第733回:愛車の走りが確かに変わる! ヤマハ・パフォーマンスダンパー体験記
2022.11.30 エディターから一言 拡大 |
高性能車を中心に装着車両が増えてきた、ヤマハの「パフォーマンスダンパー」。付ければたちまち走りの質がアップするというメーカーの触れ込みは本当か? 装備車と非装備車を乗り比べ、効果の程を確かめた。
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オオッ! わかる!
クルマに取り付けるだけで、それまでとは別次元の上質かつ快適な走りを実現してくれるパーツがある。……てなことを聞くと、読者の皆さまは「明らかに怪しい」と思うことでしょう。かくいうワタシも「怪しい」とまではいかないが、「ホンマかいな?」と疑念を抱いたことを告白せねばならない。ヤマハ・パフォーマンスダンパーのことである。
ものは試し。まずはパフォーマンスダンパーが付いていない(いまや旧型となった)“素の”「日産セレナ」に試乗する。大きな四角いミニバンボディーゆえ、剛性確保に苦労するタイプのクルマといえる。
ステアリングホイールを握って走ってみると、「まあ、普通」。トヨタのライバル車と比較して、個人的には「ドライブフィールの面で少々差をつけられてしまったなァ」との印象を抱くが、今回触れるべきはそこではない。
続いてパフォーマンスダンパーを取り付けたセレナをドライブすると、オオッ! わかる! わかるゾ!! 感覚のニブさでは人後に落ちない自分だが、路面に交互に置かれた凸部分を乗り越える際の、ボディーのキシミがほぼ消滅しているのがわかる。踏んだ後の車体全体の揺れが「スッ」とおさまるのを体感できる。
うーむ、これは! 試乗車のフレーム前後には計2本のパフォーマンスダンパーが取り付けられているが、もし仮に、それを知らずに助手席に乗ったヤマハスタッフの人から、「2台目はサスペンションのセッティングを変えてみました」と説明されたら、間違いなく信じてしまうことでしょう。それほどフィールが異なる。
「こころなしか車内が静かになった気もします」と感想を述べると、「それもパフォーマンスダンパーの効果なんです」と隣の方。「外部からの衝撃を吸収するので、結果的に静粛性が上がります」とのこと。
その言葉に自信を得て、「ステアフィールがスッキリして、また、操作に対するボディー側のレスポンスがよくなりました。路面が荒れている場所では、特にリアサスの落ち着きが増したように感じます」と矢継ぎ早にコメントを発すると、いちいちうなずいて当方の感想を補強してくれた。
その後、しつこくパフォダン(略してみました)無しのセレナに再度試乗してみて、自分が受けた印象を確認した。ダンパー付き試乗車の快適性が総じてアップしているのは間違いない。ついに鈍感ドライバーのワタシも、「違いがわかる男」になったのである。ダバダ~(昭和)。
「伸び縮み」というより「振動吸収」
ヤマハ・パフォーマンスダンパーは、“ダンパー”の名称どおり、高圧窒素ガスとオイルを封入した円筒の中を、ピストンが(計算された)抵抗を受けながら動く仕組みを採る。しかしその外観は、一般的なサスペンション用ダンパーと比べると、グッと細身だ。
試しに両端をつかんで力いっぱい押したり引いたりしてみるが、ビクともしない。それもそのはず。サスペンション用のダンパーは「cm」のオーダーで調整するが、パフォーマンスダンパーは「μm」(=1000分の1mm)がチューニングの単位となるからである。実質、1mmも動かないのだ。
クルマの開発や評価にあたって盛んに「ボディー剛性」が取りざたされるのは、つまりそれだけ走行中にボディーがゆがんだり、ひずんだりするからである。ヤマハの開発陣は、わかりやすく「クルマのボディーがバネでできている」と考える。
走行中、バネの集合体であるボディーは、常に変形と振動を繰り返している。そこで、ダンピング機能を持つパフォーマンスダンパーを適切な場所に取り付けることで、変形を抑え、振動を収束させる。ヤマハの資料では、「変形および振動エネルギーを熱エネルギーに変える」と説明される。
「まあ、『ヒーン』と鳴っている音叉(おんさ)を指で触って止めるようなものだ。ヤマハだけに」とさかしらに考えていたら、もっと素晴らしい体感キットが用意されていた。
(1)取っ手が付いた「ロの字状」の角パイプ、(2)真ん中に補強バーを加え「日の字状」にした角パイプ、(3)パフォーマンスダンパーを真ん中に据えて「日の字状」にした角パイプ、の3種類が机の上に並び、順にハンマーで殴ってやる。すると、(1)いつまでも続く音と振動、(2)すぐにおさまる音と振動、(3)殴ったと同時にダンパーに吸い込まれる音と振動と、3者の違いを明確に体感できる。これはわかりやすい!
