メルセデス・ベンツEQB250(FWD)
格別なるライドフィール 2022.11.04 試乗記 最高出力190PSの100%電動パワートレインを搭載する、前輪駆動の「メルセデス・ベンツEQB250」に試乗。コンパクトセグメント唯一となる3列シート7人乗りの電動SUVは、想像以上にパワフルで、意外なほどに上品な仕上がりだった。貴重な7人乗りの電気自動車
コンパクトSUV「GLB」と骨格や内外装デザインなどの基本設計を共有するEQBは、シートレイアウトも同じ3列7人乗りである。床下に駆動バッテリーを抱えるためにフロアが高くてセカンドシートの着座姿勢にも影響している点は、同じ主要メカニズムを使う「EQA」と同様だ。また、GLBのサードシートももともと“身長168cmまで”と注意書きされており、こうした割り切りはEQB(こちらは身長165cmまで)でも変わりない。それでも、7人乗りのバッテリー電気自動車(BEV)は、その存在自体が貴重である。
それにしても、背高で重くなりがちなEQBが、EQAと同じ66.5kWhの電池を使いながら航続距離が大きく伸ばされていたことに、BEVの日進月歩ぶりを痛感する。今回の試乗車は日本で販売されるEQAと同じ250を名乗る2WD=FFだが、発売当時のEQA250の一充電航続距離(WLTCモード)が422kmだったのに対して、このEQB250では1.2倍以上となる520kmをうたう。
もっとも、EQA250も最新モデルのそれは555kmまで伸びている。EQB250と同じく、非同期の誘導モーターから永久磁石同期モーター(PMモーター)に換装したことが、大幅に航続距離を伸ばした最大の理由という。
誘導モーターはローターに永久磁石を使わないのが特徴で、いわゆるレアアースを必要としない。そのために調達の政治的リスクが小さいことに加えて、そもそもコストが安い。また、高回転化しやすいので高速性能は高い。さらに、停止中の引きずり抵抗が小さいのも利点で、オンデマンド型の電動4WDには適する。実際、EQBでも4WDのフロントには誘導モーターを使っている。
ただ、絶対的にはPMモーターのほうがコンパクトで高出力化しやすく効率も高いので、昨今のBEVはやはりPMモーターが主流である。ちなみに、かつて誘導モーターを好んでいたテスラも、最新の「モデル3」や「モデルY」ではメインとなるリアにPMモーターを使うようになった。
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電動パワートレインらしいトラクション制御
満充電状態で乗り出した時点で、試乗車両のメーター上に表示される予想航続距離はエアコンをオンにした状態で487km。ためしにエアコンを切ってみたら、それは510kmに増えた。繰り返しになるが、EQB250のWLTCモードの公表航続距離は520km。ご想像のとおり、メーターに表示される予想航続距離はそれまでの実績を反映したもので、EQBのカタログ電費はかけ値なしのようである。
実際のEQB250はひとことでパワフル。それでいて、パワートレインの仕立ても上々で、そのフィーリングは意外なほど上品だ。
ドライブモードには「ECO(エコ)」「Comfort(コンフォート)」「Sport(スポーツ)」と個別設定可能な「Individual(インディビジュアル)」があるが、標準設定ともいうべきコンフォートモードでも、アクセルペダルの踏みはじめから気になるラグもまるでなく、リニアに、しかしスッと優しく押し出すように加速してくれる。そこから一気に踏み込んでも、ギアのバックラッシュに起因するような衝撃もほとんど感じ取れない。
それなのに、パワー感はすごい。瞬間的なフル加速でも無粋なショックは伝わってこないが、アクセル操作と同時に車体をフワリと浮かせるほどの突進力を披露するのだ。アクセルを大きく踏み込んだ瞬間にステアリングがわずかでも切れていると、ステアリングが軽くなり、明確なアンダーステアの兆候を示す。
それでも、フロントタイヤがはっきりと空転するようなことはなく、グリップ限界をうかがいながら推進力をぎりぎり保つ見事なトラクション制御は、いかにも電動パワートレインらしい緻密さだ。とはいえ、EQB250はシャシーやフロントサスペンションに対して、絶対的な動力性能はありあまるほど……ということである。
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アクセル操作には自制心が不可欠
しかし、無遠慮にアクセルペダルを踏みつけるようなことをしなければ、EQBのシャシーそのもののデキは優秀である。
そもそも2tを大きく超える車重に加えて、7人乗りを想定したシャシーはそれなりに引き締まっている。今回のように1~2名乗車で市街地を走ると、乗り心地にそれなりにハリがあるのは事実。路面によっては、ゴロゴロとした振動が伝わってくるクセも少し出る。
いっぽうで、高速道路に乗り入れてスピードが乗ってくると、乗り心地の印象もはっきりと好転する。フットワークにもストローク感が出てきて、クルマ全体もフラットに落ち着く。
