170万円強(リース専用ですが)。「日産サクラ」「三菱eKクロスEV」が登場した今、シーポッドを選ぶ人はまずいないだろう。
もっと小型の立ち乗りタイプも、既存の自動車メーカーが提案するものは、どこか大上段に構えすぎている。
つい先日、ホンダ系のマイクロモビリティー「ストリーモ」が発表されたが、安全性のためにバランスアシストシステムを持つ三輪となっていた。トヨタの「シーウオークT」も三輪。確かによくできていたけれど、どっちも持ち運ぶには大きすぎるし、値段も高すぎる。「自動車メーカーたるもの、いい加減なものは出せない」という責任感はわかりますけれど。
私が電動マイクロモビリティーとして可能性があると感じるのは、電動キックボードだけだ。メカ的に断然シンプルで安くて、乗ってる姿もさっそうとカッコよく見える。
電動キックボードに関しては、つい最近道交法が改正され、これまで「原付」扱い(つまり要ヘルメット、走行は車道のみ)だったのが、新区分である「特定小型原動機付自転車」になった。1~2年後(?)に施行されれば、無免許&ノーヘルで自転車レーンや歩道も走れるようになる(ただし低速)。つまり自転車扱いに近くなる。ただ、電動キックボードについては、事故の多発が心配されている。海外では、バルセロナやコペンハーゲンなど、すでに走行が禁止された都市もある。
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パリからの証言「危ないのはレンタル」
電動キックスケーターが世界で最も普及しているのは、おそらくパリだろう。そこで、パリ在住のカメラマン・矢嶋 修氏に話を聞いてみた。ちなみに氏は、電動キックボードではなく、電動スケートボードをふだんの足に使っている。
「パリは自転車道の整備が進んだので、電動キックボードだけじゃなく、電動自転車、電動一輪車とかいろいろ走ってるよ。渋滞フリーのストレスフリーだから、僕もクルマをやめて電動スケートボードにしたんだ」
「スピードで言うと、レンタルの電動キックボードは20km/hくらいしか出ないけれど、僕のスケボーは50km/h出る。電動一輪車は60km/hは出てるし、レンタルじゃない電動キックボードでは、70km/hくらいで飛ばしてる人がいるよ」
電動一輪車が60km/h、電動キックボードで70km/hとはぁ! パリ恐るべし。
「みんなナンバーが付いてないし、交通ルールとか全然ならっていない、免許を持っていない人も多いので、スピード違反、信号無視、逆走、歩行者専用道路の走行などなど結構見る。ただ危険度で言うと、電動一輪車とか電動スケートボードは、ちょっと特殊で運動神経も必要でしょ。ある程度流れに乗って走れるし、交通ルールを守ってる人が多いから、意外と平気なんだよね。マイ電動キックボードの人も飛ばすけど、危ないとは感じない。一番要注意なのはレンタルの電動キックボードなんだ」
20km/hしか出ないヤツが?
「慣れてなくても、なんとなく乗れそうな気がしちゃうんだよ。ミラーもウインカーも交通ルールもないから、まさに野放しだよね。観光地だから、違反だけど2人乗りしている場合も多くて、こいつらが最低。ブレーキもうまく使えないのに強引に突っ込んでいくから、前に乗ってる彼女が大抵犠牲者になってるよ。最初の死亡事故もタンデムだった。年齢に達していないちびっ子が乗ってることも多いし、レンタルの電動キックボードだけには近づかないようにしてる」
パリでは、2021年に電動キックボード等による事故が約2000件発生し、歩行者への衝突事故も絶えないが、9割はそのまま逃走しているという。「だからやめろ!」とは言いたくないが、乗り手にはそれなりの自覚が必要だ。矢嶋氏の「レンタルが一番危険」という意見は傾聴に値する。
加えて、クルマからの転換ならいざ知らず、徒歩や自転車から電動マイクロコミューターに乗り換えるのは、エコでも健康的でもない。それは認識する必要がある。なかなか難しいですね!
(文=清水草一/写真=荒川正幸、本田技研工業/編集=関 顕也)

清水 草一
お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。
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