冒頭に記したとおり、「取り付けただけでドライブフィールが改善される」という、いささか信じにくいパフォーマンスダンパーの効用を、100の言葉を費やすより鮮やかに納得させてくれる体験キットだ。
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バイクは性格が変わってくる
ところで、ヤマハ・パフォーマンスダンパーの起源のハナシがおもしろい。ヤマハは、「トヨタ2000GT」の例でも知られるように、古くから高性能エンジンのOEM開発と生産を得意としてきた。しかし、エンジンが高性能になればなるほど、それを搭載するボディー側の性能も求められることになる。
クルマの開発にあたっていたテストドライバーの興味深いコメントが、渡された資料のなかにあるのでそのまま引用すると、「ボディーの振動をなくして気持ちのいい走りを実現するには、車体剛性ではなく“車体粘性”に注目すべきではないか」。
なるほど、ボディー剛性だけを上げても、音と振動に関しては前出の体感キット(2)の状態となり、なかなかピタリとは止まらない。「残存する音と振動をどう吸収するか?」が、パフォーマンスダンパー開発の出発点だったわけだ。
ヤマハ・パフォーマンスダンパーが具体的に世に出たのは2001年。「トヨタ・クラウン アスリートVX」に装着されたのが始まりだ。このときはエンジンルームを横断するカタチで取り付けられている。ボディー剛性をアップさせるタワーバーとの違いを説明するのが、けっこう大変だったのでは、と推察します。
その後、レクサスブランドをはじめ、日産、ホンダなど各社で使われるようになり、2016年には生産累計100万本、2020年には200万本を達成。2019年からは、バイク用のパフォーマンスダンパーもつくっている。
せっかくなので、クオータークラスの「ヤマハMT-25」で比較試乗させてもらう。幸いなことに、バイクはクルマより人に近いマシンなので違いがわかりやすい。
パフォダン無しから装着車に乗り換えると、バイクのスタビリティーが増しているのを体感できる。直線での安定性がアップし、大きめカーブでの安心感が高まる。一方、乗り手の技量の問題があるのかもしれないが、細かい曲がりではしっかり前荷重をかけないと思ったラインをたどれないことがある。より意識的に乗る必要があるため、バーハンドルを持つネイキッドモデルの気楽さが「ちょっと薄れたかも」と思う。
MT-25の試乗後、「いいことずくめの四輪と比較すると、二輪版は好き嫌いが分かれそうですね」と、エンジニアの方に水を向けると、「ひんぱんに峠に行くというライダーよりは、ロングツーリングを楽しんでいる人にオススメします」とのこと。そうなんですね。確かにパフォーマンスダンパーを取り付ければ、小排気量モデルが苦手な高速道路での横風で進路が乱されることが減りそうだし、例えば単気筒バイクなら、両手に伝わる振動が軽減されるかもしれない。価格が10~20万円見当の四輪用に対し、二輪用は3万円前後だそう。ロンツー好きは、試してみてもいいかも!?
(文=青木禎之/写真=ヤマハ発動機、webCG/編集=関 顕也)
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青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
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