せっかくなので……と調子に乗って、山坂道まで走って少しばかりムチを入れると、今度は前記の“ジャジャ馬FF”のキャラクターが顔を出す。EQBのシャシーは感心するデキだが、動力性能はその上をいくのだ。コーナー途中で不用意に加速すると、クルマが飛び上がらんばかりにフワリと上下するので、アクセル操作には自制心が不可欠である。
ただ、こうした場面でも、車重をもてあましたようなショックや突き上げは皆無に近い。床下に最大の重量物=バッテリーを積むBEVゆえに、コーナリングで頑張っても高重心感がまるでない。前後重量配分もすこぶる良好(車検表記で51:49)なので、慎重なアクセル操作さえ忘れなければ、基本的な旋回性能はお世辞ぬきに高い。
そんなEQBに乗っていると、思わず英国ラグジュアリースポーツカーブランドのベントレーをもじった“フライング(EQ)B”なんて、自分で自分が恥ずかしいダジャレが勝手に脳裏に浮かんでしまった。いずれにしても、一般的なコイルスプリングと固定減衰アナログダンパーで、この車重をここまで手なずけているのはさすがといっていい。EQBにおける操縦性と乗り心地のバランスは、このセグメントのBEVではトップクラスかもしれない。1年半ほど前に試乗した(発売直後の)EQAはフットワークにも未完成な部分があったから、こここでもBEVの進化スピードに驚く。
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安心できる航続距離は実質400km強
EQBはパワートレインもシャシーも、その基本的フィジカル性能は非常に高く、調律も見事である。それゆえに、ありあまる動力性能を扱いやすくするギミックがあれば完ぺきなのだが、実際はそこに工夫の余地が残る。
現在のEQB250に用意されるのは、前記のドライブモードに加えて、ステアリングパドルによる都合4段階の減速度調整機能だ。このうちの「D AUTO」は前の交通状況を検知して自動的に減速度を高めるものだが、この機能は好き嫌いが分かれそうだ。
コンフォートモードでもパワフルすぎるほどの動力性能ゆえに、その下のエコモードが日常使いに適していると具合がいいのだが、EQBのそれはアクセルの踏みはじめを極端に去勢したタイプ。深く踏み込むと一転してパワーが出るので、運転感覚そのものはあまり心地よくない。可能であれば、リニアなパワーフィールはそのままに、出力だけを削った“パワーセーブモード”的なものがあればいいのだが、現状のEQBにそれはない。
冒頭の航続距離表示からも想像できたように、EQB250は実電費も素直に優秀といえる。今回のように高速とワインディングをガンガン走っても、カタログ値からさほど悪化しないのはたいしたものだ。それでも安心できる航続距離は実質400km強といったところで、ちょっとしたドライブ旅行にはちまたの急速充電器のお世話になることもあろう。もちろんEQBも日本のCHAdeMO充電器対応である。
ただ、今回クルマを借り出すときに、あるメーカーの急速充電器について「クルマが故障するので絶対に使わないでください」との注意を受けた。こういうところは、まだまだ現物合わせなのがBEVの現状でもある。まあ、EQBはともかく、フラッグシップBEVの「EQS」も上陸しはじめたメルセデス。昨今の高級BEVビジネスを考えると、テスラやポルシェ/アウディにならった自社専用の高出力急速充電サービスも期待されるところだ。
(文=佐野弘宗/写真=花村英典/編集=櫻井健一)
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テスト車のデータ
メルセデス・ベンツEQB250
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4685×1835×1705mm
ホイールベース:2830mm
車重:2100kg
駆動方式:FWD
モーター:交流同期電動機
最高出力:190PS(140kW)
最大トルク:385N・m(39.2kgf・m)
タイヤ:(前)235/55R18 104T/(後)235/55R18 104T(ブリヂストン・トランザT005)
一充電走行距離:520km(WLTPモード)
交流電力量消費率:147kWh/km(WLTCモード)
価格:788万円/テスト車=795万2000円
オプション装備:メタリックペイント<ローズゴールド>(7万2000円)
テスト車の年式:2022年型
テスト開始時の走行距離:2485km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(6)/山岳路(2)
テスト距離:403.6km
消費電力量:--kWh
参考電力消費率:6.4km/kWh

佐野 弘宗
自動車ライター。自動車専門誌の編集を経て独立。新型車の試乗はもちろん、自動車エンジニアや商品企画担当者への取材経験の豊富さにも定評がある。国内外を問わず多様なジャンルのクルマに精通するが、個人的な嗜好は完全にフランス車偏重。
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